20000905


公明党 総選挙敗北、強まる下部の批判

動揺しつつも自民支える


 森政権を支える公明党に対し、総選挙敗北などをへて、下部や支持基盤である創価学会から不満が噴き出している。公明党はこうした批判に動揺を重ね、「独自性」を見せるポーズをとりつつある。「あっせん利得罪」法案をめぐっては「与党離脱」さえにおわせた。日本債券銀行(以下、日債銀)のソフトバンクなどの企業連合への譲渡問題でも同様である。中小商工業者や労働者の生活苦をよそに、公明党は「瑕疵(かし)担保特約はやむを得ない」などと、結局は自民党政治を支え続けている。国民各層、とりわけ中小商工業者は、「連立政権で政治が変わりつつある」などという公明党の宣伝に惑わされてはならない。日債銀譲渡問題を中心に、自民党政治の最大の支柱となっている公明党を批判する。


厳しい批判に「独自性」のポーズ

 六月の衆議院総選挙を初めて与党として闘い、大敗した公明党に対し、厳しい批判がわき起こっている。
 最大の支持母体である創価学会は七月七日、公明党との連絡協議会において「自民党との選挙協力の実効性に問題があった」と批判の声をあげ、森首相の「神の国」発言にあっさり引き下がった公明党の態度についても「現場には『もう少しなんとかならないか』との声が結構あった」と、不満をあらわした。
 公明党は、こうした批判にあわて、「独自性」を見せようとやっきとなっている。
 あっせん利得罪法案をめぐっては、神崎代表が「成立しなければ相当な覚悟を持って対応する」と、連立離脱をにおわせる発言を行った。また、永住外国人への地方選挙権付与についても、北側政策審議会長が「連立与党の合意事項であり、今世紀中の問題は今世紀中に解決すべきだ」などと述べ、自民党に対し強い姿勢を見せている。
 しかし一方で、「(公共事業の見直しなど)公明党が言い始めて自民党を決断させてきた。自民党だけではできなかった成果を上げている」(冬柴幹事長)、「公明党が政治の中枢に入ることによって、人間主義の流れを注ぎ込むことができた」(浜四津代表代行)などと自画自賛、連立で自民党を支え続けることを公言している。
 こうした言い分は村山政権時代の社会党と同様で、いまや選挙において二〇%を大きく割り込む支持しか得られない自民党政治を助け、その延命に手を貸すことの「合理化」にすぎない。

銀行救済の70兆円を正当化

 公明党が自民党政治を支えていることは、現在問題となっている日債銀のソフトバンク連合への譲渡問題でも変わることはない。
 公明党の石井財政・金融部会長は、現行の「一時国有化による処理」はもともと「民主党案」で、公明党(当時は「平和・改革」及び公明)案は「譲渡後の二次損失が発生しない方法」(「公明新聞」八月五日付)であったなどと言いわけし、責任を民主党に押しつけている。
 ならば、問題債権が目減りした場合、国が買い戻すという瑕疵担保条項を見直すよう主張するのかというと、そうではない。「国際的な信義の問題となり、(中略)日本の経済と金融に大きな影響を与えかねない」から、「契約を予定通り実施すると政府が明確に宣言すべき」(北側)などと、しっかりと与党の立場を「堅持」している。
 それどころか石井は、同条項について「家を買った後に欠陥があれば売り主が責任をもつという民法や商法の規定と同じもの」などと、その「正当性」を主張するありさまである。
 これはとんでもないデタラメである。なぜなら、日債銀はわずか十億円で譲渡されるが、それほど安い理由は、同行が三兆円を超える債務超過に陥り、現有三兆円余の債権のうち、「問題・不良債権」が一兆二千億円を占めていることにある。つまり、企業としてはすでに破たんしているのである。どこの世界に、最初からつぶれかかっていると知っていながら、住宅を購入する者がいようか。
 金融再生委員会は、日債銀が「つぶれかかっている住宅」であるがゆえに、三兆円の債務超過を税金で穴埋めするなど血税を投入した上に、十億円という破格の安値で、しかも瑕疵担保条項をつけてまで企業連合に引き取らせようとしているのである。
 また公明党は、瑕疵担保条項を破棄した場合には、「国民負担が増大する可能性が高くなります」などと、国民をどう喝している。
 そもそも、金融再生法と金融健全化法という、七十兆円もの血税を投入して銀行を救済する仕組みをつくっておきながら、その根本にほおかむりして、「追加負担」をうんぬんするのは、本末転倒であろう。
 以上みてきたように、公明党の言い分は矛盾だらけであり、まったく通用しないものである。

「再生法改正」は小手先の手直し

 公明党は、この銀行救済策に対する国民の怒りの強さを十分承知している。
 それゆえ、申しわけ程度に「(企業の)モラルハザード(倫理の欠如)を助長してはならず、公平、公正の原則を重視し、原則として債権放棄には応じるべきではない」(北側)などと言ってみせ、「株主や経営者責任を明確化」し、預金保険機構が債権放棄要請を拒否できるよう「金融再生法の改正」を主張している。
 これこそ、小手先の手直しにすぎない。確かに若干の債権放棄は減るかもしれないが、七十兆円投入の救済システム、際限のない瑕疵担保条項は維持されたままだからである。国民の怒りをいくらかでも和らげようとする汚い狙いからである。
 結局のところ、彼らが主張するのは、「積み上げてきた金融システム安定化のための政策努力が水泡に帰す事態も懸念されます」(石井)という、財界とまったく同じものである。財界の言い分を無批判に繰り返す公明党は、いったい誰のための政党なのであろうか。
 この問題の本質は、瑕疵担保条項はもちろんだが、七十兆円もの血税で大銀行を救済・優遇する金融再生法と金融健全化法にある。
 公明党は、こうした点を明らかにしていないのはいうまでもない。それは彼らが中小商工業者や労働者の味方などではなく、「大銀行・大企業の代理人」である自民党を支え続ける柱となっているからである。


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