20001205 社説


広範な国民連合が総会開く

主張は鮮明、国の進路転換への力に期待高まる


 第二次大戦で米国の原爆の災禍に見舞われた長崎で、わが国の自主・平和・民主の進路を願い、「広範な国民連合」が第八回全国総会を開いた。
 総会は、熱心な議論を通じて、この一年間の全国における国民連合の前進を確認し、大きく変動する内外情勢に対応する積極的な活動方針を決定した。今回の総会が成功し、二十一世紀のわが国の政治変革へ向けて新たな一歩を踏みだしたことは、非常に大きな意義があるといえよう。
 周知のように、朝鮮半島などアジアをめぐる情勢は大きく動き、国際政治の攻防が激しく演じられている中で、わが国の進路がますます鋭く問われている。だが日朝国交正常化問題に示されるように、わが国外交は日米基軸で、アジアと共に進まず、米国の戦略に追従する危険な道を歩んでいる。
 また、勤労国民の生活と営業は引き続き深刻な苦境下に置かれている。ましてや、あれほど国民に唾棄(だき)されようとしている自公保連立の森政権は、内閣改造などで居座りを続けている。かといって、野党の民主党などは勤労国民の苦境とは無縁の党で、まるであてにならない。こういう政治状況に、国民の激しい政治不信といらだちは日毎に募るばかりである。
 こういう時、国民連合が「広範な国民各層を結集し、政治課題を担う組織」(国民連合憲章)として、各階層、各政治勢力の共同をいちだんと発展させ、わが国の進路の転換、政治の変革へ断固闘うならば、新世紀の政治を切り開く、頼りになる「よりどころ」となるに違いない。そういう役割が期待されている。
 われわれは、代表世話人はじめ全国でこの共同の事業を推進している各界の皆さんの努力に敬意を表する。併せて、われわれはその壮大な発展のために共に全力で汗を流すものである。

「日米安保からの離脱」など明確な方針を決定
 総会における議論では、憲法改悪問題、日朝問題、労働運動の評価と役割、教育・教科書問題、環境問題など、全国での多様な取り組みを反映して幅広いテーマについて意見が出された。中でも、比較的多く出されたのは、アジア情勢の評価、日米関係とわが国がとるべき進路をめぐっての議論であった。
 そして当面の方針として、「国民各層の力を結集する広い戦線の形成」「国民運動の課題=自主・平和・民主、アジアの共生を、国民の生活・営業・権利・環境を守る」を決めた。
 総会では、当面の方針の中で「日米安保はいらない、沖縄にも本土にも米軍基地はいらない、自主外交でアジアの共生を!」が基本方向として決定された。
 この方向決定はこの時期、きわめて重要である。米国では、近く選出されるであろう新大統領のアジア戦略と関連して、政府の国家情報会議報告やアーミテージ元国防次官補らの提言(本年十月)などの見解が相次いで出されている。これらによれば、米軍のアジア駐留の困難さ増大や米中関係の緊張などを見通し、現在の日米軍事同盟を米英同盟並みに引き上げ、集団自衛権行使などわが国が軍事大国として、双務的に米国の東アジア戦略に貢献せよと迫ろうとする論調である。米国がこのような情勢の見通しのもとでアジアで策動し、エスカレートした新たな対日軍事・外交要求を突きつけてきた時、わが国の進路は再び鋭く問われる。
 吉元政矩・元沖縄県副知事も、「アジアにおける冷戦崩壊と沖縄の米軍基地」と題する総会記念講演の中で、前述のような米国の意図に対して警戒するよう明確に訴えた。
 こういう時、わが国はどの道を選択するのか。わが国は、自国と周辺環境の平和と安全をめざして、戦争策動に反対し、平和で独立・自主の外交をつき進まなければならない。もちろん、それは国民大多数の願いでもある。米国に追従して、かれらの危険な戦争策動に組みするわけにはいかない。
 したがって、こういう情勢が迫り来る時、「日米安保、米軍基地はいらない、自主外交でアジアの共生を」の要求は、きわめて時宜(じぎ)にかなったものといえよう。
 わが国の自主・平和の進路を実現すべく、国民連合が決定された方向で、いよいよ壮大な国民的運動を発展させることが強く期待されている。

政治的共同はますます広がる
 総会にみられる特徴の一つは、政治の現状打開を望む各階層、政党政派が広範な政治的共同を熱烈に求めていることが、いま一度示されたことである。
 総会議案によれば、国民連合はこの一年間、沖縄との連帯、米軍基地撤去、日朝国交正常化即時実現、国民生活を守る課題などについて、どんな規模であれ全国で広い連携をつくり出しながら奮闘してきた。
 例えば、代表世話人有志による沖縄基地問題懇談会や神奈川での嘉手納基地包囲行動に連帯する厚木基地集会の取り組み、東京・神奈川・愛知などでの日朝国交正常化即時実現集会、大阪での中小業者支援の取り組み、長崎での商店街や業者組合との集いなどである。これらは活動の一端でしかない。
 こういう闘いや取り組みの中で、各階層や政党政派の間で相互信頼が生まれ、また共同することの重要な意義が確認されていると、報告された。その結果、各地の有力な労働組合幹部や政党、商工団体などとの信頼関係も広がり、強化されているという。
 総会には、地元長崎の市長(代理)、市議会議長のほか、社民党、民主党、平和労働センター、部落解放同盟、朝鮮総聯、商店街協同組合の代表が、来賓のあいさつを、また原爆被災者の活動家も特別報告を行った。
 また、社民党、新社会党、沖縄社会大衆党の各党首、民主党副代表、日教組、海員組合、全港湾、全国農業者農政運動組織協議会、日本書店組合連合会、部落解放同盟、朝鮮総聯などの各本部から祝電・メッセージが寄せられている。これらの事実は、国民連合が各階層、政党政派と日に日に連携を強めていることを象徴的に物語るものであろう。これは、わが国において壮大な戦線を形成していく有利な条件がますます広がりつつあるといえる。

この情勢下、いよいよ大きな期待担うとき
 二十世紀末まであとわずかとなったものの、わが国の国民生活、また国際環境は、自民党主導の政治によっていっこうに展望が見えない。自民党支配の危機は、先の内閣不信任案をめぐる「加藤政局」に示されるように、深刻である。自民党主導の政権に対する不信は、いっそう強まっている。
 他方、野党第一党の民主党は、勤労国民の側に立つどころか、安全保障・外交、憲法、構造改革などの問題で、自民党以上に国民生活を犠牲にし、またわが国を対米追従、軍事大国化の危険な道にひきずりこもうとしている。
 共産党は二十二回大会を開き、規約などを改定して「革命」や「社会主義」を形式上も投げ捨て、保守との連合政権入りをめざし、保守にすり寄る姿勢をまたもや露骨に宣言した。民主党にせよ、共産党にせよ、これらの野党は、国民生活の苦境やわが国の進路の打開にとって、まったくあてにならない。
 こういう政党状況と大衆運動、共同の戦線の現状の中で、鋭くわが国の進路が問われる新世紀に、国民連合の運動は大多数の国民の願いを反映した、より重要な政治的位置に立たされるに違いない。しかも、今回の総会に示されたように、大きく前進する条件は、ますます形成されつつある。
 新たな国の進路を切り開くべく、国民連合の役割に対する国民的期待は非常に大きいといわなければならない。


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