20011015

連合第7回大会を評す

「参加」路線の転換なしに
労働運動の再生はできない


 十月四、五日、わが国最大のナショナルセンター・連合が、第七回定期大会を開いた。
 東芝、日立、NEC、富士通、松下などわが国有数の電機多国籍企業が次々と万単位の人員削減計画を発表するなどリストラの嵐が吹き荒れ、失業率は二カ月連続して五%を記録。反米テロ事件が世界同時不況を加速するなか、小泉構造改革が労働者の雇用と生活をさらに直撃、不安と不満が高まっている。
 本来なら、こういう時こそ労働組合の出番である。ところが肝心の組合活動はじり貧の一途をたどり、組織率は二一・五%まで低下、先の参議院選挙では連合幹部ががく然とするほど空洞化した組合の実態が浮き彫りになった。
 連合はいまやがけっぷち、再活性化へ自己革新ができるかどうかが深刻に問われる大会であった。
 大会は、二つの報告書「二十一世紀連合ビジョン」と「新しいワークルールの実現をめざして」を確認、向こう二年間の運動方針を決定し、笹森会長(前事務局長、電力総連)、大原会長代行(自治労)、草野事務局長(自動車総連)の新体制が発足した。
 では、大会は退潮に歯止めをかけ、攻勢に転じる方向を打ち出せたか。経営・資本の側のリストラ攻撃、小泉構造改革と対決して、これと闘う方針を確立し、傘下組合員だけでなく、全労働者の怒りを結集していく意思一致が図れたのか。
 残念ながら、それにはとてもほど遠い。運動方針には、もっともらしいスローガンが並んでいるが、肝心な運動路線の総括を避け、破たんが明らかになっている参加路線を清算していない。それでは「自己革新」と言っても中途半端で、再活性化などできない。
 代議員の発言にも前大会に比して運動路線に踏み込んだ執行部批判はなく、再生に向けての熱意が感じられなかった。
 先進的な活動家の役割は、重大かつ切実である。

