20010425

自民党総裁選
米国の「お墨付き」も念頭に

「集団的自衛権」行使などあおる


 自民党の総裁選挙が行われ、小泉元厚相が新総裁に選出されることが確実となった(四月二十三日現在)。一政党にすぎない自民党内の選挙にもかかわらず、支配層はマスコミを総動員してブームをあおった。とりわけ危険なのは、「争点」として「集団的自衛権」行使や靖国神社公式参拝、教科書検定などを意図的に取り上げ、対米追随でアジア敵視、憲法改悪のキャンペーンを行っていることである。構造改革などの経済政策については一定の違いがある四候補だが、この点についてはまったく違いはない。いくつかの点について検証する。

 麻生、亀井、小泉、橋本の四候補が、その違いをもっとも際立たせているのは、経済政策である。
 端的なのは、小泉が従来から掲げている郵政事業の民営化だが、景気回復を優先する亀井・麻生に対し、構造改革を先行させる小泉、そして中間派の橋本、という図式である。
 この違いは、これまでの自民党総裁選になかったほどで、わが国経済の危機を打開する方法について、支配層内部で合意がとれていないことを意味する。
 なぜなら、構造改革は「弱肉強食」そのものであり、一部大企業が国際競争で生き残るための政策であるからだ。これを断行すれば、中小商工業者が大量につぶれるだけでなく、大企業ですら、一部は耐えきれず「市場からの退場」を迫られる。もちろん、多くの労働者が街頭に放り出される。
 構造改革を行わなければ国際競争に生き残れず、逆に行えば、中小企業など自民党の支持基盤崩壊をさらに加速させる。しかも構造改革は、現在の不況をさらに悪化させざるを得ない。自民党は、こうした深刻なジレンマの中にある。
 すでに多くの中小企業や農民は苦境にあり、これらの自民党支持者は、現状変革への何らかの「期待」をもって、小泉に投票したと思われる。これが、多くの地方組織で小泉が圧勝した背景であろう。もちろん、小泉への「期待」は幻想に過ぎないのだが。

そろって軍事大国化を主張

 反面、安保・防衛政策などについては、表のように、四候補に違いはほとんどない。いずれもが「集団的自衛権行使」と憲法改悪を公言している。
 この背景には、昨年のアーミテージら超党派の元国防次官補による提言にみられるように、わが国に「英国並み」の同盟関係を求める米国の要求がある。同報告は、具体的に集団的自衛権の行使や有事法制、スパイ防止法制定、改憲などを求めている。
 米国は、中国を敵視してアジアに十万人の米軍を配置する九五年の「東アジア戦略」を維持しつつ、戦術的には対中関係を「戦略的パートナー」とする政策から、「戦略的競争相手」とするより強硬な姿勢をとっている。
 四候補がいずれも集団的自衛権問題で積極的なのには、政権担当のために米国の「お墨付き」を得たいという狙いもある。
 一部マスコミもまた、こうした流れと結びついて、「日米同盟関係をあいまいにするな」(読売新聞社説)と「踏み絵」を迫った。

侵略を美化し、アジアに敵対


 また、政府は侵略の歴史を美化する「新しい歴史教科書をつくる会」(つくる会)による教科書を検定に合格させ、李登輝・台湾前「総統」の来日を認めるなど、中国、アジアへの敵視政策を強めている。
 集団的自衛権問題のみならず、こうした点でも、四候補は共通している。
 「つくる会」の教科書に対する国際的批判の高まりに対し、四人は何ら問題がないかのように開き直っている。靖国神社への公式参拝については、宗教団体などの票を当て込むことも含めてであろうが、積極推進の姿勢をとっている。折からの李登輝来日問題についても、「人道」を口実に、そろって容認する姿勢を示した。
 これは決して偶然ではない。米国からの集団的自衛権要求と表裏一体のものとして、侵略美化、アジア敵視の世論をつくろうというのであろう。四候補は、それに実に忠実である。
 このように、四候補は日本を危険な道に導く売国奴であるという点において変わりはない。
 誰が総裁となろうと、自民党に期待がもてないのは当然だが、民主党など野党もまた、こうした自民党と政策面では大差ない。鳩山代表自身が、「自民党と政策面で違いはない」と公言するほどである。
 国民各層が議会内で茶番を繰り広げる与野党に期待せず、大衆行動で要求実現を迫ることこそ、もっとも展望のある道である。

憲法・集団的自衛権
構造改革・景気回復
麻生太郎(経済財政担当相) 集団的自衛権行使は行使できないという理解の仕方はおかしい 緊急経済対策など、景気対策を優先
亀井静香(政調会長) 早期の憲法改正。米軍が武力攻撃を受けた場合、武力行使に加わっていかにゃならん 公共事業の前倒し、補正予算、減税を公約
小泉純一郎(元厚相) 公海上で米国が攻撃を受けた場合に、何もしないわけにはいかない 構造改革なくして景気回復なし
橋本龍太郎(行革担当相) 身近な問題をきちんと片づけていくべき 構造改革のための「200日プラン」を策定する