この時期におけるわが党の政治戦術などについて

20000801

党中央委員会

この時期におけるわが党の政治戦術などについて

　日本労働党中央委員会の指示により、昨年九月開かれた第十一回中央委員会総会決議の一部を、資料『わが国保守党の政治支配と策略』の一部をつけて発表することになった。わが党の昨年秋以降の政治戦術の変更（中間政党、社民勢力などに対する態度など）、六月総選挙に対する態度と国政選挙のための「新しい党」の提起などについて、先進的労働者、社民勢力と党内外の広範な闘う人びとに理解していただくためである。

「第11回中央委員会総会決議」より

（一）はじめに

　バブル経済の崩壊が明らかになった時、わが国の戦後政治を単独でほしいままに牛耳ってきたさすがの自民党も、国民の信頼をほぼ完全に失った。
　一九九三年総選挙の結果、自民党はいったん下野し、野党となった。その後、細川、羽田の二つの連立政権をへて、村山連立政権で再び与党に復帰した。こうした若干の過渡期をへて、橋本、いま小渕と、自民党主導ながら連立政権の時期に入った。小渕になってから自由党が連立に参加し、いままた公明党の参加で自自公連立政権となった。
　この小渕政権は安定感があるという評価さえある。だがこの評価は表面的な見方でしかなく、きわめて近視眼的で、当面の状況をさしているにすぎない。自民党とその政治が国民の支持を失っていることに変わりはない。
　それでも小渕政権がやっていけるのは、自由党などのような保守党派、公明党や民主党のような中間党派などとの連立あるいは取り引きによって、衆参国会での多数派が当面のところ形成されたからである。自民党から最近（九〇年代に入って）離れた約八百万（有権者の増加を考慮すると一千万以上）の有権者は、棄権にまわるか、他の保守党あるいは中間党派に投票した。ところが、受け皿となったそれらの党が、有権者の意思に反して、自民党政治に手を貸しているからである。
　だがこの点にこそ、自民党と連携する諸党派は、「これまで以上に」厳しい支持者たちの目を意識せねばならず、その「支持基盤が必ずしも確固たるものでない」ことを、知る機会に恵まれるかも知れないのである。同時にそれは、自民党政治それ自身の、あるいは連立の限界、本質的な弱点でもある。
　自民党主導での連立政権という政治を許しているのは、最大野党であった社会党（現在の社民党）の九〇年代に入ってからの凋落、政権参加後のさらなる数々の裏切りと党の分裂、消滅寸前までの衰弱、それに共産党のいっそうの「柔軟路線」といった問題。さらに決定的なことは、強力で革命的な労働運動がなく、農民や商工業者らの自民党がすすめるいわゆる「改革政治」に反対する闘いが分散的であること、さらに、わが労働党がまだ弱く、国民的大衆運動が形成できていないこと、これがある。
　ふり返ってみると、九〇年代にはいってからのわが国政治は、社会主義諸国の崩壊や社会主義運動の大幅な後退、資本主義・帝国主義側からの政治思想的な一大攻勢があったにしても、わが党にも議会主義の野党側にも不利なことばかりではなかった。八〇年代の終わりから九〇年代初頭には、リクルート、佐川急便などの疑獄事件で自民党政治への国民の政治不信は頂点に達していた。財界側もバブル経済が崩壊し、いまだに回復しない不景気に苦しんだ。新しい国際環境に適合するための「大改革」を余儀なくされた。むしろ客観情勢は、支配層に不利であった。そして野党も弱かったが自民党政治も限界に来ていた。
　だから九〇年代に入ってからの闘いでは、敵側がうまく指導権を握って、今のところ生き抜いているとしか言いようがない。
　危機は深いし、情勢は速いテンポで変化する。労働者階級だけでなく国民諸階層の行動も政治意識の変化もいちだんと早まる。財界とその走狗自民党や自由党も、中間諸政党（公明党、民主党）も、社民党や共産党も、立ち止まっていることはできない。わが党も例外ではない。目下、小渕内閣は自自公連立政権だが、この内閣も、この形の連立もわずかな期間でしかありえない。当然ながら政治と政党の再編は継続されるだろうし、政治家と政党の自己暴露は避け難い。これからが本番である。
　わが党は、危機に瀕する自民党政治と取り引きし、結果として自民党政治の延命を図る、あらゆる試みを暴露しなければならない。現在では自由党、公明党がこれに該当する。だが、今のところ野党であるが民主党についても警戒が必要である。一般的にいって危機が深まるもとでは、中間の諸政党は、弱った支配政党の打倒よりも手を結んで利を得る道を選ぶからである。
　こうした情勢、局面では、政治戦術の問題は決定的に重要である。この段階での政党に対する評価と態度を正しく定め、激化する党派闘争を闘い抜いて、労働者階級の断固たる闘い、国民諸階層の共同行動と統一戦線を発展させ、支配層を徹底的に孤立化させ追いつめ打ち破らねばならない。
　また、真に情勢の革命的発展を図るには、わが党の組織建設を飛躍させねばならない。革命的で戦闘的な労働運動を構築しなければならない。そのためには共産党の日和見主義、現代修正主義路線を徹底的に暴露し、労働者階級のなかで信用を失墜させ、政治的な破産に追い込まねばならない。

