20010315

民主党・参院選政策を批判する(上)安保・外交問題

自民と変わらぬ日米基軸路線


 悪政を重ねた森政権は事実上の「死に体」となり、政局は「ポスト森」へと動いている。こうした中、野党は連合政権の幻想をあおり、七月に控えた参院選での与野党逆転と総選挙、政権交代で事態が変わるかのように宣伝している。だが、それはまったくのペテンである。とくに野党第一党の民主党の政治方向では、わが国の行き詰まりは打開できない。国民各層は民主党に期待せず、自らの行動を基礎に、新たな政治勢力を形成し要求を実現するしか道はない。民主党が一月十二日に発表した「第十九回参議院議員通常選挙政策(草案)」(以下、「草案」)を批判する。

 「草案」の外交・安全保障政策では、その一番目に、「日米安全保障の再構築」を掲げている。その中身は、「日米地位協定の運用改善・見直し」「在日米軍基地の整理・縮小」などをあげている。
 だがこれでは、現在の森政権と何ら変わりがない。稲嶺沖縄県知事はこの二月、河野外相に日米地位協定の「改正」を求めたが、外相は「改正」でなく「運用改善で」と答えた。この河野外相と民主党は、どう違うのか。
 民主党は日米関係を、わが国が「自立的かつ主体的」方向で見直そうとしているかのようだが、そうではない。実際はその逆である。
 「草案」は、「日米安全保障体制を基軸」と断言しており、民主党の日米基軸路線にはいささかの変更もない。つまり、基本的に対米追随を続けるということである。「日米関係を創造」などは、単なる言葉の遊びにすぎない。

自民に先んじ有事法制を推進

 とりわけ注目しなければならないのは、五項目めの「緊急事態基本法及び関連法の整備」という公約である。
 「緊急事態法」とは、有事以前においても国民の諸権利を制限し、有事体制に動員しようというものである。これは、新ガイドラインに基づき有事法制整備を迫る米国の意をも踏み越えている。
 「草案」では「緊急事態で国民の生命・財産・権利をしっかり守るルールを確立する」ためだなどとごまかしているが、その生命や財産・権利を制限する法律を「守るため」と言いくるめようというのであるから、恥知らずにも程がある。この法案は自民党ですら提案していないもので、これだけでも、彼らの自民党以上の対米追随ぶりが明白となるではないか。
 沖縄問題については二項目めに掲げ、「日米特別行動委員会(SACO)合意の再検討」や、経済振興策として「沖縄経済新法の制定」を掲げている。
 民主党は沖縄問題の解決をアピールしたいようだが、米軍基地がある限り沖縄県民の苦難が解決しないことは、最近の米兵によるわいせつ事件や放火事件、果ては「えひめ丸」事件を想起すれば明りょうである。安保・基地がある限り、沖縄問題の根本的解決はない。民主党は自民党となんら変わらず、空約束と経済支援のアメで、今後も沖縄県民に苦難を背負わせ続けようというのだ。
 現に、前原誠二「ネクストキャビネット(次の内閣)」社会資本整備担当大臣は、「百年後も(日米の)同盟関係は存続しているべきだ」などと公言している。今後百年にもわたって、わが国の進路を米国にゆだねようというのである。

大国化でアジアに敵対を公言

 民主党の公約は、対米追随であると同時に大国主義まる出しである。
 三項目めの「国連平和維持活動(PKO)参加五原則の見直しや国連平和維持部隊(PKF)の本体業務の凍結解除」と、九項目めで触れている「国連安全保障理事会入り」が、その代表例である。
 これらを合理化する口実で「国際平和の構築に積極的に貢献するため」などと述べられているが、中身は対米追随の政治軍事大国化である。先に紹介した前原は、「中国には米軍の在日米軍基地からの出撃などに応じる可能性があることをカードに」して台湾問題に干渉すべきだと、中国の内政問題に介入することをあけすけに述べている。彼らのいう「平和」の意味とは、アジアに対する敵対にほかならない。
 こうした有事体制づくり・大国化には、当然にも憲法上の「制約」がつきまとう。
 欺まん的にも、「草案」では憲法問題にはいっさいふれていない。だが、鳩山代表や前原らの度重なる発言によっても明白でように、民主党中枢は実際には改憲派である。
 民主党は、自民党に劣らずわが国を米戦略に従わせ、軍事大国に導く危険な方向を提示している。こういう連中を、決して信用してはならない。
 以上、民主党の「日米安全保障の再構築」策は、昨年アーミテージ、ナイら超党派の元米国防次官補が提言した、日米関係を日英関係並みの同盟関係に飛躍させるという要求にそったものであることがわかるというものだ。
 これでは、いくら「アジア地域の信頼と安定を高める」「核軍縮・不拡散にリーダーシップを発揮」などと言ってみたところで、アジアとの共生などできようはずはない。