20010325・社説

世界経済は「暴風雨圏」に

敵にきわめて不利、森政権と真っ向から闘い前進しよう


 世界同時株安など、世界経済は新たな「暴風雨圏」に突入している。
 森政権など支配層にとっては、いまや最悪の環境となっている。併せて、国民の政治不信は根深く、かれらの政治支配もよりいっそう薄氷を踏む思いを強いられている。
 この情勢をどのように見ておくか、これは闘うものにとってきわめて重要である。中には「大変だ」と、状況に流されるものもいる。あるいは、あわてて階級的本性を表し、支配層の危機を救済しようとするものもいる。
 敵にはきわめて不利で、闘うものには有利な局面である。当面の国民生活防衛の問題、国の進路の課題、あるいは政治を根本的に転換させる闘いでも、大衆的に真っ向から闘えば、大きな前進がかち取れるときである。そこを確信し、大いに前進しなければならない。

米国バブルがついに破たん
日本の危機もさらに深刻に
 とっくに国民に見捨てられ、「死に体」といわれる森政権だが、今なお居座りを続けている。森政権にせよ、その次を狙う亜流連立政権にせよ、かれらにとって政権を樹立、維持する経済環境は危機的状況にある。支配層の弱さの根本条件の一つは、ここにある。
 まず、ここ一、二年、懸念されていた米国バブルの破たんが、ついに始まった。米連邦制度準備会(FRB)の今年三回の利下げもむなしく、米国の株価はこの三月に一万ドルを割り込み、米国店頭株式市場(ナスダック)の総合指数も二○○○を割り、最高時の六〇%以上も下落した。欧州、アジアも連鎖的に株安となり、まさに米国発の世界同時株暴落となった。
 米国の昨年十〜十二月期の実質国内総生産(GDP)も、年率一・一%と九五年以来の低成長を記録。さらに経済の減速は製造業から非製造業へも急速に波及し、今後はゼロからマイナス成長の可能性もささやかれている。それだけではない。米銀行の不良債権の急増、個人消費の減退、数十万に及ぶ人員削減もすでに始まっている。
 「グローバル化」などと世界各地から人民の血を吸い上げ、収奪してきた米国の金融資本や大企業。最大のGDPを占め、世界の景気をけん引してきたといわれる米国経済の破たんは世界経済に甚大な影響を及ぼす。
 特に、経済・金融上も米国に従属させられている日本経済にとっては深刻である。株価は米株式暴落を受けて、一時一万二〇〇〇円を割り込んだ。長びく不況で膨大な不良債権を抱える金融機関は、株価低迷で含み損が膨張している。ある試算によれば、大銀行十五行の株含み損は、株価一万三〇〇〇円で約三兆五千億円、株価一万二五〇〇円で約五兆円にものぼるという。ばく大な不良債権、債務を抱え、日本の金融危機を再発させるかどうか、金融機関にとって株価の動向は深刻な問題になっている。
 実体経済もきわめて深刻である。対米輸出に依存して業績回復を続けてきた大企業は、米国景気減速に大きな影響を受け、一月の輸出は五・九%減(数量、前月比)となり、貿易収支は四年ぶりの入超となった。一月の鉱工業生産指数は、前月比四・二%マイナスと過去最大の下げ幅を記録。また二○○一年度設備投資計画は四・八%減と、二年ぶりのマイナス見込みである。企業の生産活動が急速に悪化していることがわかる。
 支配層は、この九年で約百二十兆円以上の景気対策を打ったが、景気は浮揚しなかった。金融機関救済策にしても、七十兆円の公的資金投入、日銀の二度の利下げ、「金融量的緩和」措置をとったが、その効果は不明である。実際、株価一万二〇〇〇円割れから十日たたずして東京生命が破たんし、金融危機は現実のものとなりつつある。さらに、金融危機は、時価会計が全面導入される四月以後いっそう深刻化するといわれている。
 こういうもとで、肝心の国民生活は犠牲が集中されるばかりで、その苦しさは増大する一方である。失業率・数は引き続き最悪で、倒産も今年は最高水準の二万件を超すといわれている。可処分所得、消費支出、貯蓄残高などもマイナスばかりである。
 こんにちの経済危機は、対米従属的な経済・金融関係、そして大銀行・大企業本位の政治の結果である。先の日米首脳会談で、森首相は日本における銀行の不良債権処理、金融緩和、構造改革などについてブッシュ大統領に細かく公約させられた。その結果、この十数年来形成されてきた、いわゆる「ドル環流システム」、つまり勤労国民がかせいだカネが国内に回らず、せっせと米国に流れていく仕組みを引き続き、維持することを約束したのである。もちろん、大銀行などはばく大な税金で保護するが、国民向けには決してカネを回さない。こうした仕組み、政治こそが根本的に転換されなければ、危機打開の方向はない。
 わが国が深い危機にはまりこみ、支配層には根本的打開の方向が決して見いだせない。この支配層の決定的弱みをはっきり認識しておくことは、この時期重要である。

