小泉政権が発足し、約一カ月がたった。世論調査では八〇%などという「高支持率」が示され、野党はなすすべを失っているばかりか、民主党などは盛んに小泉にすり寄り、エールを送る始末である。小泉政権は「改革断行」を掲げているが、それは労働者、中小商工業者など勤労国民の営業と生活を犠牲にした上で、多国籍化した大企業が国際競争に生き残るため、彼らを徹頭徹尾保護、優遇する「改革」である。小泉政権の正体を見抜き、大衆行動で国民生活を守り、財界政治を一新しよう。
痛みを強いる構造改革
不良債権処理で130万人失業
小泉首相は、この内閣の最重要課題は、経済再生だとし「緊急経済対策」を実行するといっている。
それに盛り込んだ金融機関の不良債権の最終処理の影響について、研究機関がまとめた試算によると、建設、不動産、卸・小売の三業種を中心に失業者は、新たに百三十万人発生するといわれる。
しかも内閣府は「不良債権の最終処理を進め、経済がバランスの取れた姿に戻る過程では、失業が発生しうる」と容認している。
まさに、大銀行など大企業が生き残るために、労働者や中小企業に多大な犠牲を押しつけようとしている。
地方切り捨て、都市を重視
小泉首相は道路税など、特定財源配分の見直しを明言。さらに、経済財政諮問会議(議長・小泉首相)が来月まとめる経済財政の基本方針「骨太の方針」は、国庫支出金など国から地方への支出を削減するため、地方交付税の配分見直し、過疎地優遇などの是正などを打ち出そうとしている。
地方交付税は地方収入の二二%を占めており、これが削減されれば、地方の福祉切り捨てなどにつながることは明らかである。
しかも、地方に財源を移譲しないまま行えば、すべてのしわ寄せは、自治体住民全体にのしかかるのである。
総じて、自民党の都市部での選挙敗北から、大都市対策でもあるだろうが、地方を切り捨て、都市と地方の格差拡大を進めようとしている。
社会保障も切り捨てへ
首相は社会保障について、「薄い給付、重い負担」の方向を所信表明で述べた。「骨太の方針」でも、高齢者の年金に対する課税強化、年金、医療、介護の公的保険制度一本化などが検討されている。
これらは、すべて国民に負担を強いるものであり、社会保障切り捨てを強引に進めようとするものだ。介護保険で明らかなように、金がなければ何の保障も受けられないが、それを医療や年金にまで広げようとしており、到底許されない。
相変わらずの対米追随
小泉首相は、すでに所信表明演説でも「日本の繁栄は、有効に機能してきた日米関係の上に成り立っている」と、これまでの歴代自民党首相と同様に日米基軸を打ち出している。
集団的自衛権に踏み込む
米国から求められている集団的自衛権の行使については、小泉は「日本の安全保障の確保や日米関係を緊密にするために努力、研究すべきだ」とし、従来の政府見解にとらわれず、集団的自衛権行使に対応する姿勢を示した。
有事法制を進めることも、前内閣に続いて表明した。
これらは、政局の状況を計算しながら、機会をうかがっている。
靖国神社公式参拝強行へ
小泉は五月十四日、首相として事実上、靖国神社を公式参拝することを表明した。しかも、「よそから言われてなぜ中止しなければならないのか」と、中国や韓国、朝鮮民主主義人民共和国などからの反対があっても、参拝することを強調した。
教科書問題への対応と同様、アジア諸国からの「いまだに侵略の誤りを認めようとしていない」という当然の批判に耳を傾けず、アジアに敵対する道を歩もうとしている。
このように小泉政権は「改革」を掲げて登場したが、その本質は、国民犠牲で危機を乗り切ろうとするものでしかない。
雇用と生活、営業を守るために、労働者、中小商工業者は小泉政権にいっさい幻想をもたず、大衆行動によって、財界政治の一新のために闘おう。