20010525(社説)

国内に大きな波乱生む小泉改革

正体見抜き、小泉政権と闘おう


 「改革断行」を掲げた小泉政権が成立して一カ月が経過した。
 この期間、マスコミもあげて「改革」の大合唱で、これに逆らう者はあたかも国賊であるかのようである。内閣支持率も最高水準の八〇%台と、新政権を持ち上げている。
 確かに、長期の不況にあえぎ、出口の見えない国民にとってみれば、改革を掲げた新政権に大きく期待するところがあるだろう。
 だが、この改革をその通り具体化していけばどうなるか。ただでさえ、米国経済のバブルがはじけ、日本、アジア経済にも次第に大きな影響を及ぼしつつある局面である。小泉政権の構造改革が本格化するにつれて、それが国民の大多数に「痛み」を強いるものであることが事実で暴露される。経済のマイナス成長さえあり得る。このことは、小泉首相自身公言してきたことである。遅かれ早かれ、国民大多数の期待は、急速に裏切られ、小泉政権への幻想が吹き飛ぶであろう。
 「小泉改革」が進むなかで、大多数の国民の負担が増大し、犠牲が押しつけられ、各階級・階層間の利害対立は激化する。倒産、失業の増大、貧富の差の著しい拡大などで経済的、社会的な不満も充満する。また、都市部の豊かな層と地方・農村との対立も激化するであろう。
 こうした矛盾の激化を緩和するだけの余裕を(日本経済の歴史的な危機の結果)、もはや支配層は失っている。構造改革で利益を得る、わが国の多国籍化した大企業など支配層主流と、切り捨てられる国民大多数との大きな対立は必至である。
 わが国政治は「不安定」化し、流動化するであろう。大局的にみれば、支配層は追いつめられており、労働者階級、国民各層にとっては歴史的なチャンスとなろう。労働者階級は、小泉改革の攻撃に対抗して闘いを発展させ、幅広い政治的な戦線をつくり、勤労国民の新たな政治の樹立をめざして闘っていかなければならない。

改革は多国籍大企業のため
国民各層に多大な犠牲が
 小泉首相は、五月七日の衆院本会議で所信表明を行い、「新世紀維新」ともいうべき改革を各分野で断行する、と述べた。
 その中で、不良債権の最終処理、競争的な経済システムの構築、財政構造の改革という「三つの経済・財政の構造改革」を表明した。
 行政改革では、郵政民営化を含めた検討、地方分権や公務員制度改革など。また、社会の構造改革では、教育基本法の見直しや社会保障制度の再構築などである。
 最後に、外交・安全保障では、日米同盟関係を基礎に近隣諸国との友好関係をはかる、としている。その日米関係については、「日米安保体制がより有効に機能するように努める」と述べた。また、有事法制を検討する、としている。外交・安保政策は、いわば自民党歴代政権の踏襲の範囲であり、当面「模様見」の方向がうかがわれる。
 この所信表明の大きな特徴は、集団的自衛権の行使容認や改憲などを前面には出さず、経済・財政面の構造改革路線がクローズアップされていることである。
 それは、「経済の立て直し」こそが小泉政権に与えられた緊急課題であり、またこれを達成することを優先させることを戦略的に選択したことを示している。
 特に、不良債権の最終処理と二段階による財政再建、この二つが「小泉改革」の目玉商品として前面に押し出され、強調されている。
 ところで、不良債権の最終処理を行えば、国民生活と日本経済は深刻な打撃をこうむることは火を見るよりも明らかである。
 今年の四月に決まった政府の緊急経済対策(小泉政権はこれを実行すると断言している)に盛り込まれた金融機関による不良債権(主要銀行だけで総額十二兆七千億円、二千年九月末)の最終処理を行うと、中小企業が強引に倒産に追い込まれ、またゼネコンなどもリストラを余儀なくされ、失業者が新たに「百万人強」増える、と予測されている。
 しかし、これは大手銀行だけを対象にした場合である。仮に、地方銀行を含む全国銀行が不良債権(約二十四兆円)を最終処理すると「失業率は六・八%、その年の経済成長率はマイナス一・五%に悪化する」という。
 とりわけ、深刻なのは建設、不動産、流通の三業種であるが、建設業だけでも中小企業の倒産や大企業の不採算部門のリストラなどで約五十万人の失業者が出る、との試算が出されている。
 不良債権の最終処理一つとっても、労働者、中小企業(金融機関も含む)、地方経済にとっては実に深刻な打撃だ。それだけでなく、いっそうのデフレとなり、国民経済の危機はますます深刻化する。
 もうひとつは、財政構造の改革である。現在国会で論議している最中であるが、公共事業の見直しと国家予算の削減、特定道路財源の見直しと使途拡大、地方交付税の見直しなど、次第に具体的な方策が明らかになりつつある。早くも、これらをめぐる深刻な利害対立がすでに自民党内部で起こっている。鳥取、宮城など各地方の知事も猛烈に反対の声を上げ始めている。すでに国内的な矛盾激化の兆しが出始めている。
 改革は、わが国戦後システムの急激で、大がかりな外科手術であって、市場原理による「弱肉強食」の世界をつくろうとするものである。したがって、保守層も含む各方面から激しい抵抗と対立を招くことは当然の成り行きである。
 これらの結果、犠牲をこうむるのは、地方であり、また長い間、公共事業で食っていかざるを得ないように追い込まれた農民や建設業界などで働く人びとである。国家財政を食い物にして肥え太り、財政危機の元凶となった大企業、大銀行はまたもや優遇される。
 その上に、規制緩和による「競争的な経済システム」の構築、そして行革など新たな攻撃が加わることになる。さらに、「小さい政府」をめざして、医療や福祉、介護、そして年金など社会保障制度の切り捨てが断行されようとしているのだ。

その本質は時間と共に明らかに
闘争を準備しよう
 高支持率の小泉政権が、改革を断行する過程はまた、国民にとってその実質が暴露される過程でもある。
 労働者階級と広範な国民各層は「小泉改革」に一切の期待をもつことができない。闘う以外に活路はないことは明らかである。
 しかるに、ナショナルセンター連合の支持をうける民主党は、こともあろうに「小泉改革」の応援団をかって出て、「構造改革のスピードを競う」などと小泉政権を喜ばせている。菅直人幹事長は、構造改革のための「救国内閣」構想を提唱する始末である。
 こうした民主党はすでに勤労国民の政党ではない。また、民主党を支持する鷲尾など連合中央指導部は、労働者階級の裏切り者である。この連中を打ち破る以外にない。
 これに劣らず悪質なのが、日本共産党である。彼らは「小泉改革反対」とはいっている。しかし、その内容は「ルールなき資本主義の是正」であり、また欧米並みの税金の使い方をせよ(公共事業に少なく、社会保障に多く)、ということである。しかし、支配層が国民大多数への新たな攻撃に打って出ているとき、こうしたことで事態を打開できないことは明らかであろう。
 では社民党中央はどうか。もっぱら「護憲」の旗を掲げるばかりであり、構造改革に対して明確な態度をとれない。ましてや自由党・小沢らの野党共闘と議会がすべてで、国民運動を組織せず、労働運動、大衆運動に頼ろうとはしない。これでは、「小泉改革」に対抗できるわけもないであろう。
 労働者階級の断固たる行動こそ勝利への道である。国民犠牲の小泉改革に反対し、国民諸階層と共同して闘おう。
 対米追随の小泉政権に反対し、安保条約破棄、米軍基地撤去、独立・自主の新しい国の進路、アジアの共生を求めて、壮大な国民世論と戦線をつくり出そう。