20000605


野党などの選挙政策を切る(上)憲法・安保・外交政策

米国に追従する政策ばかり


 衆議院が六月二日、解散し、二十五日総選挙が決定した。森政権は「末期症状」と言われるほどに国民の支持を失っている。憲法調査会の設置、新ガイドラインに基づく周辺事態法の制定など、連立与党はわが国の進路を誤らせる悪法を成立させてきた。各党は、改憲の動きや保守政治が続けてきた対米追随の外交政策に対する、明確な態度が求められているはずである。にもかかわらず、多くの野党の政策は自民党と明確に対決するものとはなっていない。国民各層は与党はもちろんだが、野党にも決して幻想を抱いてはならない。野党の中でも民主党、共産党、連立して自民党を支える公明党の、最近発表された選挙政策を取り上げ、その欺まんを批判する。


民主党 「『新しい政府』を実現するために」(1月発表)
鳩山は9条改悪、徴兵制を提唱


 憲法問題の項目はないが、これ自身、彼らが改憲の流れに沿っていることを示している。事実、昨年五月に発表した「安全保障基本政策」では「必要に応じて憲法を改正する」と明言、国会に憲法調査会を設置することにも賛成した。鳩山代表に至っては、憲法第九条の改悪と徴兵制の導入まで主張している。
 政策では、
 「民主主義と自由主義経済という価値観を米国と大枠において分かち合い、米国と安全保障・経済面で緊密な関係を構築してきたことが、戦後日本の安全保障と繁栄に大きく貢献してきました。…米国との緊密な話し合いを前提に、国内法令の整備などを通じて事前協議制度のあり方を明確にします」
 と主張。「新防衛指針を注視し、正しく運用する」「緊急事態における自衛隊の活動ルールを法制化する」などといい、新ガイドラインの容認と有事法制化を主張している。
 アジア外交については、
 「アジア太平洋地域における米軍のプレゼンスは、…この地域の平和と安定に重要な役割を果たしています」
 などと、米国の東アジア戦略を美化している。
 また、「PKO活動を充実させる」「国連軍には前向きに検討する」などと、自衛隊のさらなる海外派兵を主張。それが「現行憲法で可能かどうかについては議論がある」などと、憲法第九条改悪を後押ししている。自民党政治の対米追随・政治軍事大国化路線と、何ら違わないシロモノである。
 なお、民主党は六月一日、選挙公約「十五の挑戦」を発表したが、外交問題では抽象的な「平和な国際社会をつくる」の一項目のみである。


共産党 「総選挙に当たっての政策と訴え」
「安保破棄」がますます後退


 「アメリカの戦争への参加押しつけや米軍基地の異常、日本への核持ち込み密約なども、その根源に日米安保条約があります。安保条約をなくすのに、むずかしい手続きはいりません。日本政府がアメリカに廃棄通告をすれば、一年後にはなくなることが条約に明記されています」
 と、「安保破棄」と護憲を主張している点で他党と違いがあるが、通告だけで安保条約がすんなり破棄できるかのような幻想をふりまいている。安保条約は、中国・朝鮮に関与し圧力をかけるという米東アジア戦略のかなめである。共産党はこの点についてなんら暴露・批判していない。これでは、米国とそれに屈服したわが国政府とは闘えない。
 さらに、
 「(安保破棄)以前にもまったなしの課題があります」
 と言い、安保条約の破棄を事実上背後におしやっている。
 そして「まったなしの課題」とは、具体的には、
・戦争法の発動阻止
・米軍のあまりの横暴をただす
・普天間基地の無条件返還
・核兵器持ち込みのない日本
 というものである。
 本年一月の旗開き演説で不破は、「安保破棄以前の緊急の課題」として、
・平和優先の外交
・アジア重視の外交
・自主・独立の外交
 を提唱し、この方針は続く五中総で確認された。今回の政策は、彼らがますます、こまごまとした「現実政治」にはまり込んでいることを自己暴露するものである。
 彼らの政策もまた、支配層に「安心して任せられる」ものである。


公明党 「第42回衆院選重点政策」
「平和政党」装い自民を支える


 憲法問題についての項目はない。一見、改憲には「慎重」のような態度を装っているが、憲法調査会の設置を支持した。政策では、
 「ソフトパワー重視の国際平和戦略」などと、ソフトムードをふりまいてはいるが、新ガイドラインに基づく周辺事態法の制定に、自民、自由とともに賛成した前科をもつ。許しがたいのは、これらの悪法推進にほおかむりし、「国際社会の平和構築とアジアの発展に向けた積極的な貢献」「在日米軍基地の整理・縮小」「武器輸出三原則の法制化」などと、「平和政党」を装っていることである。
 本政策では、外交問題についての記述もきわめて少ないが、
「一国平和主義、一国繁栄主義的な生き方から、世界平和主義、相互繁栄主義へと外交姿勢を転換する必要があります」
 との基本認識で、
 「わが国は、国連安全保障理事会の常任理事国入りを果たすための外交努力を一層強化すべきです」
 と、政治大国化を主張している。
 憲法や安保条約については一言も触れていないが、自民党と連立を組んでおり、改憲と安保強化に手を貸していることは言うまでもない。


「六月総選挙についての声明」(労働党中央委員会)より

今回の総選挙で野党が主張し、闘うべきは、
一、護憲、つまり現憲法の改悪に反対することである。
  なぜなら、保守支配層と自民党などは口実はともかく、海外派兵と軍事大国化、政治反動をめざしているからである。
二、安保条約を破棄し、わが国からすべての米軍事基地を撤去させ、東北アジア、東南アジア、南西アジア諸国の地域で、非核の集団安全保障体制をめざすこと。
  なぜなら、アジアに米軍はいらないし、アジアが戦争の発火点になることに反対し、平和の砦(とりで)、共存共栄の地域となることを願うからである。     


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