20000515


財界のための政治支える民主党(中)経済・内政問題

自民党以上の「市場万能論」


 度し難い米国追随など、自民党同様に米国と大企業のための外交・安保政策を掲げる民主党だが、経済政策など内政面でも、その大企業優先、国民生活切り捨ての本質は明白である。とくに、多国籍企業の横暴にはいっさい手をつけず、規制撤廃でさらに「自由な活動」を保証しようとしている。その犠牲は、あげて労働者と中小商工業者に転嫁される。この党は、「人権擁護」「環境保護」「生活者優先」など、耳ざわりのよい空文句が得意だが、これにだまされてはならない。国民各層、とりわけ労働者階級は、民主党の本質を見抜くべきである。彼らの基本政策である「政権政策委員会提言」(九九年八月発表)を中心に、批判する。


「市場万能主義批判」するが…
規制撤廃で弱肉強食社会めざす

 彼らは、口では米国流の「市場万能主義」を批判するが、実態は自民党以上の市場万能主義者である。それは、規制の原則撤廃やIT(情報技術)革命推進など、強い大企業や一部のベンチャー、創業を優遇する産業政策を主張、中小商工業者や農業については、「バラまき政策の転換」「市場原理」で淘汰(とうた)に任せる典型的な弱肉強食の経済構造をめざしていることをみれば明らかである。さらに、政府コスト削減のため国民の「自己責任(負担)」を強調する。

<産業政策・規制緩和>
 「経済活動に対する規制は、…可能な限り撤廃し、市場の機能を高めて民間の活力と企業家のやる気を引き出す経済構造の改革を早急に推進していきます」
 「経済的規制は原則撤廃し、ベンチャー企業の新規参入を容易にする」
 「(中小企業政策は)従前の野放図な『バラまき政策』から『やる気が出る政策』への転換が必要である」(九九年十一月十七日、中小企業政策・商店街振興策の提唱)
 「社会構造・産業構造の変革を行う際、最も重要な要素は情報化革命であり、IT(情報技術)革命と考えられる」(同)

<農業政策>
 「今後の農産物価格決定については、市場に委ねることを原則とする」
 「市場原理に対応しうる大規模農業経営体の育成のため、農地流動化の促進など意欲ある農業者の農地集積を支援する」

<行財政改革>
 「『国の事務』は、外交・防衛・皇室・司法・通貨の他、ルールの設定とそのチェックに特化させ、指導行政にかかわる事務や実施事務は、原則、地方に移管する」
 「民主党は、行政改革は単に省庁の再編成にとどまることなく、その質的変革をはかることが重要だと考えています。企業や市民社会の自己責任・自己規律を曖昧(あいまい)にし、かつ行政責任をも不明にしたまま巨額の税が投入される今日の政治・行政システムは転換されなくてはいけません。行政指導や護送船団方式による行政スタイルを改め、公正で透明度の高いルールの下の行政を確立する必要があります」

<教育>
 「国立大学への手厚い保護が、国立・私立間の公平な競争を阻害し、非効率的な経営につながっている。…国立大学は、原則としてすべて民営化する」


雇用・福祉でも国民守らず
極まる大企業・金持ち優遇策


 税制では、最高税率の引き下げ、累進税率の緩和を主張し、高額所得者への減税を約束。反面、課税最低限引き下げや外形標準課税導入で、低所得者や中小零細企業をさらに搾り取ろうとしている。また、消費税は「福祉目的」という名目で、維持することを主張。四月二十一日に明らかになった、民主党「税制改革案」では、法人税引き下げや課税最低限引き下げを見送ったが(選挙目当てだ!)、この党の意図するところは明らかである。実際、同案では社会保険料控除などの所得税控除を全廃することや、「年金課税の見直し」を掲げており、これは事実上の増税案である。さらに、「負担あって介護なし」の介護保険制度を「自ら選ぶ福祉」などと積極的に推進してきただけでなく、さらなる国民負担増を隠していない。切実な雇用・賃金問題では、現に進んでいるリストラや賃下げを事実上容認した上で、「労働市場の流動化」を主張しているに過ぎない。

<税制>
 「個人所得課税については、総合課税化と課税ベースの拡大を通じた税率の引き下げをめざす。…国と地方を合わせた最高税率を四〇%以下を目標として引き下げる」
 「消費課税は、基礎年金財源に充てる福祉目的税に改める」
 「所得税というものは、課税最低限が上がりすぎているという問題があると考える。特にこれから中間層、サラリーマン層に対する対応を考えるとき、課税最低限をどのように引き下げていくか、ということとリンクしていくのではないかと思う」(鳩山代表・三月二十九日)
 「法人課税については、国と地方を合わせた実効税率を三〇%以下を目標に引き下げる一方、法人事業税の外形標準課税化などの検討や、法人住民税均等割の見直しなどによって課税ベースの拡大をはかる」
 
<福祉政策>
 「医療保険制度と年金制度の抜本改革を断行し、将来にわたって、安心のためのセーフティーネットを確保します。その将来像を正直に示すことで、部分的には国民の負担増を提起してでも、…安心が確保されることを明確にします」
 「介護保険制度は、これまでの『お仕着せ福祉』から『自ら選び利用する権利を持つ福祉』への大転換である」(党談話、三月三十一日)
 
<雇用・賃金政策>
 「産業構造の変化に対応してタイムラグなく、雇用の創出と人材の移動が連動できるように労働市場の構造を改革する施策を強力に推進します。また、一度失業した人が再起を期して挑戦できる中高年の雇用機会の門戸が広い『セカンドチャンスのある社会』を実現します」
 「ベアゼロのところが出ているということも含めて、時代を先取りして発展しているところがさまざまあるから、すべて(賃上げが)均等というのは難しい」(鳩山代表・三月十五日)


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