高まる政治不信、闘えば前進できる
 いよいよ悪化する国民生活からくる不満に加え、KSDや機密費事件、米原潜事故、沖縄の米軍犯罪など、国民の森政権不信、政治不信は頂点に達している。
 ついに森首相の首を切らざるを得なくなったものの、森首相は今なお政権の座に居座っている。自民党などはこれまた、即座に首を切れない。株価が一万二〇〇〇円割れとなるや、「森内閣は直ちに総辞職せよ。危機克服へ強力政権を」(読売)と焦るが、自民党・与党は収拾がつかず漂流するありさまで、それがまた政治不信を呼んでいる。昨年の小渕首相急死、森後継決定の「密室劇」とは、まるで様変わりである。国民の自民党離れ(批判)は、われわれが再三指摘してきたように、まさに歴史的、構造的なものといえる。
 もちろん、森首相と一定の距離を置くかのようにペテン的に見せかけ、実際は引き続き連立政権を支える公明党などにも国民の不信は強まっている。
 野党はどうか。民主党の峰崎・財務金融ネクスト大臣は「自公保政権には構造改革も不良債権の抜本処理も全く期待できない。政権交代こそ最大の経済対策」と述べている。「自公保でできなかったことを民主党はやる」と米国や財界に売り込んでいるのである。株暴落にあわてた菅幹事長に至っては、「与野党を超えた問題として暫定政権も考えなければ」と「救国大連立政権」を口走るありさまである。三年前、民主党代表(当時)として金融国会で窮地に立つ小渕政権を救った状況を、想起させる。激動の時期には、普段ベールで覆っている政党の階級的本質も隠しようがない。
 労働者階級は、装いを変えて財界のために次の連立政権を狙う民主党を決して信用してはならず、本質を見抜いておかなければならない。
 森首相が対米公約したように、支配層なりの危機打開策は、金融緩和や不良債権処理、規制緩和、財政再建などいわゆる構造改革である。これらの断行は、国民にいっそう血を流すことを強要する。企業のリストラと倒産によって、失業者増加に拍車がかかる。年金生活者などの預貯金金利は実質ゼロとなる。財政再建は社会保障切り捨てと地方自治体負担が押し付けられる。支配層が、いくらかの社会保障ー「セーフティーネット(安全網)構築」を必ず付言しているのは、今後の国民犠牲の大きさと反抗を想定しているからである。
 こうした攻撃に対し断固闘って、生活を防衛しなければならない。同時に、この危機の根本的打開に向け力強い一歩を踏み出そう。対米従属を脱し、独立・自主、国民本位の政治へ転換させるために断固闘うことが必要である。有明漁民の大衆的闘いはまだ継続中とはいえ、選挙を待つことなく直ちに政府を動かした。米原潜事故に対する国民の怒りや沖縄県民の米軍への怒りと行動は、日米同盟を揺さぶりつつある。
 闘うことを余儀なくされている広範な国民にとっては、支配層の困難は逆に有利な面である。こうした時、支配層と真っ向から闘えば大きな前進がかちとれるに違いない。