20010201

機密費流用事件について

日本労働党中央委員会副議長 秋山 秀男


一、
 外務省の松尾克俊元室長による機密費流用事件は、国民を憤激に駆り立てており、自民党主導の森政権の行く末を左右しかねない問題に発展している。
 外務省も、また官房機密費を管理する首相官邸も、事件の真相究明に真剣に取り組み、国民の前に真相を明らかにし、そして責任を具体的にとるべきである。

一、
 今回の事件の結果、機密費という仕組みがわが国の国家権力に内蔵されていることが暴露され、その一端が国民の前に浮かび上がってきた。
 2000年度予算で機密費の総額はなんと76億8000万円であり、その内外務省の外交機密費(55億7000万円)と首相官邸の内閣官房機密費(16億2000万円)が合計72億円と、全体の9割を占めている。
 この機密費がいったい何に使われているのか?それは、「行政の円滑な運営に支障をきたす」という口実で、国民の前に、その使途が明らかにされたことはない。
 しかし、「国会議員が外遊する際に、内閣官房の機密費の世話になってきたのは永田町の常識だ。」という。
 更に重大なのは、法案を衆参両院でスムーズに通過させるために、機密費が野党対策として使われてきたことである。
 何のためか? それはほんの一握りの少数派であるわが国支配層が、政治の実権を維持し、彼らの利益を守るためである。
 売国的で、反国民的な政治が続く限り、機密費は、たとえ名称が変わったとしても、なくなりはしない。

一、
 外務省は1月25日に調査結果報告書を発表し、松尾克俊元室長が官房機密費5400万円を横領したとして、元室長を懲戒免職にし、また業務上横領で警視庁に告発した。同時に、河野外相、川島外務次官など外務省の関係者を退職した幹部を含めて監督責任を問うという形で処分した。
 しかし、外務省は、なぜ六年間にわたって外務省の一職員が巨額の資金を取りしきることができたのか、なぜ官房機密費を流用することができ、またその管理責任を負う首相官邸が長い間これを問題にしてこなかったのか、こうした疑惑に応えていない。
 そもそも、同調査結果報告書は、事件の真相解明からほど遠く、また松尾克俊元室長の「個人の犯罪」として済ましてしまおうという態度であり、国民の怒りに火を注ぐものであった。
 労働者・国民各層は、外務省や森政権が今回の機密費流用事件を「個人の犯罪」として処理し、真相を闇に葬ることをけして許しはしない。
 他方、野党は国民が望むような真相究明を徹底的にやれるのであろうか?
 松尾某が外務省要人外国訪問支援室長の任務についたのは93年10月から99年8月までの約6年間である。自民党単独政権崩壊後の93年7月に細川政権が誕生したが、以降羽田政権、そして村山政権、橋本政権、小渕政権、今日の森政権と続いたが、松尾某は大変な政治の激動期にその任についていたことになる。
 つまり、民主党、自由党、社会民主党と今の野党三党はこの期間に連立政権に参加したことのある政党である。民主党の鳩山は細川政権のときに官房副長官であったし、また同じく民主党の熊谷は羽田政権のときに官房長官をやった経験がある。
 彼ら民主党、自由党、そして社民党も、今回の松尾某の機密費流用疑惑にたいして、また長い間機密費の存在を事実上国民の前から隠してきたことに対して、重大な政治責任があることは明らかだ。
 従って、これら野党が真相究明をやることは当然であるが、それが口先だけに終わるならば、大多数の国民に、自民党などと「同じ穴の狢(むじな)」として見られるだけである。

一、
 野党は1月24日の四党政策責任者会談で、機密費制度の抜本改革と金額の大幅削減で一致したようだ。この1月31日から始まる通常国会で予算の組換えを求めた上で、機密費の「透明化」を要求する構えである。
 われわれ労働党は最終的には外交機密費や官房機密費という制度は廃止すべきと考える。しかし、これを実現するためには、政治のシフトを一握りの多国籍化した大企業・銀行などから国民大多数の側に移すことが必要不可欠であろう。
 われわれは、取り急ぎ、外務省や首相官邸の機密費が歴史的にどのように、また何のために使われてきたのか、このことを徹底して国民に公開すべきであると考える。機密費は国民の血税なのだから、またわが国が民主主義国家というのであるなら当然そうすべきであろう。