（二）この時期におけるわが党の政治戦術

　労働党の革命的な統一戦線（階級配置の完成）についてはずっと以前に（結党大会、および第二回党大会で）決定ずみである。自民党が信頼を失って、有権者のわずか二〇パーセント程度の支持者しか持たず、単独支配を継続できなくなった今日、より効果的に支配層を政治的に孤立させ、情勢を発展させるには、政治戦術、したがってまた、暴露の重点も変更を加えねばならない。
　わが党は一九九三年以降、細川、羽田、村山などの自民党首班以外の連立政権とそれらの党に適宜批判をくわえてきた。橋本、小渕が首班になってからも自民党を叩くだけでなくそれとなれ合ったり協調する中間党派も批判した。だが十分に意識的なものではなく、政治状況が変化したのに政治戦術を「意識的に」変更しないままであった。政治戦術、暴露の重点変更問題で、変化した情勢に立遅れたのである。
　このことを踏まえ、政治戦術の変更、暴露の重点を変更する。暴露の重点を、すでに民心が離れた自民党ではなく、中間諸政党に移す。自民党が単独支配ができなくなっている状況のもとで、「敵側がうまく指導権を握って、今のところ生き抜いているとしか言いようがない」と指摘したが、より効果的に支配層を孤立させ、情勢を発展させるためである。こうしてわれわれは、革命的統一戦線、すなわち階級配置をしだいに実現し、労働者階級が勝利するための必要な条件を準備する。

１、自民党と連立・取り引き・妥協を行いかねない中間諸党を、徹底的に批判・暴露しなければならない

　わが党は労働者階級の中での活動だけでなく、九〇年代に入って自民党から離れ、他の保守党か中間諸党（現在なら民主党、公明党など）の影響下にある、中小商工業者、零細業者や個人営業を営む人びと、農民、都市の小資産所有者などの中での活動を重視し、彼らの要求を支持するとともに、中間諸党が保守党派と妥協あるいは連立する行動に、徹底的な批判を加えねばならない。
　これらの党が絶えず支持者の批判を気にし、保守党との取引がままならないような環境に追い込んでおかねばならない。個々の政治家を共同行動に引き入れることはあっても、政党批判に手心をくわえてはならない。できるだけ、これら中間諸党の勢力は、伸びないで小さいほうがよい。
中間政党をこうした状況に追い込むことで、保守党（自民党）の政治的主導権を打ち破ることが可能となる。自民党は、危機が深まる下では、中間諸党との連携を通してしか、政権の維持が不可能だからである。

