20011017

大阪府行財政計画(案)に関する申し入れ

日本労働党大阪府委員会


 労働党大阪府委員会(吉沢章司委員長)は十月十七日、大阪府が発表した府民犠牲の「行財政計画(案)」撤回を求め、太田房江知事への申し入れを行った。東京都、大阪府などを典型とする地方自治体の財政危機は、いずれも、大企業のための大規模開発を行ってきたことが原因である。この実態と責任を明らかにしないまま、住民や労働者、中小商工業者に犠牲をしわ寄せすることは許されない。さらに、小泉改革のもとでは、地方交付税削減など新たな地方切り捨てが行われようとしている。大多数の住民のための自治体をめざし、広範な連携で闘いを巻き起こすことが求められている。

太田房江 大阪府知事 殿

一、大阪府は先月、「大阪府行財政計画(案)」を発表し、現在府議会において審議が行われている。
 その内容は、一般行政府職員三千人の削減と新人事評価制度による人件費の抑制、また、産業、福祉、教育など各種施策の大幅な見直し、具体的には外形標準課税の推進、社会福祉施設の民営化推進、民間社会福祉施設への補助金廃止、保健所の統廃合、府立高校授業料のさらなる引き上げ、府育英会奨学金の縮小、青少年会館など府立施設のあり方の再検討など、府民各層に直接の「痛み」を強いるものとなっている。
 こういった施策の導入は、不況の最中、所得低迷にあえぐ府民生活の活力を根底から奪うものであり、安易に実施すべきではない。府の財政再建にあたっては、何よりもこんにちの「危機」に至った原因解明が詳細に行われるべきである。そこがあいまいなままでは、財政再建の方向そのものが間違ったものになるからである。

一、府は財政危機の要因として、 景気低迷による府税収入の落ち込み、 国の地方税財政制度のゆがみ、 あれもこれも行ってきた政策構造からの転換の遅れ、 義務的経費の増大、これらが相まった結果だと説明している。
 だが財政危機の要因の特徴は、支出面でみるならば、関西国際空港関連整備など九二年度以降の単独投資的経費の突出した伸びにある。またこのツケである府債の償還財源、公債費の増大が、今日の府財政を大きく圧迫している。
 九〇年代に府が主体的に行った、りんくうタウン事業や、泉佐野・和泉・岸和田のコスモポリス事業、水と緑の健康都市構想などは、すでに採算面で破たんをきたしている。これらの事業が景気対策として、あるいは社会資本整備として、どれだけ府民に益をもたらしたのか、もっと具体的に検証されるべきである。さらに事業に群がり、強力な推進力となった大手の銀行、建設業者、不動産業者などの責任が明確にされるべきである。
 知事は「府が主導する面的開発は二度と行わない」と明言しておられるが、これらの事業破たんの責任を不明確にすることは、今後の処理問題に大きくかかわる問題でもある。企業局事業の破たんに伴う財源不足は二千七十九億円と公表しているが、ただでさえ進んでいない土地分譲が完全に行われなければさらに不足分は増大し、その処理はすべて府民負担となる。財政再建計画そのものの前提が崩れ去り、さらなる「痛み」を府民は強いられることとなる。
 過去の事業推進に伴う借金の金利支払いはどの銀行にどれだけ行われたのか、りんくうタウン事業を「現代の宝島」と賞賛しいったんは土地購入の契約をかわした企業はどの企業なのか、その責任はどう問われたのかなど、これまでの経過の詳細が府民に明確に行われる必要がある。
 八月に行われた行財政計画(案)の説明会の中で、有識者から「こうした事業の失敗の責任を誰が取るのか」との意見が出されたが、当然の意見であり疑問点である。

一、さらに歳入面において、府は税収入の落ち込みを不況一般の責任にしているが、ここでも府の産業政策そのものの責任が大きく問われている。
 公表されている最新の府民経済計算によると、大阪経済を特徴づける製造業と卸小売業の生産額の落ち込みが際立っている。九〇年を一〇〇とした場合の九九年の指数では、製造業が七七・〇%(全国は九四・二%)、卸小売業が九九・〇%(同一二六・八%)と、各々の生産額は縮小をしている。
 また九一年から八年間で製造業事業所数は九千九百減少し、小売商店数も一万五千二百減少した。全国との比較でもこの減少数は尋常ではない。廃業や閉店をした事業所の多くは中小零細企業である。
 税収入の安定確保は、府民経済の多数を占める中小製造業、地場産業、地域の卸小売業の振興を重視し、その力を引き出し発展させる産業政策を推進し、バランスある地域政策を行う中で、府民大多数の活力を育てる中で長期的に解決を図る以外にない。少なくともこれまでの府の産業政策は、府民経済の現状をみる限り、大多数の中小企業の振興にはさしたる効果がなかったことを自覚すべきである。
 府は昨年公表した「大阪産業再生プログラム」において、中小企業の支援策として新たな創業を重点化しているが、今日の中小企業を取りまく経営環境は生やさしいものではない。創業の呼びかけにこたえられるのは全体の中のいくつかの企業であり、放置すれば大多数の中小企業は淘汰(とうた)される運命にある。
 中小企業全般に関わる課題としては、銀行の貸し渋りなど融資面での問題、製造業ではさらに拍車がかかっている産業の空洞化問題、小売業では郊外の大型量販店出店問題や空き店舗対策、などがあげられる。
 銀行の貸し渋り防止に向けた強力な行政指導、当面の資金繰りのための大幅な融資拡大、大企業の海外移転や大型店出店にかかわる府独自の規制策などは、真剣に考慮されるべきである。
 また大型プロジェクトへの巨大企業の責任を不問に付し、府財政をその破たん処理につぎ込むよりも、地場産業経営者や地域商店主の努力を支援するために財政も思い切って投入すべきである。九七年度に、わずか数千万円の商店街アーケードへの補助が廃止されたが、これさえも地域の商店街にとっては貴重な補助事業だったのである。

一、以上述べた観点から、大阪府行財政計画(案)の撤回を強く要請するものである。

二〇〇一年十月十七日

日本労働党大阪府委員会
委員長 吉沢章司

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