20010615

道路特定財源見直し 「小泉改革」の突破口

非情な地方切り捨て


 小泉政権は「聖域なき構造改革」の突破口として、道路税など「特定財源の見直し」を掲げている。これは、経済財政諮問会議が提示した地方交付税制度の見直しと共に、大都市を優先し、地方に犠牲をしわ寄せしようというものである。地方自治体にとって経済・雇用面で大きな影響をもつ特定財源を見直すことは、そこに住む国民大多数の生活にもまた、多大な犠牲が出ることは避けられない。すでに、地方自治体や業界団体などが「見直し」に反対する声を上げ始めている。これら各方面の闘いを支持、発展させ、小泉が進めようとする国民犠牲、地方切り捨ての「改革」を挫折させなければならない。

「財政再建」口実に道路税を標的
 道路特定財源とは、ガソリンに課税される揮発油税、自動車購入時にかかる自動車取引税、車検時の自動車重量税などから構成される。これらは、道路建設や補修などに使い道が限定されたものである。二〇〇一年度当初予算では、国税約三兆五千億円、地方税約二兆三千億円の税収が見込まれている。
 道路特定財源は、一九五三年、揮発油税創設に始まった。これを財源に、「道路整備五カ年計画」が実施されてきており、現在まで十二次を数える。
 この税の本質は、戦後経済の復興・成長、また自動車産業発展の過程で、さらには高度経済成長を実現するため、道路交通網など大企業のための産業基盤整備に使うことであった。
 だが、産業基盤整備のみならず、地方における経済・雇用政策への大きな波及効果をもたらしてきた。道路予算を使いながら、田中角栄以来、自民党のいわゆる「建設族」が利益配分型の政治基盤を形成してきたのもまた、事実の一面ではある。
 多国籍化したわが国大企業は、国際的大競争に生き残るため「身軽」で「効率的」な政府を必要としている。ゆえに、国が四百兆円以上の財政赤字を抱えることを口実に、特定財源の一般財源化を狙っている。

「地方切り捨てを招くな」(島根県知事)
 小泉首相は、道路特定財源の見直しを表明している。公共事業に対する批判を逆手に取り、「改革」を進めようというのである。
 しかし現実には、一九九八?二〇〇二年の「第十二次道路整備五カ年計画」は総額七十八兆円にもなり、土地改良(四十一兆円)、下水道(二十三兆七千億円)などを押さえる大規模なものである。また、国の予算・財投・地方支出を含む行政投資実績中、道路事業はダントツの二六・三%(十二兆九千億円)を占めている(九六年・自治省)。
 このように、道路建設は、地方経済にとっては大きな位置を占め、雇用の受け皿となっているのである。
 まだインフラ面で未整備の部分を残し、道路税を重要な財源として公共事業を進めている地方自治体からすれば、道路特定財源見直しは明らかな「地方切り捨て」にほかならない。

続々とわき起こる地方・業界の反発
 小泉の「見直し」策動に対して、すでに反対の声がわき起こっている。
 道路特定財源見直しに対しては、二十四県知事が反対を表明、「賛成」は神奈川県一県に過ぎない。
 九州・山口・沖縄の各県知事で構成する九州知事会も六月六日、道路特定財源の見直しに反対する特別緊急決議を採択している。
 平松・九州知事会会長(大分県知事)は「水や食料、電力など地方のバックアップなしに都市の生活は成り立たないはず」と、都市優先の「改革」への危ぐを表明した。
 経済・業界団体も、続々と反対の声を上げている。
 東北経済連合会は十二日、特定財源維持などの緊急提言をまとめた。日本商工会議所も、「必要でないなら枠を縮小すべきで、道路以外に用途を広げることはおかしい」(稲葉会頭)と述べた。石油連盟も同様の見解を示し、インターネットを通じてアンケート活動などを繰り広げている。
 日本土木工業協会は、「道路整備以外の財源も(特定財源から)取ろうということにすると、(自動車を利用する)特定の人びとに過重な負担を強いることになる」と述べ、全国高速道路建設協議会も、見直し反対を表明している。
 先の自民党総裁選挙で小泉勝利の原動力となった都道府県連幹部でさえも、北陸、九州地方を中心に十五県が見直しに反対している。
 小泉に対し、「地方を切り捨て、東京、大阪中心の政治にしようとしている」(山中貞則元通産相)との反発が高まることは避けられない。

幅広い連携で「改革」阻止を
 道路特定財源は、もともと「受益者負担」の特定財源として始まった税である。「道路整備は達成された」のならば、速やかに減税することこそ、筋というものであろう。業界などの見解は、その意味で支持できるものである。
 だが、野党はこうした地方の声に耳をかそうとはしていない。
 民主党は率先して「一般財源化」を主張し、小泉を応援するありさまである。共産党もまた、「早くから一般財源化を主張してきた」などと、小泉と「改革」を競っている。
 国民と地方を犠牲にする「小泉改革」に反対する世論を幅広く結集し、「改革」を挫折させなければならない。

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