20010625

小泉改革 生活と地方を守る大衆行動を

「地方切り捨て」に反対の声続出


 小泉首相が議長を務める政府の経済財政諮問会議は六月二十一日、経済財政運営・構造改革の基本方針を発表した。基本方針は、今後二-三年を「集中調整期」とし、銀行の不良債権処理や特殊法人の民営化や地方交付税の見直しなど「七つの改革プログラム」を同時に進めるとしている。この基本方針は、多国籍化した大企業が国際的な大競争にうちかつため、国と地方の財政赤字六百六十六兆円を削減し、財政を自由に使えるようにすることが一つの狙いである。また、年金など社会保障や税などの大企業のコスト削減も狙っている。そのために、多大な犠牲を労働者だけでなく、地方自治体、勤労国民全体に押しつけようとしている。とりわけ、地方自治体に対しては、「自助と自立」と称して公共事業、地方交付税のあり方を見直すと、露骨な地方切り捨て公共サービス削減を主張している。こうした地方切り捨てに対して、全国市長会をはじめ九州地方知事会や各地で「小泉改革」に反対する声があがっている。改革でリストラにさらされる労働者階級は、自らの雇用と生活を守る問題とあわせ、こうした自治体をはじめ国民諸階層と連携を強め、大衆行動で「小泉改革」に反撃を開始しよう。(社説関連記事

全国市長会
交付税削減
理解も容認もできない

 全国市長会は六月七日、「都市税財源の充実確保に関する決議」を行った。決議は「地方財政は、連続する巨額の財源不足により、まさに構造的な危機状態にある。このような時に『地方交付税の削減』が議論されるのは、地方財政の実態はもとより、地方行財政の仕組みからも理解できず、到底容認できない」と、小泉「改革」による地方切り捨てを批判した。
 そして地方財政について「都市自治体の事務には、にわかに廃止などが難しいものが多いうえ、事務の大部分は細部に至るまで国の法令などにより決定されており、主要な自主財源である地方税、地方交付税も国が決定するという現在の仕組みの下では、各都市自治体の努力だけでこのような危機的な状況を打破することはできない。今や、今後の行政運営に不安を感じざるを得ない状況である」と指摘した。
 地方自治体はこの間の景気対策としての減税によって歳入が減り、公共事業拡大で公債が拡大した。これらは国の政策であり、そのツケが地方にたまっている。そして、地方交付税の減額などが実施されれば、地方自治体の財政などいっきょにつぶれてしまう。だからこそ、全国市長会の決議は、地方交付税の拡充、税源移譲などを要求しているが、当然のことである。


7知事緊急アピール
削減に重大な懸念を抱く

 木村守男・青森県知事など岩手、宮城、秋田、岐阜、三重、高知の七県知事は六月二日、「地方財政改革に対する緊急アピール」を発表した。
 アピールは「最近の国における一方的な地方交付税制度の見直しの議論、あるいはその総額の削減が行財政改革につながるといった短絡的な議論には、重大な懸念を抱かざるを得ない」と批判し、「そもそも、現在の地方交付税は、教育・福祉などその多くが国が地方公共団体に歳出を義務付けた地方負担額を積み上げたものである」と地方交付税が国の事務執行のためのものであると指摘している。
 そして、?地方交付税制度については、地方財源の保障を目的として計上される地方財政計画の歳出の中身を、今一度総点検すること、?国庫補助金の整理縮小、国から地方への税源の委譲など自治体経営を展開していく上で望ましい制度的環境を整備すること、などを要求している。


九州知事会
地方切り捨て反対
交付税は補助金ではない

 九州地方知事会は六月六日、長崎で第百十七回会議を開いた。そこでは、小泉「改革」の道路特定財源の見直しや地方交付税の削減は、大都市重視、地方切り捨てにつながり地方再生の視点に立った税財源の確保、地方分権推進の必要性があらためて訴えられた。
 特別決議では「地方交付税の削減ありき、といった議論がなされている現状は、憂慮に堪えない」としている。さらに、「地方交付税は国からの補助金ではない」(平松守彦・大分県知事)、「交付税の約七割は教育、福祉など本来、国がやるべき事業に使っている」(金子原二郎・長崎県知事)という批判が出た。それというのも、国と地方の税収が三対二であるのに、歳出段階では二対三に逆転しているからだ。同知事会は、国から地方への税財源の移譲・確保を強く求めた。

町村は成り立たない

 全国町村会の山本文男会長(福岡県添田町長)は六月五日、小泉首相に「地方交付税を見直すというが、町村の運営が円滑にできるように配慮してほしい」と申し入れた。そして、「見直す場合には事前に町村長の意見を聞いてほしい」とも注文した。
 とりわけ、小さな自治体に交付額を上乗せする「段階補正」が廃止されれば、町村は成り立たない、といわれている。

経済界からも反対の声

 木村良樹・和歌山県知事と片山善博・鳥取県知事は五月二十八日、地方交付税削減について「短兵急な地方切り捨て議論は避け、地方の実態に即した改革を進めるよう」求めた。また、近畿七府県知事も五月三十一日、緊急アピールを発した。
 東北経済連合会は六月十二日、道路特定財源制度の維持などを柱とする提言をまとめた。
 さらに、日本商工会議所の稲葉興作会頭は六月十二日の記者会見で、道路特定財源の見直しについて、反対を表明した。


交付税削減絶対反対
全国市長会
都市税財源の充実確保に関する決議(要旨)

1、地方の歳出規模と地方税収入との乖離(かいり)をできるだけ縮小するという観点に立って、国と地方の税源配分の見直しを含む税制の抜本的な改革を早急に進め、都市税源の充実強化をはかること。
2、地方交付税の引き上げなどにより、地方交付税総額を安定的に確保すること。地方交付税の減額は、絶対に行わないこと。
3、地方債資金については、長期・低利の良質な公共資金の安定的確保をはかること。特に、公営企業金融公庫の資金調達については政府保証を維持すること。

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