20000315 社説


共産党「よりまし政権論」のペテンとその犯罪性

断固たる闘争、統一戦線の発展こそ勝利の道


 越智金融再生委員長の辞任、一連の警察不祥事発覚など、小渕政権はいよいよ苦境に陥り、国民の怒りが高まっている。自自公連立で来年度予算案成立を確保し、小渕首相は四月以降、解散総選挙に打って出る自由は手にしたものの、主導性はない。昨年第四・四半期の国内総生産(GDP)も、大幅減を記録した。
 小渕政権をさらに追い込み、悪政をうち破るチャンスがきている。問われているのは、野党を含む反政府勢力、労働運動の闘いようである。
 野党第一党の民主党は、自民党政治への確固たる対抗軸を示せず、院外で国民の怒りを結集して闘おうともせず、存在感はまるで薄い。
 こうしたなか、「柔軟路線」を推し進めてきた共産党が、野党による暫定連立政権構想を打ち出した。不破委員長は二月二十八日、来る総選挙で「野党が過半数を取る可能性は色濃くある。可能な政策協定を結び、連立政権に加わる用意がある」と、政局での主導権を狙って発言した。
 民主党の鳩山代表は否定的な対応をしているが、他に展望が示されなければ、政権への批判を強める国民にいくらか幻想を与えるかもしれない。「左派」を自称する人びとの中にさえ、「最近、共産党はセクト的でなくなってきた」などと無邪気に歓迎する者も出てきた。
 だが、共産党が唱える野党連立政権とはどんなシロモノか。そもそもその可能性はどの程度あるのか。実現したとして、自民党主導の政治を「よりまし」に変え、国民的要求を実現できるのか。
 九三年の総選挙で、自民党の長期単独支配は終わったが、保守勢力の策略により財界のための政治再編が進められた。中間諸政党の動揺、取引で、政治革新を望む国民多数の意思は台無しにされた。社会党をはじめ野党は敵の策略を見抜けず、翻弄(ほんろう)され、大きな犠牲を払った。
 こうした経験を踏まえるなら、共産党の唱える政権構想には、国民多数の利益の立場からきっちりとした吟味が必要である。

「支配層に恭順の意」示した21回大会路線が起源
 不破、志位ら共産党指導部による「野党連合政権」構想の提起は、今回、突然に出されたものではない。すでに、九八年の参議院選挙の直後に不破が、「安保条約を凍結」しての「よりましな暫定政権」の構想を述べている。
 共産党の二十一回大会は、「二十一世紀の早い時期に民主連合政権を」との方針を決めたが、それは米帝国主義とわが国支配層に恭順の意を表明して保守党との連立政権を追求する、いわば新路線への転換であった。それは、議会唯一主義で政治を変えようとする修正主義のいちだんの堕落、完成を意味している。
 以降この二年半、共産党は支配層に「政権を任せても安心」と思われるような「柔軟路線」を次々と具体化し、「現実的政党」への脱皮を図ってきた。共産党がめざす内外政策は、「資本主義の枠内での改革」を強調して、支配層の許容する範囲の「改革」に抑制。政治行動は、院外の大衆行動は極力控え、「建設的提案」「野党共闘」など国会戦術を重視。議会主義、合法主義に徹して、マスコミの歓心を買うことに腐心してきた。「天皇制」も、「安保破棄後の自衛隊の存続」も容認した。「国旗・国歌の法制化」では、反動政治に手を貸し、「柔軟路線」の犯罪的役割を自己暴露した。
 そして不破は九八年八月、「民主連合政府をつくる以前にも政権参加を追求すべきだ」とさらに踏み込んだ。共産党は「よりまし」な野党連合による暫定政権へ参加する用意がある、その場合「日米安保は凍結」してもよいという態度を打ち出した。
 今回の不破、志位らの発言は、こうした二十一回大会の「柔軟路線」の具体化の過程で出てきたものである。政局の焦点が解散・総選挙に移った時点で提起することで、共産党の現実政党ぶりをアピールするとともに、政権への接近を模索していることは明らかである。

