20010725

「つくる会」教科書 アジアの共生に敵対

合格取り消し、不採択運動を


 文部科学省が、わが国の侵略の歴史をわい曲した「新しい歴史教科書をつくる会」(つくる会)などの中学歴史・公民教科書を検定合格させたことから、国内外で批判が高まっている。すでに日韓関係は最悪の状況にあり、各種交流などに大きな影響が出ている。こうしたアジアの怒りは当然である。韓国・中国の正当な修正要求を拒否する小泉政権の姿勢はアジアと敵対し、アジアと共生すべきわが国の真の国益を損ねるもので、断じて許されない。政府が「つくる会」教科書の合格を取り消すことはもちろん、各教育委員会が同教科書を採択しないよう、闘いを強めることが求められている。

 アジア諸国の歴史わい曲教科書への怒りは、日本政府が七月九日、近現代史部分への表記修正を拒否したことから、ひときわ強まった。
 抗議の声は在外日本大使館への抗議行動などにとどまらず、民間を含む各種交流の中断・延期など、広範囲に及んでいる。
 とくに、日韓関係は、「戦後最悪」ともいえる状況にある。
 二〇〇二年の日韓共催ワールドサッカー大会の共同アルバム発売が無期限延期となったのをはじめ、兵庫県姫路市と姉妹都市提携を結んでいる馬山市が、交流事業の中断を決めた。福岡県久留米市では、釜山市の中学校との交流が中止となった。島根県では高校生のハンドボール選抜チームの派遣が延期、静岡県で開かれる「世界少年サッカー大会」への韓国代表も不参加を表明した。同様の事例は、全国各地に広がっている。
 こうした異常事態への責任は、あげて「つくる会」教科書などにお墨付きを与え、度重なる修正要求を拒否した日本政府にある。
 正しい歴史認識を確立し、アジアと共生するわが国の進路を実現することは、重大な課題である。広範な国民的運動が求められており、教組をはじめとする労働組合は、その中核としての役割が問われている。


アジア諸国の怒りの声

韓国
 「過去の歴史に対する率直な反省と被害国との真の和解なしには、日本が永遠に戦犯国であり続けるという事実を直視すべき」(国会決議、七月十八日)

朝鮮民主主義人民共和国
 「日本当局が醜悪な歴史わい曲策動を『学術的誤り』の問題のように扱い、国際社会の要求に挑戦するのは、政治道徳的な低劣さを改めて示すもう一つの政治犯罪行為である」(朝鮮中央通信、七月十一日)

中国
 「歴史認識問題の処理を誤り、アジアの国家や第三世界との関係をまともに発展させようとしないなら、日本は『世界の孤児』になってしまうだろう」(北京日報、七月十六日)

インドネシア
 「ゆがめられた歴史の評価は平和を愛する国と国民という日本の印象と信頼を国際社会で損ねることになる」 (ジャカルタ・ポスト、七月十六日)

フィリピン
 「教科書問題で中国や韓国が怒るのは、日本の天皇たちが繰り返してきた『謝罪』や『悔悟』(かいご)の言葉が、正義を求める心の渇きをいやすには至っていないからだ」 (トゥデー紙、七月十二日)

シンガポール
 「改ざんされた歴史教科書の影響は、国と国との関係にとどまらず不誠実な次の世代を生み出し、日本の若者たちが道徳上の正義感を欠いて、過去の過ちを認め歴史に直面する勇気を引き起こさないようにしてしまう」(聯合早報、七月十一日)


こんなにひどい「つくる会」教科書

「つくる会」教科書の記述
韓国・中国の批判、修正要求
朝鮮半島が日本に敵対的な国家の支配下に入れば日本を攻撃する絶好の基地になる 日清戦争ならびに日露戦争を自衛戦争として合理化
日本政府は韓国併合が、日本の安定と満州の権益を防衛するため必要であると考えた。英国、米国、ロシア三国は…これに異議を提起しなかった 韓国併合の過程で侵略行為と強制性を隠蔽(いんぺい)し、国際的に認められた合法的なものとして記述
日本は植民地化した朝鮮に鉄道・灌漑(かんがい)施設を整備するなど開発を行い… 植民地近代化論、植民地受恵論の観点から「開発」がまるで朝鮮住民のためのようにわい曲?収奪や支配目的の隠蔽
(従軍慰安婦についての記述なし) 日本軍によりほしいままにされた過酷な行為の象徴である軍隊慰安婦問題を故意に脱落させ、残酷な行為の実態を隠蔽
満州国は、五族協和、王道楽土建設をスローガンに、日本の重工業の進出などにより経済成長を遂げ、中国人などの著しい人口の流入があった いわゆる東北地域の経済成長は、実際には、日本の対中侵略の戦争経済の成長である日本軍は公然と国際法を違反し、東北で細菌戦の研究実験基地を作り、731部隊は大量の人間を人体試験に使い、無数の中国人を残害した
東京裁判では、日本軍が1937年、日中戦争で南京を占領したとき、多数の中国人民衆を殺害したと認定した(南京事件)。なお、この事件の実態については資料の上で疑問点も出され、さまざまな見解があり、こんにちでも論争が続いている 残酷極める「南京大虐殺」を軽々しく描き、日本軍が南京城を占領した後、中国の平民と武器を放した捕虜に対して計画的に、6週間にわたる大規模な虐殺を実施した歴史的事実を隠蔽した
1937年7月7日夜、北京郊外の盧溝橋で、演習していた日本軍に向けて何者かが発砲する事件がおこった。翌朝には、中国の国民党軍との間で戦闘状態になった(盧溝橋事件) 日本が30年代から計画的に中国に対し、全面的な軍事進攻を準備し始めたことは大量の歴史的事実によって明らかにされている

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