20010405

民主党・参院選政策を批判する(下)経済・社会保障政策

弱肉強食の政策進める


 民主党は三月二十三日、七月の参院選に向けた政策として、一月の「政策(草案)」を継承して「七つの改革・二十一の重点政策」(以下「政策」)を発表した。だが、自民党以上に弱肉強食の改革政治をもくろむ民主党では、国民の生活と営業の困難は打開されない。美辞麗句で飾ってはいるが、「政策」は徹頭徹尾、国民に犠牲を強い、財界の利益を守るためのものにすぎないからである。労働者や中小商工業者は民主党に期待せず、自らの力で闘い、要求を実現する政治的力を次第に形成しなければならない。

 「政策」は、全体を「『市民・市場・地方』の三つの視点に根ざした新しい政策」と概括し、参院選での与野党逆転をめざすためのものと位置づけられている。
 ここでいう「七つの改革」とは、分権、公共事業、社会保障、雇用環境、学校、財政構造、IT(情報技術)革命であり、「二十一の重点政策」としては金融システム改革、税制改革、行政改革などがあげられている。

「社会保障は国民負担で」

 まず、「財政構造改革」を掲げる民主党は、社会保障や行政サービスなどでの、徹底した受益者負担の政策を打ち出している。
 社会保障政策については、「高齢者にも保険料負担と利用時の定率一割負担を求める」など、高齢者と弱者いじめの政策が際だっている。
 多くの高齢者を介護から締め出し、多大な経済負担を強いている介護保険制度については、「公共事業に比べて約二倍の経済・雇用効果が期待できる」などと、高齢者や家族の苦難をよそに、カネもうけの視点からしか評価できないありさまである。
 年金制度についても、「基礎年金の全額税方式化」「公的年金課税の検討」など、さらなる国民負担増を打ち出している。医療分野では、国立病院を「原則民営化」するという。
 行政改革では「行政の効率化、民営化」「公務員の人事制度改革」を掲げている。ここでは「人材の流動化」を主張するなど、先日政府の行政改革推進本部が発表した「公務員制度改革」と、軌を一にするものである。
 また、市町村合併と道州制導入をうたっており、財界の求める「小さな政府」論と同じである。
 これらの行き着く先は、これまで以上の国民負担増であり、行政サービスの低下である。

「構造改革」で国民に犠牲強要

 産業・雇用政策はどうか。
 民主党は、「構造改革の推進で雇用が創出される」などとデタラメを言っている。
 確かに、いくらかの新産業は創出されるだろうが、それよりもはるかに多い中小零細業者(大企業すらも)が「負け組」として「市場から退場」するのが構造改革の正体であることは、財界の発言などで明らかである。そうなれば、はるかに多数の労働者が路頭に迷うことになる。
 民主党が主張するのは、決して現在の労働者の職を守り、財界による首切りと闘うことではない。逆に、大リストラを容認・推進した上で、「雇用の流動化に対応」「ワークシェアリング」というに過ぎないのである。これでは、資本のリストラ攻撃と闘えるはずがない。民主党は、およそ労働者が期待できる政党ではない。
 農業では、農民が「減反に苦んでいる」などと言いながら、食料自給率向上と農業振興については、まったく具体策がない。まして、緊急の課題となっている緊急輸入制限(セーフガード)発動については、抽象的にふれているに過ぎない。彼らが問題にするのは、「土地改良事業のムダ」ばかりで、農業政策は皆無に近い。
 中小企業政策では、真っ先にあげるのが「ニュービジネス・ベンチャー支援」である。多くが倒産・廃業の危機や経営難にある中小零細業者のことなど、まるで眼中にないかのようである。その証拠に、返す刀で外形標準課税導入を求めている。すでにほとんどが赤字である中小零細業者から、さらに税をむしり取ろうというのだ。
 ところで、民主党は昨年末、繊維産業についてセーフガード発動を政府に申し入れている。だが、一方で「経済構造改革」と「規制緩和の徹底」をいいながら、国内産業を保護できるはずがないではないか。民主党の「国内繊維保護」要求は、選挙目当てのアリバイづくりに過ぎない。

「政策で自民と差がない」と公言


 労働者や中小零細業者に弱肉強食の冷酷な政治を押しつけようとする民主党は、一方で「不良債権の最終処理」を口実に、「金融機関には思い切った金額の資本注入」というように、銀行にはさらなる血税投入を行おうとしている。七十兆円の血税をつぎ込んだ現在の「金融再生」政策は、民主党が先べんをつけたことを想起すれば、これもうなずけるではないか。
 このような政策は、国民の反発をかうことは避けられない。当然にも、露骨な血税投入に党の財務金融部門会議で異論が出された。結局、民主党は雇用や産業政策などとパックにすることで、銀行への税金投入の色合いを薄め、国民の目をごまかそうとしている。これにダマされてはならない。
 以上のように、民主党は自民党以上に弱肉強食の経済政策を推進する党である。
 これは、彼ら自身の発言にも明らかである。鳩山代表は「自民党と政策的にそう差があるわけではない。改革を断行する覚悟と勇気があるかどうかの違いだ」などと言っている。まさに、自民党以上に財界に奉仕し、国民各層に犠牲を押しつける党ですと、自らを誇っているのだ。
 民主党は大銀行など財界の手先であって、労働者や農民、中小業者にとって当てにできる政党ではない。国民各層が選挙に期待せず、自らの力で要求を実現するため行動を起こすことこそが、重要である。