20010915

失業率5% 改革の「痛み」どうする

雇用守らぬ野党に期待できず


 失業率が五%を突破、東芝、日立、NECなど大企業が続々とリストラ計画を発表するなど、雇用情勢は深刻の度を増している。これに対し、「失業はやむを得ない」をうそぶく小泉政権はもちろんのこと、民主党は、むしろリストラ促進を唱えている。野党はまったく無力であり、すでに失業し、あるいはその不安に苦しむ労働者の不満にこたえていない。民主党をはじめとする野党、ましてや与党の公明党に幻想をもたず、労働者は自らの力で雇用と生活を守るべく、闘うことが求められている。

民主党 労働者の大量首切りを容認

 民主党の雇用政策は、一言でいえば「構造改革政策の推進と同時の雇用安定」というものである。
 先の参議院選挙政策においては、さも労働者の味方であるかのように「雇用不安解消・失業率引き下げをめざして、積極的な雇用創出を図る」としている。だが問題は、この文章に「経済と財政の抜本的構造改革を推進するとともに」という「但し書き」が付いていることである。つまり、規制緩和などの構造改革を進めることで「新たな雇用をつくり出す」というものである。
 鳩山代表は、失業率が五%を超えた際に小泉政権を批判し、「厳しい構造改革を断行せず」「旧態依然とした産業を生き延びさせ」ていることが、失業増の第一の原因だと述べた(八月二十九日)。
 だが、規制緩和や不良債権処理などの構造改革を進めれば、大企業はさらなるリストラを行い、多くの中小企業が倒産に追い込まれ、膨大な労働者が失業するというのは、もはや「常識」ではないか。民主党自身も、構造改革と不良債権処理を進めれば、「失業率が上昇するおそれがある」と認めているほどである。
 要するに、民主党の本音は「構造改革を断行せよ」「中小企業を倒産に追い込め」「もっと労働者を大量に街頭に放り出せ」というものである。決して、労働者の生活と雇用を守ろうというものではない。
 それをごまかそうと、民主党は「温かい構造改革」を主張している。七月十二日に出された「民主党経済対策」によれば、二兆円規模の雇用保険財政安定化のための基金新設などの雇用保険制度充実、同じく二兆円規模の職業能力開発支援制度の創設などの「セーフティ・ネット」を整備するという。
 だがこうした「温かさ」とは、決して大企業の大リストラをやめさせるというものではない。つまり、急速に進む大企業のリストラ自身は構造改革の一つとして推進しようというのであり、その上で、いくらかの「セーフティ・ネット」を要求しているに過ぎないのだ。
 このように、民主党は財界のための党である。労働者は、民主党にいささかも期待することはできない。

共産党 闘わず、幻想をあおる

 共産党は、主に「解雇規制」「ワークシェアリング」「雇用保険の拡充」の三つを主張している。中身としては、「ヨーロッパ並みの解雇規制法」、サービス残業規制、消防職員や教員の定員増による雇用拡大、雇用保険給付期間の延長、給付条件の緩和・期間延長などである。
 彼らは、産業再生法や不良債権処理による雇用破壊、中小企業つぶしを批判、雇用問題に力を入れているかのようである。
 だが、これら雇用問題の解決策も、要するに「ヨーロッパ並み」を要求するというものが主眼となっている。
 確かに、ドイツやフランスなどの欧州諸国に、一方的な労働者解雇を一定規制する法律があるのは事実である。
 だが現実には、欧州諸国で労働者が解放されているわけでも、理不尽な解雇がまったくなくなったわけでもない。それどころか、欧州諸国の多くは一〇%前後の失業率を抱えている。ドイツもフランスも例外ではない。まさか共産党は、それを「見習え」とでもいうのであろうか。
 しかも、こうした主張を実現させるために、国民的闘いを組織しているかといえば、皆無に等しいのが実態である。
 第二十一回大会以降、支配層に「安心してまかせられる」党をめざす共産党は、財界にすり寄り、現実路線をつき進んでいる。
 生活と雇用を守ることができるかどうかは職場や社会的な力関係で決まるのであり、労働運動の発展なくしては実現できない。断固とした大衆行動を組織するのではなく、ヨーロッパ諸国をモデルにした「ルールある資本主義」を唱えて財界に雇用確保をお願いしても、闘いがない限り、それは「絵に描いたモチ」である。

公明党 「100万人雇用」とあざむく

 連立与党の一角として自民党を支えている公明党は、参議院選挙を前後して、「二年以内に百万人の雇用を創出する」と、盛んに宣伝、選挙ポスターにも大々的に書いた。
 だが、その重点は「構造転換に対応できるような職能を培う教育訓練機会を拡充し、雇用ミスマッチの解消を図る」というものである。
 つまり、現在のリストラ攻撃を止めさせるのではなく、リストラを容認した上で、再就職環境を整えようというものでしかない。ましてや、三百万人以上が失業しているときにいたって、その三分の一以下に過ぎない「百万人の雇用」で鬼の首でも取ったように大騒ぎするとは、何とも間の抜けた話ではないか。
 労働者犠牲の小泉改革を支えているにもかかわらず、「人間主義の政治」を実現するなどと、欺まん的な態度をとり続ける公明党の果たす役割は犯罪的である。

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 労働者階級はこれら野党に、将来を託すことはできない。労働者は自らの雇用を守るために立ち上がらざるを得ず、その要求はストライキなどの実力によってしか守ることはできない。

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