20000415


コーエン国防長官厚木視察(3月16日)
赤旗「なぜ操業停止させないのか」(3月19日)

米国にも恭順の意を示す共産党


 米軍厚木基地(神奈川県)に隣接する産業廃棄物処理施設・エンバイロテックの排煙にダイオキシンが含まれるとして、米国は施設の操業停止などを日米防衛会談などで強硬に求めている。そして、コーエン米国防長官は三月十六日、同施設を視察した。同時期、日本共産党は国会内外で、エンバイロテックの操業停止を求めるキャンペーンを行った。これは単なる偶然ではなく、明確に共産党について米国に安心してもらうことを狙ったものである。共産党は、九七年の第二十一回大会で、保守との連合政権入りのために支配層に恭順の意を示したが、さらに米国にも認知される路線を示していた。米国の東アジア戦略を真っ向から批判して闘おうとせず、米国におもねるばかりでは、わが国の米軍基地問題は何ら解決しない。わが国の自主・平和の進路とアジアの平和もかちとれないのは明らかである。共産党の裏切りを許さず、断固たる闘争と幅広い戦線を形成するために奮闘しよう。


 コーエン米国防長官の視察に合わせた厚木産廃問題についての共産党のキャンペーンは、異常に熱が入っていた。
 日本共産党の緒方靖夫・参議院議員はコーエン長官の来日に合わせたかのように三月十五日、参議院国土・環境委員会で、産廃施設について「操業を中止させるべきだ」と強く要求した。
 しんぶん赤旗(三月十九日付)はわざわざ「なぜ操業停止させないのか」という見出しで、そのために特集を組んだ。米軍のダイオキシン調査と操業停止要求をていねいに紹介している。
 一方、コーエン米国防長官は、三月十五日来日し、十六日には産廃施設を視察し、「改善」を強く求めた。
 その後、直ちにわが国政府は、「超法規」の百メートル煙突(航空法上、こうした煙突は特例)の検討、米軍家族のために無償の代替住宅の提供などを提案した。それでも米軍は三月二十七日、操業停止を求めて提訴した。もちろん、政府はそれを支援すると売国的な対応を行ったのは言うまでもない。
 これら、コーエン来日にあわせた共産党のキャンペーンは何を意味するのだろうか。それは、「ダイオキシン公害」を口実に、米軍の要求を支持する態度を示し、米国に共産党の「現実政策」ぶりを認知してもらいためにほかならない。
 こうした日米政府の対応に厚木基地爆音防止期成同盟や、神奈川平和運動センター、社民党神奈川県連合などは、「違法爆音には日米政府高官は、四十年間誰一人来ないのに、この問題では瓦防衛庁長官、コーエン米国防長官が急きょ視察に来た。日米両政府の対応は、爆音に苦しむ住民無視だ。政府は、米国より国民を守れ」と抗議している。共産党とは大違いである。
 その後、共産党のキャンペーンは若干トーンダウンした。だが、それは欺まん的なポーズにすぎない。なぜなら米軍が日本の「公害」を非難するならば、その前に爆音、低空飛行、PCB汚染、劣化ウラン弾など、自らの無数の基地公害をまず正すべきであろう。共産党もまずそれを要求すべきである。ところが、共産党はまず米軍の要求を支持した。だから「あきれた米軍の『環境』感覚」(赤旗四月八日付)などは、米軍危難のポーズにすぎない。
 これが、厚木基地周辺の産業廃棄物処理施設問題である。

米戦略の根本的批判を避けた共産党

 つまり、コーエン米国防長官が三月十六日に視察し、三月十五日に緒方が国会で質問し、赤旗は三月十九日号で産廃撤去は当然と主張している。このように米国と軌を一にした共産党の行動は偶然ではない。
 共産党は第二十一回大会で政権参加のために支配層に恭順の意を示した。これまでの政策を徹底的に変え、支配層が安心できる政策に変えたのである。支配層が安心できるためには、日米安保棚上げは当然だし、米国にも安心してもらわなければならない。そのために、この産廃施設問題での共産党のキャンペーンがあったとみるのが自然である。
 また第二十一回大会では、東アジア戦略についての根本的な米国批判を避けたばかりか、アメリカの民主主義を驚くほどに賛美している。それは、共産党が米国の東アジア戦略を批判しないことで、米国やわが国政府と同じ立場に立っていることを示したのである。
 これならば、政府にも米国にも安心して共産党を認知してもらえるので、政権入りの展望が開けると考えても不思議ではない。まさに二十一回大会の具体化そのものである。
 しかも裏切りは、さらに進んだ。一月十三、十四日に開かれた共産党第五回中央委員会総会での志位書記局長報告では、当時の国会での民主党などとの野党共闘を天まで持ち上げた。
 だが、わが国支配層や米国が安心する共産党の外交・安保政策では、沖縄を始め米軍基地撤去を求める国民の要求にこたえられないのは明白である。
 台湾問題で共産党の態度は、中国に武力行使反対を求めるなど日米政府と同じである。
 こうした共産党の裏切りの道は、結果的に米国の東アジア戦略を擁護し、わが国政府とともにアジアと敵対する道を歩むものである。
 米国の危険なアジア戦略をおおい隠してはならない。


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