20000825


共産党6中総

「現実路線」続ける選挙総括


 共産党は七月十九日、第六回中央委員会総会を開催した。議題は、総選挙結果の総括であり、あわせて、十一月に第二十二回党大会を開催することを決定した。共産党は第二十一回党大会(九七年)において保守との連立による政権入りを決定、九八年参院選などいくらかの「前進」もあったが、「安保棚上げ」論など、保守にすり寄る「現実路線」を進めてきた。六中総では、そうした「前進」が頭打ちとなり、総選挙では野党の中で唯一議席を減らしたことに対する共産党の衝撃ぶりがうかがわれる。彼らは、「反共謀略」が最大の敗因だとし、「現実路線」や民主党への無批判については、まったく触れないか、あいまいにし、「現実路線」は引き続き継承するとしている。志位書記局長の幹部会報告を中心に、批判する。


敗北を「反共謀略」のせいにする

 共産党は、選挙敗北の最大の要因を「日本の選挙戦の歴史でも前例をみない空前の謀略作戦」(不破談話・六月二十六日)にあったとしている。志位もまた、以下のように述べている。

 「今回の総選挙の最大の特徴は、政権与党が政策論争を回避し、(中略)選挙史上例のない、無法な謀略的手段を中心においた一大反共キャンペーンを行ったことにありました」

 念のいったことに、志位は「謀略ビラ」のまかれた都道府県数や推定枚数まで報告し、責任転嫁にやっきとなっている。
 しかし、「反共謀略」に敗因を求めるのは責任転嫁であり、今さら通用するものではない。
 危機に陥った支配層が、反政府的な党に対して謀略を仕掛けるのは歴史的にも無数にあり、あらかじめ予想できることである。
 現に共産党自身も、九七年の第二十一回大会決議において、自信ありげに以下のように述べている。

 「党の躍進に対して、反動側は警戒感を強めている。新たな逆風のくわだても繰り返されることを、決して過小評価してはならない。しかし、どんな逆風のくわだてに対しても、わが党はそれを打ち破る路線、歴史をもっている」

 共産党はこの決議を忘れたのだろうか? そして、六中総では「怖くない」共産党のイメージづくりに「日常不断に本腰を入れる」という「現実路線」を結論とした。

「現実路線」こそ敗北の最大の原因

 共産党は第二十一回大会後、「安保棚上げ論」や国旗国歌法制化の促進、さらに不破の「有事の際の自衛隊活用」発言など急速に「現実路線」を深めてきた。
 総選挙ではパンフレット「私たちはこんな日本をめざしています」を配布、「日本改革」論を宣伝した。
 また、「自民党が国と地方の借金を百一兆円も増やした」という理由で、かつて「もっとも有効で緊急にとるべき景気対策」としてきた「消費税の三%への引き下げ」のスローガンをこっそり隠し、「穏健な共産党」を保守層に印象づけようとした。
 選挙前には関西経済同友会と懇談、「九〇%まで一致できる」というコメントをもらい狂喜するありさまであった。
 しかしこうした支配層にすり寄る「現実路線」は、共産党の独自性を見えにくくした。支配層は「共産党もものわかりがよくなった」と歓迎したが、有権者には「共産党らしさがなくなった」という印象が広がった。
 結果として、自公保連立政権に不満を持つ有権者の票は民主党、あるいは社民党にとどまり、共産党には来ないで、議席減を招いた。「現実路線」こそ、共産党後退の原因である。
 ところが志位は、こうした「現実路線」にまったく無反省であるどころか、それをさらにおし進めることを宣言している。

 「『日本改革』の提案が、これまでにない幅広い社会層の共感を得たことはまぎれもない事実であります。それは(中略)、この提案をもって経済界や宗教界をふくめ、これまで党が接触点をもたなかったさまざまな団体、個人と対話を広げ、多面的な一致点が確認されたことにも示されています」

など、保守へのすり寄りを誇っているのである。
 共産党は今後ますます、政権目当てに「現実路線」を深め、労働者階級を裏切るであろう。

民主党を批判できず動揺

 共産党は政権入りのために国会内のいくらかの「野党共闘」を天までもちあげ、他の野党、とりわけ民主党への批判をいっさい行ってこなかった。それは「野党共闘」優先のためであり、客観的には民主党を擁護するきわめて犯罪的なものである。
 しかし民主党は、自民党に先んじて低所得者いじめの「課税最低限の引き下げ」を主張、日米安保を「安全保障政策の基軸」とし、さらに鳩山代表が改憲と徴兵制を主張するなど、徹頭徹尾財界のための政党である。
 本来、共産党が前進しようと思えば、自公保政権を批判するだけなく、それとの中間に位置する民主党を批判し、違いを鮮明にしなければならないはずである。
 だが、彼らにはそれができない。それを行えば、「野党共闘」は霧散し、政権入りの「夢」はついえるからである。議会主義に転落した共産党は、こうした深刻なジレンマに陥っている。

 「『競争相手としての野党批判』ということは、わが党にとっても新しい課題であって、それを具体化するためには、いっそうの努力と探究が必要であったし、今後も必要であります」

 民主党批判を行わなかったことをいくらか「反省」したのか、志位は、このようにジレンマをあけすけに語っている。
 共産党はかつて、社会党との間でこのジレンマに陥った。彼らは口汚く社会党批判に狂奔し、政治的孤立を招いた。もし同じように民主党を批判すれば、「政権のための」連携はできず、政権入りの展望は遠のいてしまう。
 共産党の「躍進」にも限界があることがはっきりした。結局のところ、彼らは民主党を美化し、政権入りのために、「現実路線」という名で際限なく追随する道を選択せざるを得ないであろう。


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