20000625


総選挙公約にみる増税攻撃
民主党の「苦い薬」はその先兵

財政再建を口実に大増税を準備


 総選挙で各党は、財政再建を口実に増税を打ち出す党や本音はそうだが、選挙での批判を恐れて隠す党などさまざまである。だが、選挙後どのような政権になろうとも、与野党とも国民大多数への増税で財政危機を乗り切ろうとしている。まず民主党は、課税最低限度の引き下げを打ち出すなど、露骨に国民負担による財政再建を主張した。自民党は民主党を批判したが、これまでの増税路線に変化はない。そして、共産党は消費税三%への引き下げをこっそり下ろし、ここでも支配層に恭順の意を示した。今後予想される増税攻撃に対し、警戒心を高め、労働者、中小商工業者などは連携を強め、反撃を準備しよう。


自民党
贈与税、譲渡益課税などで大企業優遇
党税調は増税狙う


 自民党の選挙公約では、景気回復優先として財政構造改革を先延ばしにしていた。そして民主党の課税最低限の引き下げを「弱い者いじめ」とこき下ろした。
 だが、与党三党による政策合意では、「贈与税については、控除を大幅に引き上げる等により、子育て等について親子の間で生前に財産を渡しやすくする仕組みを導入し、相続税についても税率構造や課税ベース等を見直します。さらに、株式の譲渡益課税については、市場への影響、投資家の便益等を考慮しながら今後とも引き続き検討します」と、金持ちと大企業のために優遇政策を打ち出している。
 選挙直前であり、増税は選挙に響くと増税を隠したに過ぎない。だが、宮沢蔵相、加藤紘一・元幹事長などは、民主党の増税案を支持する発言をした。自民党内にも財政構造改革、増税を主張する勢力が存在する。
 事実、これまで自民党政府のもとで、消費税をはじめさまざまな増税が国民生活を脅かしてきた。
 さらに、自民党税制調査会では、消費税の大幅引き上げや法人税への外形標準課税の導入なども繰り返し主張し、増税を狙っている。
 自民党を支える公明党は、二〇〇三年の通常国会に「新・財政構造改革法案」(仮称)を提出し、財政再建を重点にするとしている。規制撤廃や緩和など経済構造改革の断行と財政の健全化をめざすとしている。
 だが、連立政権入りして自民党と妥協しなくてはならず、結局、自民党の増税に追随するだけである。


民主党
公平に痛み分かち合おうと
低所得者に大増税

 民主党は、構造改革に直ちに取り組み、課税最低限度の引き下げなど「苦くても効果のある薬」と、国民へ犠牲を押しつけることを主張している。
 課税最低限度の引き下げだが、現在、標準世帯で年収三百六十八万円以下の場合は、所得税は非課税である。雇用者の約一五%が所得税を払っていない。この世帯へ課税しようというのである。
 さらに、鳩山代表は十六歳未満の子どもの扶養控除(三十八万円)、高校・大学生の特定扶養控除(六十三万円)の廃止を党首討論会で発言している。これが実現されれば、標準世帯の課税最低限度は年収二百九万円までいっきに下がる。
 さらに民主党の政策では、「国民が広く薄く負担するという税制改革を進める。子育て世代と年金受給世代、低所得者と高所得者、個人と企業などが公平に痛みを分かち合うべきである」と、税制について述べている。
 ここではより露骨に弱者に痛みを分かち合うことを要求している。また、法人事業税については、「外形標準化を行い、都道府県の基幹税とする」としている。
 支配層の意図が比較的示される読売新聞は、自民党に対し「『増税批判を受けるから』とあいまいにしたりすべきではない。税制、財政のあり方や社会保障制度改革などと関連づけて、建設的な議論に発展させるべきだ」と主張し、民主党の増税を支持している。


自由党
消費税は将来的には大幅アップ
法人税引き下げ、労働者には控除の廃止

 自由党は総選挙の公約「日本一新」を発表し、財政再建を重要な柱としている。
 まず消費税を福祉目的税として年金、健康保険、高齢者医療、介護などの社会保障に限定する。そして社会保険保健を消費税を財源とする税法式に改める、としている。
 だが、現在の消費税では、社会保障費の全額をまかなうことはできない。したがって、自由党の主張通りにすれば、当然消費税を引き上げなければ不可能である。実際に小沢党首は、これまでも消費税一八%や二三%などという数字を示してきており、自由党の方針は大増税である。
 また、所得税・住民税を半分に引き下げる。法人課税は実行税率四〇%に引き下げる。土地保有課税の見直し、相続税の引き下げも打ち出している。これらは大企業など優遇の政策であり、その一方で国民には消費税の大増税を押しつけるものである。
 しかも、労働者などには、自分で納税できるように税の簡素化をいうが、その場合にも各種控除の廃止を主張している。大企業には源泉徴収のコストをなくし、労働者には納税事務を負わせ、その上控除を廃止するのである。
 自由党の政策もやはり大企業優遇、国民への増税の押しつけである。
 このように、どの党も国民への増税で財政問題を解決しようとしている。
 だが、ぼう大な借金は、大企業のための大規模開発をはじめ、多くの金が投入された結果である。そして大企業はぼう大な利益をあげた。
 だから、財政再建というなら、その借金(公債)でボロもうけした大企業に金を吐き出させることで解決すべきである。
 今後、政府は財政再建を口実にした大増税が画策されていくだろう。労働者をはじめ国民諸階層は、与野党の増税策動を警戒し、連携をいっそう強め、闘いを準備を進めよう。


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