２、現代修正主義共産党の政治戦術の反動的役割。これとの闘争を重視する

　中間政党に対する、わが党、革命の党と現代修正主義、共産党の態度は根本的に異なっている。
　共産党は、二十一回大会路線にそって保守党を含む連立政権での政権参加をめざして、一路意識的に�柔軟路線�を進めている。自自公連立政権というこの局面では、野党とりわけ民主党との連携、共闘を重視し、そこに展望を描いている。この路線では、ずるずると中間政党に追随せざるをえず、当面する国民的課題の実現は不可能である。
　共産党は、民主党など中間政党との関係を重視して、その裏切りを決定的に暴露し、叩くことはできないし、してもいない。こうして中間政党を美化し、その暴露を妨げ、支配層のすすめる政治策略を容認し、左から支えるという反動的役割を果たすことになる。
　労働者階級の先進分子の中で、民主党など中間政党を暴露するとともに、その中間政党を美化する現代修正主義共産党を徹底して暴露し、幻想を打ち破らなくてはならない。

３、社民勢力が一定の自己批判の上に再建しようとするならば、わが党はこれを支援する

　九〇年代に入って、指導部の堕落と裏切りの結果として、社民勢力は凋落した。しかし、その影響下にあった人びと、下部の党員は多く残っているし、労働運動の活動家も分散し放置されたままで、方向を求めている。
　わが党としては、これらの人びととの連携をはかりながら、旧社民勢力の結集を支援する。労働運動や現在中間諸党の影響下にあるか棄権に回っている人びとを、政治的に動員し、大衆的な国民運動を発展させる上で有益だからである。
　先に社民党員や、その影響下の労働運動活動家についてふれたが、社民勢力との連携や相互信頼の深まりは、わが党の職場の党員とこれらの人たちとの団結のためにも有益だからである。
　またこの問題は、現代修正主義党と闘う上での必要条件でもある。

４、広範な勢力の連携で国政選挙を争うことを模索する

　わが党は、小選挙区制度の下でも、いずれどの時点かで、国政選挙を争わねばならない。この段階(合法的で、議会がまだ多くの大衆の関心を集めている）での全国民的政治戦である国政選挙に旗を立てて争わないで強大な前衛党建設はあり得ないからである。
　この問題では、党が単独で強力になって登場するか、他の共同できる勢力と連携して戦線を構築するか、二つのどれかである。現在の条件下では、党をしだいに発展させながら、他勢力との連携を模索することが実際的で、自民党的政治と闘う広範な戦線を構築する上からも必要なことである。
　社民勢力の結集を支援する問題は、この角度からも模索が必要である。
　党としては、こうした闘いに対応できる準備がなければならない。

（三）勝利の前提、主導権のために（略）

（四）わが党の現状打破について（略）

「わが国保守党の政治支配と策略－戦後政治、半世紀の経験の総括」より

五）九三年以降の経験と中間諸政党

　細川連立政権の経験として最後の部分で、「細川内閣は“反自民”の旗を掲げてはいたが、戦後で、しかも短命な片山内閣を除けば、保守・自民党政権が初めて保守党以外の他党を政権に参加させた経験となった。保守・中道連立の経験である。また、公明党、民社党、それに社会党も政権に初めて参加し、その飯の味や居心地のよさを覚えることになった」と述べた。
　しかしそれでも金丸や小沢らは、危機に際して主導的に対処するため、自民党を割り政治を流動化させ、「反自民の旗」を掲げてしか、民社・公明・社会党を巻き込んでの保守・中道連立政権を実現できなかった。それほど、自民党長期政権に対する有権者の反自民意識が高く、これらの政党もおおっぴらには自民党と手を結べなかったのである。
　中間諸政党は、支配層とその政党の危機に際して、本質的には打倒よりかは取引の道を選ぶ。支配勢力は、譲歩することで支配を維持する。どの国の歴史も同じである。だからわが国の八〇年代終わりころからの危機の場合、一般的にはそういう経過あるいは光景が見られても不思議ではない。
　だが、やや異なるのは、わが国の保守党は野党に比してかなりしたたかで、危機意識も高く、歴史に学ぶところがある。いわば統治についての歴史的な蓄積がありそうなことで、少なくとも現状ではそういう指導層が存在すると思わねばならない。最近の経験を見れば、八〇年代末からの危機に際して、保守勢力の指導層は状況をよく把握していたし、十分な一致はなかったにしても、能動的に振る舞ったことがわかる。
　歴史的な状況、その趨勢は覆せない。だから、保守党はますます「策略型」の政治手法に移らざるをえないであろう。中間諸党の籠絡によって延命を図ることは必定である。
　現在の公明党、民主党、旧社会党のような社民勢力、今はない民社党、これらの党や諸勢力、あるいは政治家が、まだ変化流動化することは避け難いが、どんなに姿を変えようが、必ず取引の道を選ぶだろう。九三年以降の「味わいの経験」は、いっそう忘れ難くなっているはずだからである。今は公明党だが、明日は民主党が入れ替わっているかもしれないのである。
　だから、これらの中間諸勢力、諸党に対する態度をあいまいにすれば重大な誤りを犯すことになる。

