20000805 社説


沖縄の基地固定化狙う日米政府

局面変えた沖縄の決起、闘いはこれから


 主要国首脳会議(サミット)の前日、沖縄県民は全国の人びとと連帯しながら嘉手納基地包囲行動を闘い、九五年の県民総決起大会以来の大規模な大衆行動によってその底力を見せつけた。県民の闘いは、局面を変えつつある。
 サミット直前の相次ぐ米軍犯罪、事件・事故や県民の闘いによって、沖縄県民の懐柔を狙った日米両政府のもくろみは、打ち砕かれた。かれらは、沖縄でのサミット開催やクリントン米大統領の沖縄訪問などによって、米軍基地維持のために県民をなだめるのに必死になったのである。
 サミットが終わり、普天間基地の名護移設問題は具体化するであろうし、いよいよ闘いは正念場を迎えたのである。
 この闘いは、日米安保体制と関連してわが国の進路にかかわる重要な闘いであり、現在の高まりを踏まえて、さらに全国で広範な戦線をつくり闘わなければならない。

許せぬ米大統領の基地固定化宣言
迎合する民主党

 今回のサミットを前に、地元では基地問題打開のきっかけにという期待が高まった。地元紙・琉球新報と沖縄タイムスはサミット直前、一面に「社説」「提言」を掲載した。琉球新報は「海兵隊撤収シナリオを」と要求、沖縄タイムスは「名護市への移設見直し(白紙撤回)を」求めた。それは、沖縄県民にとってそれほど基地問題が切実な問題であることの表明でもある。
 ところが、クリントン大統領はこともあろうか、この県民の願いを逆なでした。わざわざ「平和の礎(いしじ)」に出向いて演説し、沖縄県民に同情するかのようなポーズを取った。そこで彼は「沖縄は(日米)同盟の維持のために死活的役割を果たしてきた」と、米軍基地を置く沖縄の重要性を強調。これは事実上、基地の永久使用を公然と宣言したものである。こうした態度は、基地に苦しむ沖縄県民、日本国民を愚弄(ぐろう)するもので断じて許されない。
 ところが、こうしたクリントンの表明に対し森政権に劣らず売国的なのが、ほかならぬ民主党である。菅直人政調会長は「米大統領は沖縄における米軍基地の縮小に前向きの発言をしたと受けとめており、大いに評価したい」などと露骨に迎合した。
 しかし、クリントンは基地の縮小や兵員の削減などに一言も言及していない。「日米安保条約はわが国安全保障政策の基軸」(安保基本政策)という民主党は、将来の日本の政権党として米国に認知してほしいがために、この機会に米国におもねったものにすぎない。
 だが、「謝っているような印象だが、演説は返す刀で米軍基地の重要性を強調している。本当に言いたいことはそこにある」(沖縄平和運動センターの崎山嗣幸議長)というように、沖縄県民はクリントン演説の真意を見抜き、猛反発している。

売国的、屈辱的な森政権
 さらに売国的、屈辱的なのは、森政権である。二十二日に行われた日米首脳会談で、米軍基地整理・縮小については、「日米特別行動委員会(SACO)最終報告の着実な実施を図りたい」と述べ、相次ぐ米兵犯罪についても「綱紀粛正を望む」とおざなりに述べただけであった。ましてや、稲嶺沖縄県知事などが主張する代替基地の「使用期限十五年」はひとことも持ち出されなかった。
 こうした森首相の「要請」に対し、当然クリントンもまた「SACO合意の実施に協力する」と、やはり紋切り型で応じたのであった。
 また、米軍への「思いやり予算」三十三億円削減合意も、決して容認できるものではない。この予算は、米軍個人用の光熱水費、ゴルフ場などの支払いさえ含んだ、米軍を「思いやる」ものであった。
 この削減問題は昨年来、日米対立の問題の一つであった。だが、七月の米軍犯罪、事件・事故の続出以来、米国側が沖縄に「配慮」して急きょ妥協した。だが、削減幅は年間二千七百五十五億円の「思いやり予算」のわずか一%強にすぎない微々たるものである。まさに森政権の屈服ぶりが分かろうというものである。
 元来、こんな予算は即時廃止すべきものである。したがって、「思いやり削減は不十分」「日米安保体制での日本側の貢献維持を求める米側の主張の方が優先され、沖縄が求める懸案の解決の方は先送りされた」(毎日)といった批判も当然にも出ている。
 いずれにせよ、森政権の売国的姿勢は、目を覆うばかりであり、糾弾しなければならない。

再び燃え上がる沖縄の闘い
 琉球新報は、前述の一面社説で「最近の米兵事件の続発は、一九九五年の米兵による少女乱暴事件事件直後と同じように沖縄の米軍基地をめぐり社会的な混乱、政治、外交的な危機が近い将来、確実に訪れることを示している」と指摘している。
 事実、七月初めの米兵の相次ぐ事件に憤激した沖縄県民は、急速に立ち上がった。七千人の緊急県民大会(七月十五日)に次いで二万七千人による嘉手納包囲。この嘉手納包囲は、規模では九五年の県民総決起大会(八万五千人)以来の大きさである。沖縄県民は九五年以来、県民投票、名護市民投票での勝利、県知事選挙、名護市長選での敗北など曲折をへながら、また再び闘いの高まりをつくりだしつつある。
 本土でも、米軍基地がある県を中心に神奈川、大阪、東京、岩国などで連帯行動が繰り広げられた。
 サミットが終了し、いよいよ名護への移設問題が具体化し、焦点化する。名護現地では、日米会談における森政権のあまりに対米追従的な対応もあって、矛盾がうずまいている。
 米軍基地を撤去し、安寧な沖縄を取り戻す、また対米追随を脱却しアジアと共生する日本を実現するためには、広範な国民的運動を形成し、断固闘わなければならない。嘉手納包囲や全国の連帯行動の高まりを足場に、本格的闘いはこれからである。


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