20001125


内閣不信任案をめぐる茶番劇
国民をぐろうするのはいい加減にせよ

自民党政治支配の危機はいっそう深まる

秋山秀男・日本労働党中央委員会副議長の談話


 十一月二十一日の内閣不信任案採決に至る自民党の内紛、野党の対応、その背景などについて、党中央委員会の秋山副議長は談話を発表した。



 自民党の加藤紘一元幹事長らは、自公保連立の森政権がわずか一〇数%の国民の支持しかえられていないことに危機感をもち、野党の力を利用して、森首相を退陣に追い込み、政権を握ろうとした。自民党主導の自公保連立政権に不満を持ち、あるいは嫌気がさしている多くの国民が、加藤たちが唱えた自民党政治の「改革」に一定の期待をもったのは当然である。しかし、加藤たちの「造反」は、最後の土壇場であっけなく終わった。国民はまたもやぐろうされたのだ。
 今回の自民党の内紛は、自民党が相当に力が衰え、内部の利害対立でバラバラになっており、もはやわが国の危機と国民的諸困難を解決する能力も意思もないことをあらためて国民の前で自己暴露した。
 今回の自民党の内紛は、九〇年代に入って以降のわが国支配層の政治支配の危機が今日ますます深刻化していることを明らかにしている。
 戦後三十八年間も長期に続いた自民党単独政権は、内外環境の激変を背景に、九三年ついに崩壊した。自民党は、九四年に自社さによる村山連立政権で復帰したが、しかしその政治支配は今日ますます不安定になっている。
 自民党支配の危機の深まりは、歴史的すう勢である。それは総選挙結果を見ても明白である。自民党の六〇年代から八〇年代までの絶対投票率は平均三四・二%だったが、九三年は二四・三%、九六年は一八・六%、本年六月総選挙はついに一六・八%と、有権者約六人に一人の支持しか得られていない状態までちょう落した。自民党は、公明党など中間政党に、また保守党など保守的な政治勢力に助けられて、かろうじてその政権を維持しているにすぎない。
 わが国支配層の政治支配は危機にひんしているのだ。加藤らの「造反」による自民党の内紛はこうした危機の深さを背景に初めて生まれたのである


 自民党主導の連立政権、あるいはわが国支配層の政治が完全に民心を失っているのは根拠のあることである。
 一握りの大銀行や大企業に、例えば七十兆円にもおよぶ金をつぎ込み、その犠牲はすべて勤労国民にしわ寄せされている。中小企業も倒産、廃業に追い込まれ、労働者もリストラで失業に追いやられ、失業率は戦後最高水準の四・七%の高い水準にはりつき、賃金も切り下げられている。
 また、国民生活の問題だけでなく、わが国の国の進路の問題、外交についても、国民の中には大きな批判がある。例えば、朝鮮民主主義人民共和国との国交の問題についても、まったく米国に追随してしか手が打てない。本来ならば、アジアでともに生きるものとして、あるいは過去の侵略と植民地支配のいきさつを考えるならば、日本政府として直ちに日朝国交正常化への方策を打ち出すのは当然であるが、どうすることもできないで多くの国民の失望を招いている。
 対中国外交についても同じだ。むしろ、一九九六年の日米安保共同宣言に沿って米国に追随し、発展しつつあるアジア、その中心である中国に対して米国の意に沿って戦略的に対峙(たいじ)しようとしている。また米軍基地の問題でも、国民の中に多くの不満がますます表れてきている。沖縄は当然のことだが、三沢、厚木、岩国、佐世保などでも、自治体の首長が米軍基地に対する不満をはっきりと表明している。わが国の対米追随の姿勢全般に対し、国民各層に広く批判がたまっている。
 こうした自民党主導の政治がだらだらと続く中で、わが国は「時代閉塞」ともいえる状況にあり、国民の不満といらだちはますます強まっている。


 自民党だけでなく、無力な野党への不満も募っている。
 無力な野党にわが国政治の展望を託すことができないことは今や明らかである。先般の調査でも、無党派層が五〇%を超え、既成の政党や政治に対する不信はますます高まっている。民主党に対しても同じである。
 民主党の鳩山代表は、総選挙の前から加藤元幹事長に、自民党から出て、いっしょになって新しい政権をとるように熱心に働きかけてきた。今回も加藤元幹事長に相当に期待したのだ。かれらは、自分たちの力で政権をとり、自民党に代わる政治をやるのではなく、自民党の分裂に期待をかけ、政権獲得を狙うというていたらくであった。まさに火事場泥棒である。こんな連中が政治的に頼りにならないのはすでに明らかだ。
 加藤と鳩山代表は、経済の「構造改革」、「課税最低限の引き下げ」など、勤労国民に容赦(ようしゃ)なく犠牲を強い、もっと血を流せという悪政推進でも基本的に一致している。国民をばかにするのも程ほどにした方がよい。民主党の動きは、支配層の手の内に過ぎない。


 鷲尾連合会長もまた、民主党と連携した「加藤政権」ができるならば連合は役割を果たさなければならないと、民主党の動きに追随した。連合指導部の動きは、労働者の利益を裏切るものである。本来、労働運動は国民諸階層に呼びかけ、その先頭に立って国民運動を背景に自民党の悪政を打ち破るのが筋ではないか。
 最後に、こうした民心が離れた政治は打ち倒せと言いたい。自民党主導のいわゆる「中道保守政権」であろうが、あるいはそれが民主党主導の連立政権に代わろうが、今日の政治の実質はまったく変わらないことははっきりしている。国民の声や批判がまったく政治から置き去りにされている。従って今後ますます、国民はこういう政党、連中に対する不信を強めるだろう。政治が国民の不満を受け入れない限り、当然だ。
 わが党は、勤労国民と共にその要求にそって、政治戦線で各政治勢力と連携し、国民運動の力で政治の根本的転換のために闘う。断固たる国民運動の力で闘うことによってのみ展望は開ける。


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