参加路線を清算せねばならない

 「二十一世紀『ニュー連合』の役割と行動(総論)」と題する運動方針は、一見、これが連合の方針かと見間違えるような提起がされている。
「すべての勤労者を代表し、社会的な労働運動を進める」「中小労働問題は日本の労働運動の中心的課題で連合が一丸となって取り組む」「企業別組合の弱点の克服…パートなど非典型労働者に焦点をあてた運動」など。
 そして重点的運動目標を、(1)組織の強化拡大、(2)雇用・労働、社会保障など重点政策課題の実現、(3)政治の流れを変える取り組み、に置き、組織拡大を最優先課題とし連合総予算の二〇%をつぎ込んで集中的に取り組むという。
 結構なことだが、どこに実行される保証があるのか。日産リストラ、電機大手のリストラに反対の声一つ挙げられなかった自動車、電機などの大企業労組が、中小労働運動や非典型労働者のために奮闘し、労多くして功少ない組織化に汗をかくとはとても思えない。
 連合指導部が本当に自己革新しようとするなら、リストラに声一つ挙げられない大企業労組の問題もまな板にのせて、結成以来十二年間の運動のあり方を真剣に総括する必要があった。
 周知の通り、連合が結成以来とってきた運動路線は、参加路線と呼ばれているものである。われわれがパンフレット『戦後日本の労使関係』で解明したように、この路線は戦後の労使関係のある段階で登場し、発展して連合結成時点で支配的になった。
 それは、こんにち、自動車、電機など大企業労組が進めている運動路線で、経営・資本の側をパートナーと位置づけ、経営参加、労使協議会での話し合いによって労働条件の改善を図ろうとする路線である。工場閉鎖や人員削減攻撃に対しても、職場組合員の怒り、エネルギーを結集し対決して闘うのではなく、「協議」で正社員のナマ首を切らせないことだけに腐心する路線である。
 連合は、こうした企業別組合での参加路線を核に、産業別労使協議、それにナショナルセンターとして政治参加(具体的には政府審議会への参加や議会政党への要請)を通じる制度政策要求の実現、というやり方で参加型労働運動を進めてきた。
 この総決算が、経営側のリストラ、賃下げ攻撃に敗走を重ねて無力さをさらし、求心力を失った連合のこんにちの姿である。
 参加路線のもとで、経営側は何の懸念もなく工場閉鎖や「希望退職」という名の首切りに踏み切った。正社員を削減し、安上がりで無権利のパート、派遣労働者に切り替えた。大企業のリストラによって、中小下請けとその労働組合には倒産と失業がトコロテン方式で押しつけられた。失業者の激増、所得の減少、無権利労働者の急増、サービス残業・労働強化!…これが労働者が支払わされた代価である。
 また、いっこうに進まない「雇用創出」、労働法制の相次ぐ改悪が示しているように、日経連との労使合意も、政府審議会への参加も、成果を生まなかった。
 参加路線の決算はそれだけではない。幹部請負の労使協議は、労働者の高まる不満と怒りを放置する。結果、組合への信頼は低下し、団結は空洞化した。さんたんたる参議院選挙の結果は、その表れに過ぎない。
 最近発表された調査報告は、連合十二年間に、組合員の労働組合への信頼が著しく低下している事実を裏付けている。
 「九〇年代の経営参加」調査によれば、「経営参加に伴う危険はないか」との設問に、「経営との区別がつかなくなる」「団体交渉で強く言えなくなる」との回答と並んで、「組合員から組合活動が見えなくなる」が相当比率で寄せられている。(連合総研「労働組合の未来をさぐる」)
 鉄鋼労連の組合員を対象にした「総合意識調査」によれば、日本の労働組合の「賃金・労働時間など労働条件の向上」に対する影響力と役割について聞いたところ、「組合が大きな役割を果たしている」と答えた人はわずか一四・五%、「ある程度影響力を持っている」まで含めてようやく六割になるが、八年前と比較すると一七ポイント減少した。反対に、「影響力はあるが有効な役割はない」三一・六%、「ほとんど影響力を持っていない」が七・七%も。
 連合結成から十二年、その参加路線が労働者にとってもはや「有効性」を完全に失い、破たんしていることは明白である。
 連合指導部が「自己革新」し、「再活性化」をめざそうとするなら、この破たんした参加路線を清算することが不可欠である。
 だが、連合指導部は参加路線を清算しようとしていない。方針には、「労働運動は『抵抗』から『要求』へ、さらに『参加』へと歴史的に発展させてきた」と正当化し「あらゆるレベルにおける参加を追求する」と「参加の高度化」を提起している。
 そうである限り、「中小労働運動の強化」も、「非典型労働者に焦点を当てた運動」も、スローガン倒れになる可能性が大きく、労働運動の再活性化など夢のまた夢である。

新たな労働運動の萌芽が成長している

 連合の参加路線が破たんしたのには理由がある。
 九〇年代、冷戦崩壊後、金融グローバル化の時代となって、わが国多国籍企業は大競争に勝ち残るため、資本効率重視の経営に切り替え、「協調的な」日本的労使関係に変更を加えざるをえなくなったからである。そこに依存して支配的となった連合の参加路線が「有効性」を失い、破たんするのは避けがたかった。
 新たな時代にふさわしい、労働運動が成長するのも必然である。
 連合内にも、いま、破たんした参加路線に批判的な傾向、勢力が生まれてきている。
 それらは、こんにち、参加路線に対置する新たな路線を確立できていないが、企業と対決して必要ならストライキで闘う、そのために労働者の怒りとエネルギーに依拠し職場闘争、地域闘争を再構築しようとしている。
 具体的にはゼンセン同盟、全国一般など中小労組のなかに、労働者の怒りを組織し闘って活路を見出そうとする傾向が強まっている。JAMのミツミユニオンは、今年一月、工場閉鎖に反対し全国三千人弱の組合員が二十四時間ストライキに立ち上がり、雇用を確保した。
 こうした傾向、勢力こそ、新たな労働運動の萌芽であろう。
 先進的労働者の役割は重大である。新たな傾向、勢力を熱烈に支持し、緊密に連携して、その発展を促進し、大きな流れとなるように、全力で援助しなければならない。
 破たんした参加路線をきっぱりと清算し、企業・資本家に依存しない、労働者階級の団結した力によって未来を切り開く労働運動を構築しなければならない。
 天下の情勢は、わが方にますます有利になっている。

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