20010705(社説)

日米首脳会談 対米追従の同盟を確認

国の進路転換めざし、沖縄に連帯し全国で闘おう


 小泉首相とブッシュ米大統領の日米首脳会談が六月三十日、行われた。
 両者の間では会談終了後、日米間の「揺るぎない同盟」をうたった共同声明が発表され、小泉首相は「これほど大統領と信頼関係を築けるとは思わなかった」と成果を強調してみせた。
 会談では、日米関係、安全保障、経済、地球環境(温暖化防止)問題などが話し合われた。だがこの会談の結果、明らかになったのは、安全保障・外交問題でも、経済問題でも、引き続き徹底して米国への追随を再確認した小泉政権の外交姿勢である。
 米国がヨーロッパで英国という緊密な同盟国を持っているならば、アジアでもそれに匹敵する同盟を認めたのが、わが国ということになる。
 ブッシュ政権の対アジア戦略を支え、米軍事戦略を具体的に支援することを、小泉首相は首脳会談で改めて誓約したのだ。わが国はアジアにいながら、米国側に立って中国、朝鮮などアジアを敵視する位置を再度明確にしたのである。
 他方、五月の田中外相の日中、日韓外相会談にみられるように、日本外交は中国、韓国、朝鮮民主主義人民共和国、ロシアなど、近隣諸国との関係は、完全に行き詰まっている状態のままである。
 時あたかも会談の前日、またもや在沖縄米兵による女性暴行事件が発生した。日米安保体制の下では、アジアと敵対する位置に立たされるだけでなく、在日米軍による犯罪により日本国民がじゅうりんされる事態が永久に続くことになる。まさに平和と繁栄の道ではなく、戦争と亡国の道である。こうした道は根本的に転換されなければならない。
 沖縄県民は怒りに燃えて、再び立ち上がっている。沖縄県民の切実な要求と闘いに連帯し、米軍基地を撤去し、安保条約を破棄する闘いを直ちに全国で巻き起こす必要がある。

いっそうの日米軍事協力を約束
 会談で、小泉首相は日米防衛協力の指針(ガイドライン)の具体化、「戦略対話の強化」を約束させられた。「戦略対話の強化」とは、アジア情勢、日米の任務分担などについて次官級による協議を新設するなど、日米軍事結託をいっそう強めるということである。
 ガイドラインの具体化では、わが国はまだ集団的自衛権行使、国連平和維持軍(PKF)参加など、よりいっそうの軍事協力を米国から突きつけられている。
 特に注目すべきは、対中国での日米結託である。共同声明は、「国際社会における中国の建設的役割を促す」として、両国が共同で中国に対処する意図をあからさまにしている。
 すでにブッシュ政権は、旧ソ連のような強大国の台頭を認めず、現在の中国を最大の「戦略的競争相手」と位置づけている。最近出された米国防省系シンクタンク・ランド研究所の報告(五月)も、東アジアに展開する米軍戦力を朝鮮半島重視から、台湾海峡に重点を置く「南方型」に移すよう明確に提言している。そのためには、沖縄・下地島の新たな米軍基地化さえ求めている。
 米国は、「米中対決」でわが国を米国側にはっきりと組み込み、中国敵視の位置に立たせようとしているのだ。最近の日中間の対立、つまり教科書問題、首相の靖国参拝、李登輝問題などでの対立も、米中対決の構図と無縁ではない。小泉首相は、わが国の思惑もあって米国のこの要求にこたえた。
 もう一つ突出したのが、ミサイル防衛(MD)問題である。米国の進めるミサイル防衛構想に小泉首相は、「理解」を明言した。すでに九九年以来、わが国は米国と弾道ミサイル防衛の共同技術研究を進めている事実がある。
 もともと、ミサイル防衛構想とは核(ミサイル)軍拡競争において、米国が中国、ロシアに対して優位に立ち、主導権を握ろうという一種の「こけ脅し」である。これには、当の中国、ロシアが核軍拡を激化させるものとして猛反対しているばかりではない。この六月、ブッシュ訪欧の際に噴き出したように、仏、独さえ批判している。したがって、この米構想を事実上支持している主要国は、欧州では英国、アジアでは日本ということになる。これほど、わが国は米国にぴったりと寄り添っている。くしくも、小泉首相の次の訪問国は英国であった。

米国従属の同盟うたう小泉外交
 共同声明は冒頭、「日米同盟がアジア太平洋地域の平和と安定の礎」と再確認した。さらに、小泉首相は会談の中で「日米関係が良くなるほど他国との関係も良くなる。日米関係の悪化を他国との関係で補うことはできない」と強調し、日米同盟を最も重視する姿勢を鮮明にした。
 一面では、今回の会談はこのところ世界で孤立するブッシュ政権を助けることになった。ブッシュ政権は、その強硬姿勢ゆえにミサイル防衛構想では中ロや仏独と対立、地球温暖化防止の京都議定書問題では欧州と決裂したままである。そこに小泉が手をさしのべたわけである。
 まして現在、日米経済が悪化する状況下だけに、かれらにとって政治・軍事面での協調演出は切実な課題であった。
 小泉の側の狙いはきわめて明確である。日米同盟という力を背景に、近隣の中国、朝鮮半島、ロシアに対処しようというものである。そこには、一方で米戦略に従属する忠実な同盟者として振る舞うと同時に、他方で大国主義の思惑も露骨である。
 小泉政権の外交路線では、わが国外交の行き詰まりの現状など、到底打開できるものではない。まして、「近隣諸国との友好」「アジアとの共生」などありえない。これの根本的転換が、早急に求められている。

最も広い戦線つくり断固前進を
 日米会談の直前、この日米安保体制の矛盾を表す事件が起こった。在沖縄米軍による女性暴行事件である。
 在日米軍基地への反感の高まりを恐れたブッシュは、あわてて「陳謝」した。そして小泉首相は、普天間代替基地の期限限定を話題にしたが、まったく無視された。
 今年二月のえひめ丸沈没事件の時と同様、なぜ日本政府は事件の当事者である国民になりかわって、もっと毅然とした態度で米兵の横暴を糾弾しないのか。日米の信頼関係を最優先し、肝心の国民の生活と安全をないがしろにしている。
 沖縄県民は、再三繰り返される傍若無人な米兵の事件に怒り心頭である。すでに県民の闘いは開始されている。地元北谷町は緊急抗議決議を上げ、県下自治体も続こうとしている。沖縄平和運動センターなどによる大衆行動も始まった。本土でも、抗議の声が上がり行動が開始されつつある。これを緊急に全国に広げなければならない。
 米軍の占領以来、戦後無数に起きた米軍犯罪を根絶するためにも米軍基地撤去、安保条約破棄のために断固闘わなければならない。またそうしてこそ、アジアと共生できるわが国の平和な環境も保証できる。これと逆行する小泉政権の外交路線は、かれらの重大な弱点でもある。折しも、国内では米国からの「自立論」も強まっている。国の前途を憂える最も広範な人びとと連携し、断固闘おう。


ランド研究所
今年5月、6月と相次いで、中国抑止を最も狙ったアジア戦略、ミサイル防衛や集団的自衛権行使で日本に態度を迫る報告書を発表した。2次大戦後、米空軍の要請でつくられた米シンクタンクの草分けである。軍事問題研究が中心。報告をまとめたカリルザッド氏は最近、ブッシュ政権の国家安全保障会議(NSC)の上級部長に就任した。

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