六）支配層の戦略と展望

　利益分配志向型から策略型への移行についても、その背景についても詳しく述べた。80年代の末、自民党は末期症状に陥っていた。金丸、小沢ら自民党は、民社・公明・社会党を引き入れて打開しようとしていた。やがて「保守を割ってもよい」と言うようになった。同時期に民間政治臨調も発足した。
　九一年に細川が動き、九二年に最初は「自由社会連合」、具体的結党時には「日本新党」として新しい動きが始まった。九二年十二月、小沢らが「改革フォーラム21」を発足させた。九三年総選挙では、自民党だけでなく日本新党、新進党、「さきがけ」などの保守党が誕生しての争いとなって、自民党単独支配が崩れ、細川連立政権となった。
　細川・羽田・村山の各連立政権の性格や評価については、すでに述べた。それは保守主導の保守・中道連立政権であった。それは「保守支配の危機」に際しての、保守側からの政治策略による打開策であった。
　支配層と保守勢力は現在、二大政党制を基本構想としてもっている。

ａ）二大政党制のための策略と誘導（推察）

・「小選挙区・比例並立制」採用
・保守勢力の総結集による自民党の強化
・労働運動の上層部を主な基盤とした、都市型の党、民主党の立ち上げ
・公明党を保守党に吸収すること
・旧社会党・社民勢力の党を分解または無力化すること
・共産党を当面は孤立させるが、ある程度は保険として温存する
・議会制の枠のための労働党への警戒と過激派弾圧体制の強化

ｂ）当面は保守・中道の政権

　保守勢力にとって、二大政党制への移行はまだ多くの難題を解決せねばならない。
　一つは、公明党をなくさねばならない。
　創価学会を基盤とした六百万票前後の支持者のいる党の存在は、情勢次第では政局不安定の一つの要因になりかねないからである。
　だから自民党は、政権維持という目的と併せ、これを政権内に取り込むことで打開しようとし、公明党は政権参加で利を求めようとしている。公明党はしょせん宗教党という性格からして、単独では政権を取れないし、うまくいっても二番手にしかなれない。二大政党制の流れのなかでの一つの選択であろう。
　もう一つは、社民勢力を完全に無力化できるかどうかである。
　旧社会党のような党が一定の力を残せば、危機の深まりのなかでは勢力を盛り返すかもしれない。また、共産党と手を組むかもしれない。さらには、社民勢力の影響下にある労組の活動家たちが他の勢力と手を組んで、労働者たちを組織して闘いだすかもしれない。社民勢力はかなり凋落したが、戦後史の経験からすれば、依然として自民党にとって気を許せない存在である。
　二大政党制では、強力な保守党と併せ、民主党のような「連合」を基盤とする政党が安定して育つことが欠かせない条件である。だが、「健全で」安定した民主党が育つという保証はない。支配勢力が望むような「連合」が継続する保証もないからである。
　連合型労働運動の背景をなす、産業の二重構造、経済状況の格差などを考えると、有力な反対勢力の成長はありうるし、その構築はさほど難しいことではない。したがって、「連合」の民主党支持の定着は、そうたやすくはないし、安定もしないであろう。
　最近、小選挙区比例並立制の比例の部分、二十を強引に削ったのは、基本的には「自自両党の約束だから」でも、「世間がリストラをやっているから」でもなんでもない。それは口実で、本当の狙いは弱小党派を締め出し、二大政党制の環境づくりである。
　だが当面、自民党は、一方では保守大連合を進め、他方では中間諸政党との連携を求めての政権維持で対処することになろう。そうならざるをえない。

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