20011025(社説)

共産党のテロ事件対応

米国へ「現実路線」の売り込み図る


 米国のテロ事件以後、米軍によるアフガニスタン攻撃のエスカレートなど、世界の政治・経済情勢が大きく変化する中で、わが国の進路が鋭く問われている。
 小泉政権は、アフガン周辺への自衛隊派遣に踏み切り、安全保障にかかわるわが国の基本的な態度を大転換させようとしている。それは米国の戦略に「同盟国」としてより忠実につき従い、わが国を南西アジア、中近東諸国・人民と敵対させるきわめて危険で、誤った方向である。
 小泉政権を支える公明党はもちろん、自衛隊派兵そのものを支持する民主党など野党もまた今回の事態に際して、その階級的性格が急速に暴露されつつある。
 わけても共産党は、これらの問題で一見、米国の武力攻撃や自衛隊派兵に反対しているかのようだが、実質は米国の世界における帝国主義的犯罪をいっさい免罪し、かつテロ犯人の逮捕、国連の武力攻撃までも提唱して、米国へ「安心できる党」の売り込みに必死になっている。
 すでに共産党の裏切りは、労働者階級の間で暴露されつつあり、またわが国政治の根本的変革にとっても、彼らの「現実路線」がまったく無力であることが証明されつつある。その結果、選挙でさえ後退の一途である。
 国の進路をめぐる闘いの前進のために、あらためて彼らの裏切りを批判することは重要である。さらに、米国の戦争と干渉、自衛隊参戦に反対する国民的運動を発展させなければならない。

米国の犯罪を言わず、徹底的に免罪
 テロ発生後、共産党はこの問題で九、十月、緊急に世界各国首脳あての書簡を二度も送るというパフォーマンスを行っている。
 これらの書簡の特徴は、米国の全世界における無数の侵略・抑圧、テロなどの悪行にいっさい触れず、米帝国主義を実質擁護していることである。それどころか、米国の武力行使正当化の世論づくりに貢献さえしている。
 それら書簡はーーまずいかなる理由であれテロを非難。次いで、オサマ・ビンラディンとアルカイーダをテロ犯人・犯行組織と決めつけ、彼らの逮捕と国際裁判を要求している。そして、アフガンが犯人逮捕に協力しない場合は、国連によるアフガンへの経済制裁、軍事攻撃をせよとまであおっている。
 ブッシュ米大統領の言い分と日本共産党の見解とどこが違うのかと、一瞬、見間違うほどである。
 まず、書簡はテロを非難するだけで、その発生の背景にはいっさい触れない。経済的・政治的にせよ、何にせよ、世の中で根拠もなく事件が発生することはあり得ない。
 それを、書簡はわざわざ触れない。まして、米国の全世界における無数の侵略・干渉、抑圧、テロなどの犯罪行為についてひとことも言及しない。米国は九〇年代に入ってからも、湾岸戦争(九一年)以後イラクへの数々の爆撃と経済封鎖、アフガニスタンやスーダンへのミサイル攻撃(九八年)、さらにユーゴスラビア爆撃(九九年)などを強行し、常に世界で武力介入してきた歴史がある。この爆撃による各国人民の死者は、何万人にものぼる。とりわけパレスチナ問題では、戦後一貫して英国に代わってイスラエルを支え、この地で紛争の火種をまきちらしてきた。
 さらに、米国金融資本を頂点とした世界経済の「グローバル化」は、いわば人民の血を世界中から吸い上げ、各国・人民の貧富の格差を拡大させてきた。こうした米国の全般的な強権政治が、あまねく世界人民の怒りをかい、テロの広い土壌、背景となったことは、すでに多くの人が指摘する通りである。
 テロ事件は反面から、米国の世界における蛮行をあばき出し、世界人民の恨みをかっていることを浮き立たせた。人民の生活にせよ、諸国の真の自立にせよ、世界平和にせよ、それらを阻害している最大の元凶は米帝国主義であることを、明確にさせるきっかけとなった。
 その指摘を、書簡は避けたのである。それが意図的であったことは、不破議長自ら「今度の問題が、パレスチナ問題などと関係がある」(共産党三中総、十月十九日)ともらしたように見え見えである。こうして、共産党は米国の罪状にあえて触れず、かばったのである。
 しかも、書簡は「テロ根絶は法と理性で」と、国連の武力攻撃、犯人逮捕、国際裁判を提唱している。「テロ根絶」をいうなら、その発生の根拠、土壌を除く以外にない。これは、非政府組織(NGO)ですら主張していることである。いま米国の世界での帝国主義政策を排除することが、その最も根本的な方針となる。だがここでも共産党の書簡は、米国の横暴な国際政治にまったく触れず、米国を野放しにしている。米国を野放しにいている限り、「テロ根絶」にせよ、他の自然発生的な行動にせよ、「根絶」は不可能なのはいうまでもない。
 さらに書簡は、破廉恥にも「国連の武力攻撃」まであおり立て、武力行使を正当化する雰囲気づくりに貢献している。現在、米国がアフガン攻撃を続けている最中にである。
 こうして、共産党は今度の事件を通じて、問題をテロ自身に狭め、米帝国主義を徹底的に免罪し、人びとの目をそらさせる役割を果たしている。それも意図的であり、きわめて悪質といわなければならない。

