20010221

「臨時特例企業税」に反対する陳情

日本労働党神奈川県委員会


1、臨時特例企業税については、県下65経済団体をはじめ県民多くが反対している。県民の十分な理解なしに増税を拙速に導入すべきではない。

 1月19日、県下経済団体は、連名で知事と県議会宛に、この税制に反対であることを申し入れ、また、先の2月9日、決起大会を開いて同様の申し入れを行った。
 もとより県財政の困難は承知するが、問題が深刻なだけに、十分な県民の理解と了解なしには解決は困難である。先の自動車税問題のさいにも、そうした批判が多かった。そして県は、非常に不十分とはいえ県内各所で県民集会を開いて県民の声を聞いた。結果として、知事は12月県議会への条例化提案を見送った。
 もっと県民の声を聞くべきである。また、県政はまず、この危機の中で苦しむ県民の生活、県内企業の経営にこそ、心すべきである。
 県民各方面の声を県政に代弁する役割をもつ県議会が、拙速を避け、県民の声を広く聞くよう期待する。

2、赤字だから「とりやすい所からとる」という姿勢は安易である。県民の税負担に直結する財政問題は、神奈川県の将来展望と結びつけて、十分な県民の議論と了解の上に、解決すべきである。そうでなくては解決は難しい。

 財政再建のためには、県財政を収支にわたって見直す、再検討が必要である。そのためにも、まず、もっと徹底して今日に至る財政破たんの原因を究明すべきである。それなしに財政再建は始まらない。
 周知のように、とくに県債の償還財源である「公債費」の増大が県財政を大きく圧迫している。不況対策ということで、90年代に県債を大量に発行し、投資的事業を拡大したツケである。
 県は、自動車税の時も、今回も、「応益負担」という。それならば、県財政圧迫の根源となっている90年代のその事業は、景気対策として、あるいは社会資本整備として、どれだけ県民に益をもたらしたか、プラスとなっているか。具体的に検証、明らかにすべきである。
 それというのも、今年度も1600億円近い県債が発行され、累積残高を増しつづけ、それを財源に投資的経費をバブル前の1.8倍(85年比。県税収入は1.3倍にしかなっていない)もつぎ込んでいるからである。
 だから、いつになったら県財政が再建に向かうか、県当局の誰にもわからない。「県債発行額が800億円程度になったら県債残高は、ようやく減少に向かう。だが、いつになったら減少に向かうか、できるだけ早くと申し上げたいが、何年度から減るか、にわかには申し上げられない。」直接の責任者である県財政課長はこう発言しているありさまである(11月10日、厚木市での県民集会)。
 県当局の検証と原因究明、責任の明確化がまったく不十分といわねばならない。経済危機のなかで、苦しい死活を賭けた対応を迫られている県民感情と生活実態から見るとあまりに問題が多い。

3、地方財政問題は、もっと根本的にしか解決不可能である。限界を超したと言われる政府借金をどうするか、それから地方分権と税源再配分の問題もある。また、税の問題は、誰がどの程度負担するか、である。

 まず、国地方あわせて666兆円(2001年度末見通し)となった政府累積借金をどう解決していくか、全国民的な議論と打開方向の確定なしに、一県では根本的解決は不可能である。いわば議論の前提に欠けるのである。地方財政赤字は県にも大きな責任があるが、同時に国に過半の責任があることも事実だからである。
 県は、国との間での税財源の再配分と地方自治体の課税自主権確立のために、県民に呼びかけ、市町村とも一体となって、また全国の自治体とともにもっと努力すべきである。
 同時に、地域経済全体の発展のために、県財政のためにも、県内に展開する一部の巨大企業にもっと社会的責任を果たさせる必要がある。巨大企業に負担させて、地域経済とその担い手である中小企業の発展のために使う地方税制が必要である。横浜商工会議所の對馬会頭が、地方税でも「所得再配分の理念が正しい」、一部大企業に社会的責任を果たさせて地域経済振興を進めるべきだと発言していたが、賛成である。
 今回の臨時特例企業税は、こうした意味では不徹底で、中小企業にあまりに負担が重い。
 「資本金5億円以上は大企業」とひと括りにすることはできない。京浜臨海部などに展開する、資本金額が2000億円も4000億円もの世界企業と化した巨大企業と地域経済の中心としての中堅企業とを一緒にしてはならない。
 しかも、これら電機や鉄などの巨大企業は、政府・地方自治体から、企業用地の埋め立てや港湾設備等々インフラ整備をはじめ多大な支援を受けて発展してきた。
 こうして巨大化し、担税力もある企業にこそ、もっと税を負担させるべきである。ある新聞も指摘していたが、そうした県内企業の代表格ともいえる企業が、500億円近い営業利益を上げながら前年度の欠損金を理由に法人事業税を払わない。こうしたことに県民感情として納得がいかないのは当然である。こうしたところには課税すべきである。

4、今回県が提案している臨時特例企業税は、地域経済への悪影響が避けられない。

 欠損金を抱えた法人が単年度黒字となったからといっても、担税力があるとは限らない。資本の食いつぶしや借入れによって納税することを余儀なくされ、中長期的な視点に立って経営を続けていかなければならない法人の体質を一層弱めることになりかねない。とくにこれからの神奈川経済を支えることが期待される新興企業にとって過重な負担となることが避けられない。
 また、課税対象を資本金5億円以上の法人に限定するからといって、問題は対象企業だけにはとどまらない。「取引関係にある中小に必ずはね返る」(横浜商工会議所斎藤専務理事)のは間違いない。
 企業がいちだんのリストラを進めことにもつながり、雇用削減となって現れる危険性も強い。
 さらに今回課税対象法人となっていない中小零細企業者も、「課税対象の拡大」の危険を感じている。
 地域経済全体に悪影響が避けられず、長期化する不況にあえぐ地域中小企業に大きな負担となることは明白である。

以上

神奈川県議会議長 榎並 寛 殿

2001年2月21日
                       日本労働党神奈川県委員会
                           委員長 山本正治