20011026

党長崎県委員会 狂牛病問題で県に申し入れ

肉牛飼育農家に対する完全な
損失補償を求めるための要請
ーー牛海綿状脳症(BSE)の被害に関連して


長崎県知事 金子原二郎 様

 狂牛病の全頭検査が開始され、肉牛の循環がゆるやかに始まったが、市況はきわめて厳しいものがある。すでに、感染牛が発生して以来のこの一カ月余の間に、肥育農家は深刻な打撃を受けており、市況がすみやかに回復しなければ、廃業、倒産農家が多数出ることが予測される重大な事態である。
 肥育農家の中には、当面の生活資金さえ手当てできず、「何とかしてくれ!」と、悲鳴に近い声も随所にある。そもそも県内の肥育農家は、感染源ではないかと見られている肉骨粉など一切使用しておらず、「なにも悪いことをしていないのに、なぜ、われわれが被害を受けなければならないのか」という、怒りと憤懣(ふんまん)があふれている。
 今回の事態は、ヨーロッパにおいてBSEが発生した時、日本における発生を予測し、政府が速やかに万全の対策をとっていれば起こらなかった事態である。いわば政府の「不作為の行為」によって引き起こされた事態であると断じなければならない。また発生以来の農水省の対応が、二転三転する事によって、消費者の国産牛肉に対する信用を失墜させ、不安を増大させたことも厳しく指摘されなければならない。したがって、こうした事態の責任を政府に求めることは当然の道理がある。深刻な農家の危機を救済するために、損失の完全な補償が速やかに行われる必要があり、県下畜産農家の切実な要求もそこにある。
 日本の農業経営を守り、民族独立の基盤である食料の自給を確保することは政治の根幹の課題である。
 さて、十月二十四日、農水省は既存対策とあわせ「BSE関連対策の概要」を発表した。総額千五百五十四億円である。しかし、そのうち五百十二億円はBSE発生の以前から、すでに十三年度予算措置に計上されているものであって、この事態に対する「新たな緊急対策」と言えるものではない。しかも、もっとも重視すべき打撃を受けた農家の損失に対するものは、「農家経営等の安定策」として総額の三分の一以下、四百八十八億円が振り当てられているにすぎない。その骨子は、牛枝肉価格の安定、肉牛肥育経営への緊急支援、肉専用種繁殖経営の安定、BSE検査開始直後の出荷調整に対する助成などであるが、すでに発生している膨大な損失、加えて肉牛出荷のピークである十二月にかけて新たに発生が予測される損失を考えるなら、あまりの額の少なさである。農家の不安と怒りに対して、政府の真摯(しんし)な姿勢を疑わざるを得ないものである。
 他方、十月十五日、長崎県においては、「肉用牛経営継続緊急支援事業」「県産牛消費拡大緊急対策事業」など諸策を専決処分した。これらの緊急対応の労を多とするものであるが、事態の深刻な様相から見て、これらの対応だけで万全とするものでないことも明らかである。以上の考えをふまえ、県知事におかれて、下記事項について実現のため特段の努力を払われるよう要請する。
 
 一、政府が肉牛肥育農家・繁殖農家の損失に対する完全な補償を行うよう長崎県として強く要求すること
 一、政府に対して、危機打開のために、牛枝肉価格の安定、肉牛肥育経営への緊急支援、肉専用種繁殖経営の安定対策について、その増額を求めること
 一、県内各地のブランド牛について、全国的な知名度を獲得するため諸施策を今後強力に推し進めること
 一、長崎県の「肉用牛経営継続緊急支援事業」のうち、肉専用種のもと牛の購入について、「県内市場」からの条件を実状に即し緩和すること

以上 

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