20010330

「公務員制度改革の大枠」についての談話

「協議」への幻想を捨て、断固たる闘争を準備しよう

日本労働党中央委員会労働運動対策部長 中村 寛三


一、
 三月二十七日、政府の行政改革推進事務局は「公務員制度改革の大枠」(以下、大枠と略)を発表した。
 この「大枠」は、昨年十二月閣議決定された「行政改革大綱」の最重要課題として位置づけられ、橋本行政改革担当大臣の政治的イニシアチブの下にきわめて短期間にまとめられた。
 一月六日発足した一府十二省庁の「新たな器」に「魂を入れる」と意義づけされ、「公務員自身の意識・行動様式を変える」ことを最大の狙いとし、「これが変わらない限り、すべての改革は画餅に帰す」と、政府の並々ならぬ「決意」が込められている。
 「局所的な対策」ではなく、「新しい時代に合致したあるべき姿を白紙から構想する」としてまとめられた改革の基本方向は、要するに、金融グローバル化時代に勝ち残るための、「国際競争力のある政策立案」「簡素・効率的な業務執行」を実現できる行政システムへの大改編である。
 具体的には、(1)「信賞必罰の人事制度の確立」として、民間の競争原理を取り入れた能力や業績に応じた給与体系、人事評価システムに切り替える、(2)「国家的な見地からの戦略的な政策立案機能の向上」として、各省だけでなく民間企業からも選抜された「国家戦略スタッフ群」や各省大臣を直接補佐するスタッフの設置、(3)それらをやりぬくために「責任ある人事体制の確立」として、これまで人事院が所管してきた人事行政の枠組みや労働基本権制約の代償機能を解体し、各省大臣が総人件費の枠内で自由に人事管理を行う体制に移行する…などが打ち出されている。
 そしてこれらを実現するために国家公務員法の抜本的改正の必要さに言及しているだけでなく、それに準じて地方公務員制度の見直しにも着手することを言明している。
 政府は六月までに、この「大枠」に沿って公務員制度改革の基本設計をとりまとめ、早急に法改正作業に取りかかるとしているが、それが具体化されるなら、まさに戦後確立された公務員制度の全面的改編となるに違いない。それは、国家公務員のみならず地方公務員を含む公務員労働者にとって、事実上の「身分保障の廃止」を意味し、民間並みのリストラ自由がまかり通る、労働条件大改悪の暴挙である。
 われわれはこの時期を画する政府の攻撃に、労働者が団結して反撃し、これを阻止するために全力をあげて闘うよう訴える。

二、
 今回提起された公務員制度改革は、ごくひと握りの多国籍化した大企業が金融グローバル化時代の大競争に勝ち残るために要求しているものであり、「構造改革」という名の労働者階級と勤労諸階層に対する一大攻撃の一環にほかならない。
 わが国多国籍大企業は、世界的競争に勝ち残るために、まずリストラと称して中小下請けを倒産に追い込み、民間労働者を首切り、雇用流動化、成果主義賃金の導入などで犠牲を押しつけてきた。
 それでも足りずと、「高コスト構造の是正」と称して物流、エネルギー、電気通信、旅客運送、流通など徹底した規制緩和による犠牲を押しつけ、コスト削減を図ってきた。
 そしていよいよ「効率的な安上がりの政府」、公務員労働者の人件費コスト削減の攻撃に踏み込み、「総仕上げ」しようというわけである。年金、医療など社会保障の切り捨ても手がけられている。
 今回の公務員制度改革と闘うに当たって、われわれはこれら一連の労働者、勤労諸階層攻撃が同根であり、多国籍大企業、支配層が競争に勝ち残るために仕掛けていることをしっかり見抜いておかねばならない。
 支配層は時間差を設けて労働者を官と民に分断したり、青年や女性層を中高年にけしかけたりして、労働者の分断を誘いながら狡猾(こうかつ)に攻撃しているのだ。
 八〇年代の国労攻撃の際、政府、支配層がとった官民分断策動の苦い経験を思い起こすべきで、敵の奸計(かんけい)に乗せられてはならず、労働者の階級的団結を創りあげ、これを強化することを重視しなければならない。

三、
 
情勢は急である。政府は六月までに基本設計をとりまとめ、秋以降具体的な法文化作業に入るとしている。
 公務員労働者にとって死活をかけた闘いが求められている。連合官公部門は「労働基本権確立・公務員制度改革対策本部」を設置し、「組織の総力を挙げて闘う」ことを決定した。
 わが党は、その闘いを断固として支持する。
 あわせて闘争の発展のために、懸念も率直に述べておきたい。
 なぜなら、こんにちの段階でなお「労働組合が決定過程に参加するシステムの確立」を要求しており、政府との「協議」によって問題の解決が図れるかに見えるからである。
 今回の公務員制度改革を金融グローバル化の時代における支配層の攻撃と見るなら、参加路線が無力であることはすでに日産リストラなど大企業労組のぶざまな対応から明らかである。実際、この間の公務員連絡会議の要求も「大枠」策定過程では一顧だにされなかったではないか。
 「労働基本権確立」を掲げるのは当然だが、もし、スト権を「協議」によってもらえるなどと思うなら、まったくの幻想である。及び腰でなく、スト権は断固たる闘いで奪還しなければならない。闘う以外に道は開けないことを銘記し、直ちに闘う体制を構築すべきである。
 政府、支配層は、迫られて公務員攻撃に移っており、本質的に強い立場にはない。一月のミツミユニオン三千人労働者の二十四時間ストライキに示されているように、現場の労働者には闘う力がある。それを信じ、高まる怒りとエネルギーに直接依拠して闘えば、攻撃をはねかえし、勝利することは可能である。要は、指導部しだいである。
 幻想を捨て、闘争を準備しよう!