20000715 社説


燃え上がる沖縄の闘い

高まる連帯の機運、さらに全国に広げよう


 またも、沖縄で凶悪な米軍犯罪が引き起こされた。百三十一万県民の怒りは爆発寸前である。
 事件は、七月三日、海兵隊員による少女わいせつ事件である。しかも、その前後の三日間、タクシーへ乱暴した者の逃走ほう助や車による駐車場の門の破壊といったように米軍犯罪が相次いだ。わいせつ事件は、県民に五年前の痛苦の少女暴行事件を想起させた。しかも、これに対する抗議と怒りがうず巻く中、七月九日、またもや飲酒米兵のひき逃げ事件が起こった。
 こうした度重なる凶悪犯罪は断じて許されない。県民は、すでに米軍基地がある限り、こうした凶悪な犯罪は永久になくならないと、これまで何度も抗議行動や基地撤去を要求してきた。
 わが国支配層は、主要国首脳会議(サミット)の開催で「沖縄浮揚策」というアメを与え、「アジアのキーストーン(かなめ石)」としての沖縄の米軍事機能維持・普天間基地の県内移設をもくろんだが、今回の事件と県民の怒りによってその策動は吹き飛ばされようとしている。
 根本的な米軍犯罪の再発防止策、日米地位協定改正、米軍基地の縮小・撤去、そして日米安保条約破棄をいまこそかちとらなければならない。これこそが米軍犯罪を根絶する方向である。
 これらの闘いは、客観的には日本の進路を左右する重大な闘いである。思想・立場を問わず広範な県民世論を喚起し、さらに今こそ全国でも沖縄の闘いに連帯する広い運動を巻き起こす必要がある。

あばかれる米日支配層のペテン
 サミット開催を約半月後に控えて起こった今回の事件に、米日政府はあわてふためいた。
 米国は異例なことに米軍トップのヘイルストン四軍調整官(中将)と在沖総領事を直ちに知事に謝罪に行かせた。米軍トップが謝罪に出向いたのは戦後初めてである。そして、午前零時以後の外出禁止など「綱紀粛正」なるものを、海兵隊のみならず全米軍を対象に決めた。森政権も、中川官房長官、浅野外務次官を沖縄に急派した。こうして、かれらは沖縄県民の怒りの鎮静化にやっきとなったのである。
 県民世論が鎮静化しなければ、今後沖縄における米軍事機能維持に重大な支障が生ずるからである。
 そして、近づくサミットで、米軍隷属の沖縄の実態を知らしめることになるからである。米日政府は、国際的にきわめて不利な立場に立たされることになる。クリントン米大統領のサミット欠席の観測さえ浮上した。国内には、「(クリントン米大統領の)基地問題を抱える沖縄行きが中止されれば、反基地運動に弾みを与え、日米関係への影響も心配される」(日経)と、米大統領のサミット出席を懇願して、どこの国の意見か分からぬものさえいる。
 森首相に至っては「(日本)政府がどうこうという話じゃない。処理は海兵隊が考えること」と述べ、県民の痛みなどまるで他人事で、これまたどこの首相かと疑われているほどである。
 ついでにいえば、先の総選挙で「躍進」した民主党だが、今回の問題では全く米国の側に立っている。かれらは米軍の綱紀粛正を求めつつも「事件の発生が国民の駐留米軍への不信感を増すことを憂慮する」(伊藤英成・ネクストキャビネット外交・安保大臣)と、日米安保体制、米軍への影響を最も「憂慮」している。県民の生活などまるで問題ではなく、米軍、米国を最も心配するありさまである。
 そもそもサミットの沖縄開催決定は、「長い歴史の痛みと県民の熱い期待にこたえた」(野中官房長官・当時)などというきれいごとによるものではない。沖縄の米軍事機能を円滑に維持する代わりに、サミット開催で沖縄の「地位浮揚」を図るアメにすぎない。もちろん、その背景には日米安保共同宣言(九六年)に基づく日米戦略同盟維持の狙いがある。
 いうまでもなく、安保共同宣言は冷戦後もアジアに十万米軍を張り付けて、日本を米戦略に組み込み、中国、そして朝鮮民主主義人民共和国を標的とした日米同盟の宣言である。いわば、アジア駐留米軍のキーストーンが沖縄である。
 ところが戦後長く、膨大な米軍基地の重圧をかけてきたがゆえに、沖縄では矛盾も常に噴出した。最近では九五年の少女暴行事件である。それに対して米日支配層は普天間基地「返還」だの、北部地域振興策だの、サミット開催だのという、ペテンやアメを使って、県民をなだめ、あざむこうとしてきた。
 だが、今回の事件は支配層の汚い思惑を吹き飛ばさんとするほど衝撃的であった。そして、痛苦の事件を通じて県民は支配層のペテンを見抜き、闘いに立ち上がっている。この勢いと県民の自覚は押し留めることはできない。

