日経連は一月十二日、臨時総会を開催し、経営側の春闘指針である「労働問題研究委員会報告」を承認した。これに関して、中村寛三・党中央委員会労働運動対策部長は、十六日に以下のような談話を発表した。
1.
一月十二日、日経連は臨時総会を開き、「平成十三年版労働問題研究委員会報告」を承認、資本・経営側の二〇〇一春闘に臨む指針として発表した。
今回の報告の最大の特徴は、「横並び賃上げ」春闘は昨年の春闘ですでに解体したとして、今後は「総合的な働き方の諸制度を協議する場」へ転換すべきだと春闘変質を公然と唱えている点にある。奥田日経連会長は「賃金など労働条件一般を横並びで決める時代は、二十世紀で終わった。各労使が、働く人と企業経営にかかわる問題を幅広く議論する場にしたい」と強調した。
これは、わが国財界が連合を中心とする労働組合を完全にとり込んだと判断し、グローバル大競争に勝ち残るために、より安く、より効率的に労働者をこき使う新たな雇用・労務管理の青写真を示し、労働組合にさらなる「協力」を求めようとするものである。
連合指導部はナメられたものだが、この報告には、限りなく労働者に犠牲と譲歩を迫るわが国財界・独占企業家どものどん欲さ、厚かましさ、ずるがしこさが表れている。
2.
日経連が、新たな雇用・労務管理のあり方として提言しているのは、(一)雇用課題として、高齢者、女性、外国人など「多様な労働力の活用」、派遣、パート、アルバイト、契約社員など「多様な雇用形態」、職種・勤務地の限定などの「多様な就労形態」を組み合わせる雇用ポートフォリオ、(二)賃金・人事制度としては、「人件費コスト負担の適正化と従業員個々人の生産性に見合った処遇=年功でなく成果主義賃金・人事制度」の徹底である。さらには、行財政改革と規制緩和、産学の協力・連携などの教育改革、消費税増税や医療・年金・介護などあらゆる国民負担増のプログラムも提言している。
報告は、これらの提言を「人間の顔をした市場経済」とか、「多様な選択肢をもった経済社会」などという耳ざわりのよい言葉で飾り立てている。だが、その実質は資本・経営側にとって「経営効率の向上と雇用コストの軽減」であり、「高コスト構造の是正、社会的コストの軽減」である。裏返せば、労働者への全面的な犠牲押しつけと負担増である。それによってわが国独占企業は、国際競争力を強め、競争に打ち勝って最大限の企業利益を追求しようというわけである。
労働者の雇用・生活危機突破の春闘を、これらの問題を「労使が幅広く議論する場にしよう」などという提案は、あまりにも労働組合をバカにする態度と言わなければならない。
3.
他方で報告は、賃上げについては「雇用の安定を最重視し、……総額人件費管理を徹底すべきである」との基本姿勢である。「国際競争力を維持する観点からは、これ以上の賃金(総額人件費)水準の引き上げは困難」と、九年連続ベアゼロを打ち出している。
また、企業の社会保険料負担など法定福利費は増大するので、「法定外の福利厚生費の圧縮」も追求せよ、としている。さらに、もしリストラによって業績が回復した場合には、成果は賃上げではなく、「賞与・一時金で還元せよ」と指示している。徹頭徹尾の賃金抑制である。
その上で、成果主義賃金・人事制度が導入される中で個別的労使関係が重要性を増しているとして、トラブルを未然に防止する趣旨からも、「労使協議制の活用」を説いている。経営側にとって、組合が話し合いに応じてくれる「労使協議制」ほど、都合のよいものはない。
4.
労問研報告のこうしたゴーマンな姿勢に対して、連合は闘う姿勢を打ち出していない。部分的な注文をつけるのみで、日経連の「社会的合意形成」の呼びかけに対して、「積極的に対処していきたい」といち早く飛びつく始末。「企業・産業・地域」を含めたさまざまな領域における「労使協議の徹底」などと積極的に呼応している。
これでは、日経連の思うつぼである。
そもそも連合が春闘九連敗などこんにちのていたらくに陥った主たる原因は、「労使協議」依存の参加路線にある。今回の労問研報告に現れた財界の姿勢が示しているように、いまや参加路線の破たんは明白である。
財界・独占企業のカサにかかった攻撃を打ち破り、雇用を守り、賃上げを実現するためには、参加路線の転換が必要である。労働者が自らの階級的団結、ストライキや大衆行動の力に頼って要求を実現する道へ転換しなければならない。
労働者の雇用・生活危機、将来不安は高まっている。闘おうとすれば、エネルギーが職場や地域に広がっている。一月十五日、JAMのミツミユニオンの二千八百五十人の労働者は、鶴岡工場閉鎖・首切り撤回を求めて二十四時間ストライキを打ち抜いた。困難ではあるが、この道だけが活路を切り開くただ一つの道である。
闘おうとするものは二〇〇一年春闘を、参加路線をうち破ってストライキで要求を実現する労働運動再構築の第一歩としなければならない。
労働党は、労働者と労働組合のそうした闘いを断固支持し、二〇〇一春闘の勝利に向け、全力を尽くしたい。
以上