21回大会以来の「現実路線」
国民運動を阻害する共産党
 共産党のこうした立場は、九七年の第二十一回大会以来、一貫したものである。
 共産党は、当時の国政選挙や地方選挙での議席増加を背景として、同大会で連立政権参加をめざして「現実政党」への大転換を決定した。共産党が政権に参加しても、資本主義の根幹には何ひとつ手をつけない「ルールある資本主義」実現を宣言し、国内の支配層に恭順の意を示したのである。
 また同大会は安保・外交政策では、日米軍事協力指針(新ガイドライン)問題など狭義の戦争と平和の問題だけを指摘するにとどめ、当時米国が打ちだした「東アジア戦略」など、日米同盟関係を格段に強化するものにはまったく手を触れなかった。米国の逆鱗(げきりん)に触れるのを、恐れたのであろう。あまつさえ「米国民主主義に一定の評価をしている」と、秋波を送るようにわざわざ書き足しもしている。
 米ソ冷戦時代には、西側諸国の政党も「西側の一員」かどうかが、政権参加の踏み絵になっていた。政権参加が近づいたと認識した共産党は、わが国支配層が選択した日米同盟強化の根本にふれる批判を、明確に避けたのである。
 以後、共産党は経済同友会となど財界との懇談、九八年参院選後に提起した連立政権構想での「日米安保問題棚上げ」など、さらには二十二回大会(昨年十一月)と、ひたすらに現実路線を追求してきた。
 今回のテロ事件に関して、徹底して米国を免罪する姿勢も、この路線の当然の帰結である。
 二十一回大会の当時共産党がめざしたものは、「政権をまかせても安心な政党」と、その「現実路線」を財界や米国に対してアピールすることにより、連立政権への参加をめざそうとするものであった。
 したがって、今回のテロ問題についても、自らはテロとは無縁だとして「テロ反対」を叫び立て、さらに米国に「現実政党」として懸命に売り込んでいるのである。米国に認知されなければ、連立政権に入れないという思惑からであろう。
 だが問題は、共産党の党利党略にもとづく現実路線が、国民運動が向けるべき正しい方向をねじ曲げ、きわめて犯罪的な役割を果たしていることである。これは断じて許してはならない。
 こんにち、彼らの正体は次第にあばかれ、勤労国民の間でいっそう信用を失墜している。昨年の総選挙、今年の都議会選挙、参院選と惨敗に次ぐ惨敗である。「柔軟路線」の当然の帰結であり、今後選挙で一進一退があっても、天下を覆すなど夢のまた夢である。
 政治も経済も、国民生活も、内外情勢はますます激動する。労働運動や国民運動の戦線で共産党を批判し、壮大な戦線を築いていく好機である。

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