基地撤去こそ解決の道
 いまでもなく、沖縄は日本最大の米軍基地県である。国土面積の〇・六%にすぎない沖縄に三十八の米軍施設があり、これは全国の米軍専用施設面積の約七五%を占める。米軍人・軍属・家族は約四万八千六百人もいる(九九年十月)。
 広大な基地によって、沖縄は戦後五十五年間、地域開発、経済発展、犯罪や環境問題など社会生活に深刻な犠牲をしいられてきた。特に、県民の安全、安寧な生活にとっては、米軍事故、騒音、基地からの有害物質、米軍犯罪などの問題は深刻である。
 米軍の刑法犯罪では、沖縄復帰の七二年から昨年末までの件数は四千九百五十三件にのぼる。うち、殺人、強盗など凶悪犯五百二十三件(全体の一〇・五%)、粗暴犯九百四十三件(一九%)もあった。県民は再三再四、米軍の犠牲になってきたのである。
 少女わいせつ事件発生後、保守・革新を問わず県民の怒りが噴出している。
 県議会をはじめ、沖縄市、宜野湾市、石川市、名護市など十一市町村で抗議決議、意見書が採択された(七月十二日現在)。県民は続発する犯罪に対し、すでに米軍のワンパターンの「綱紀粛正」すら信用しなくなってきている。沖縄市議会の決議は、度重なる米軍犯罪に「米軍のいう綱紀粛正の四文字は空手形にすぎない」と糾弾している。そうであろう、五年前の事件の際、米軍は「再発防止」を誓ったはずであるから。
 県下のPTA連合会、社会福祉協議会、防犯協会連合会などからなる青少年育成県民会議も、ただちに四軍調整官へ抗議に行った。女性も直ちに抗議行動を展開した。七月十五日には、五千人規模の緊急県民大会が開かれる。
 また、本土のマスコミはサミットを考慮し、今回の事件を意図的に伏せている。だが、全国的にも怒りは高まり、沖縄に連帯する闘いは盛り上がろうとしている。第二の基地県神奈川では、嘉手納基地包囲闘争と同日に沖縄と連帯して、厚木基地撤去を求める大規模な集会が行われる。さらに東京では、横田基地のある三多摩で十三日に、岩国基地のある山口県で十五日に集会やデモが行われた。この流れをいっそう前進させよう。
 抜本的な米軍犯罪の再発防止策、日米地位協定改正、米軍基地の縮小・撤去、そして日米安保条約破棄をいまこそかちとらなければならない。これこそが米軍犯罪を根絶する方向である。米軍犯罪は、在日米軍の不可分の産物であり、米軍・基地こそ犯罪の根源だからである。
 さらに、嘉手納基地包囲を成功させ、普天間基地の名護移設を阻止する闘いを断固前進させよう。
 沖縄県民、また全国でこれに連帯する闘いは、客観的にはわが国の進路をめぐる重大な闘いでもある。中国や北朝鮮を敵視する米国につき従い、アジアとの共生さえままならぬわが国の進路の現状。こんにちの闘いは、この対米追随の状態から脱却させる道でもある。
 思想・立場を問わず広範な県民世論を喚起し、さらに今こそ全国でも沖縄の闘いに連帯する広範な運動を、いっそう粘り強く前進させなければならない。闘いの機運は高まっている。


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