「よりまし政権」は、国民裏切る道
 最近の不破らの政権構想の提起は、一月の共産党五中総で決議されたものだ。
 五中総で共産党は、いちだんと「柔軟路線」に磨きをかけた。
 例えば、「修正資本主義派との共同が、現実味をおびた課題となりつつある」とし、財界人との「大胆な対話と共同の探求」を決議した。
 例えば、この間の「野党共闘は二十年ぶりの質的な前進があった」と天まで持ち上げた。「それを大切にしながら誠実に共闘を積み重ねていくならば、さらに一致点が広がっていく」と。
 当の民主党が聞いたら、恥ずかしくなるような信頼ぶりである。党首が堂々と憲法九条の改悪を公言し、金融国会では平然と国民の利益を裏切って財界に奉仕するようなブルジョア政党・民主党への態度は間違っているだけでなく、有害である。この「中道」を装う党が果たしている反動的役割を覆い隠して民主党を後押しし、労働者国民の警戒心を鈍らせるからだ。
 さて、肝心の「よりまし」な野党連立政権構想である。
 「総選挙の結果として、自自公が合計でも過半数を割る可能性があります。……そのときに、従来の自民党政治の枠から踏み出した『よりまし』な一致点を確認して、野党による暫定連立政権をつくるか。……わが党は、国民の利益にたって自民党政治からの転換を部分的にせよ実現するために、暫定政権の協議に党として積極的に参加する用意がある」(五中総)という。
 不破らは、簡単に成立するかのように言い、成立すれば国民の要求が実現するかのように請け負うが、それは幻想であり有害である。
 第一に、この構想はそもそも民主党をはじめとする野党勢力が過半数を獲得することを前提にしている。あくまでも仮の話にすぎない。
 第二に、民主党が大きく前進したとして、共産党と連立政権を組む確率は少ないということである。鳩山代表は、「共産党とは一線を画す」と言明。さらには民主党の階級的性格からして、自民党の一部との連立もあり得ないことではないし、政党再編も大いに予想されることである。現に鳩山代表は、しきりに自民党の加藤派に秋波を送ってきた。
 第三に、民主党が共産党と連立を組む場合があるとして、どんな政策で合意が可能か。財政再建での一致点が模索されているようだが、消費税一つとってみても合意は容易でない。はっきりしていることは、共産党に主導権はなく、民主党にずるずると追随せざるを得ないということだ。すでに、共産党はせっせと「安保条約の凍結」「天皇制の容認」などの妥協を表明している。
 そうすると、労働者や国民の利益から見て、この連立政権が「反自民党政治」の旗を掲げながら、何か「よりまし」なことができるのかという疑問がわく。国民的課題はおよそ実現しないだろう。
 かくして共産党が唱える「よりまし」野党連立政権は、簡単に成立するものではない。万が一できたとしても、結局のところ「自民党政治」と何ら変わらず、再び政治革新の期待を台無しにする。
 共産党は政権にありつくために、そんな展望のない泥沼への道をあたかも「よりまし」になるかのように吹聴しているのである。
 共産党の「柔軟路線」、ましてや、あてにならない「よりまし」政権の幻想にだまされてはならない。総選挙を待って、あるいは国会での取引に国民の要求を託すわけにはいかない。断固たる闘争、闘いに頼って要求を実現する道こそ、最も確かな展望がある。総選挙待ちにせず、直ちに今からストライキ、大衆デモで悪政に反対する闘いを強め、窮地に立つ小渕政権を追いつめよう。
 リストラなどで散々犠牲にされた労働者階級は、こんにち春闘や反リストラなどを闘い、労働運動にも変化が起こりつつある。政府の規制緩和策で経営危機にある中小業者も反抗を強めている。国民負担増の介護保険も導入される。小渕政権への不満、不信は広がっている。
 断固たる闘争、それを基礎にした広範な政治的統一戦線の発展を軸にしてこそ、支配層の政治策略をうち破り、財界のための政治に終止符を打つことが可能となる。
 この道だけが、最も確かな勝利の道である。


Copyright(C) The Workers' Press 1996-2000