20011115

小泉改革 地方への犠牲転嫁許さぬ

道路問題など抵抗強まる


 小泉政権の「構造改革」は、長期不況に加え、テロ事件を経た米国の急速な景気後退など世界同時不況の荒波をかぶった。「景気対策」の声も強まり、小泉改革はますます窮地にある。小泉は、特殊法人改革などで、なんとか「改革」の実績をあげようとしている。だが、「改革」とは一部の大企業が国際的大競争に生き残るためのものであり、大多数の国民には、犠牲が押しつけられる。すでに、高速道路整備の要求など、地方を中心に小泉改革への抵抗が強まっている。勤労国民を犠牲にする小泉改革に反対する幅広い戦線を築き、小泉政権を追いつめる好機である。

 小泉改革は、労働者に膨大なリストラを押しつけ、中小商工業者や地方を切り捨て、ひとにぎりの多国籍企業が国際的大競争に勝ち残るための「安あがりな政府・自治体」を実現しようとするものである。
 財政構造改革にともなう医療費など社会保障の負担増、地方交付税削減や道路特定財源の一般財源化、道路関連公団や政府系金融機関などの特殊法人改革と、策動は多々ある。これらは、とりわけ地方に犠牲を押しつけるものとなっている。
 小泉内閣は十一月七日、高速道路の未開通区間の事業費を三ー五割削減する案で調整を開始した。特殊法人改革も、日本道路公団など道路四公団の民営化を「目玉」にしようとしている。「ムダな公共事業」という、マスコミも動員したキャンペーンによって、小泉はなんとか「改革」の成果をあげようとやっきになっている。
 これに対し、自民党内も含め、高速道路建設計画の凍結や地方交付税削減に対する反対は根強く、深刻な不況と共に、小泉改革への最大の「抵抗勢力」となっている。
 確かに、道路建設などには利益配分によって、わが国における長年の保守支配構造のもととなってきたのも事実である。だが、これらは現実に、地域経済を支えている面があり、一方的で性急な凍結・削減などは許されない。
 最近では、四十四道府県知事が連名で発表した「高速道整備に関する緊急アピール」にみられるように、首長も含めた行動が始まっている。同アピールは、「道路整備のあり方を先に議論せず、改革の名の下に凍結論が独り歩きするのは本末転倒」と、政府を批判している。
 また、「道路建設要求は陳情ではなく、、権利の主張だ」(梶原拓・岐阜県知事)、「首都圏への食料の輸送など、国道整備の効果は計り知れない」(吉村和夫・山形市長)などの声があがっている。これらは、道理のある要求である。
 青森県では、高速道路建設を求めて六百人の集会が取り組まれた。
 これに対する野党の態度はどうか。民主党は、「改革」を主張する点で小泉とその速度を競いあっている。共産党もまた、「ムダな公共事業」論に唱和している。切り捨てられる地方の労働者や中小商工業者は、野党をあてにすることはできない。
 労働者をはじめとする国民にとっては、幅広い大衆行動を発展させ、小泉改革をうち破るチャンスである。


小泉改革に抵抗する地方・業界
(9月以降の主な動き)

9月12日
 全国知事会など地方6団体でつくる地方自治確立対策協議会が東京で緊急大会を開き、国から地方への税源の移譲や地方交付税の必要額の確保などを求める決議を採択。交付税制度の堅持や道路特定財源での地方への配慮、公営企業金融公庫による資金供給の確保などを求めた。
  25日
 本人負担を3割に増やすなどの厚生労働省の医療制度改革試案に対し、「国民・患者への大幅な負担増にすぎない」と、連合や医師会、健保連などが激しい批判。
10月19日
 東北の一般国道整備推進をめざし、「東北国道協議会」(会長・吉村和夫山形市長)が東京で総決起大会。355市町村長などが出席し、道路特定財源の維持などを求める。「首都圏へ の食料の輸送など、国道整備の効果は計り知れない」などの声あがる。
  24日
 澄田信義・島根県知事は、石原行革担当相の「高速道路を造ってくれというのは首長と土建会社の社長ばかり」との発言を、「とんでもない認識不足で、許せない」と批判。
  25日
 第53回中小企業団体全国大会で、政府系中小企業3金融機関の民営化反対、法人税の外形標準課税反対の決議。
全国市町村長や、トラック協会などで構成される全国道路利用者会議の全国大会が、約1000人を集めて沖縄県那覇市で開かれた。道路特定財源を一般財源に転用しないよう、政府に求める決議を採択。
  30日
 橋本大二郎・高知県知事、高橋和雄・山形県知事など44知事が連名で「高速道路整備に関する緊急アピール」。「(計画が)地方を無視したまま方向付けられようとしており、容認できない」と訴えている。
11月2日
 堀達也・北海道知事、地方交付税見直しは都市部に有利に働くとして、財政力の弱い過疎地自治体への配慮を政府に求める。
  7日
 全国高速道路建設協議会の会長を務める平松・大分県知事が、国土交通省であった「高速自動車国道の整備のあり方検討委員会」のヒアリングで、高速道路網の早期整備を訴え。
  8日
 青森県高規格道路建設促進緊急総決起大会に商工会、観光協会などから600人が参加。
  9日
 橋本・高知県知事ら四国4県知事が、特殊法人改革に関連して建設凍結論も出ている高速道路網を国の責任で整備するように求める共同声明を発表。
  16日
 北海道の北見、網走、根室など道東6市長が高速道路網整備についてのフォーラムを開催する予定。

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