20000305 社説


雇用・生活危機を突破する春闘へ

ストなど、断固闘ってこそ道は開ける


 不況が引き続き、昨年の十〜十二月期の実質国内総生産(GDP)は二期連続で、しかも大幅なマイナスが予測されている。労働者の雇用・生活危機は依然深刻である。そうした中で二〇〇〇年春闘は、いよいよ三月十五日以降の集中回答段階へとヤマ場を迎えた。
 史上最低だった昨年並み賃上げすら渋る資本家側の悪らつな攻撃をうち破って、五千万労働者の生活危機突破の切実な期待にこたえられるかどうか、まさに労働組合、指導部の真価が問われている。職場の固い団結を基礎に、ストライキを始めとした断固たる大衆闘争のみが要求を実現させる。闘いは始まりつつある。
 また、春闘を通じて労働者の階級的団結の前進を図り、自自公連立政権の悪政に対して国民各層の先頭で闘い、先進的階級の名にふさわしい役割を発揮することが求められている。

賃下げも首切りも自由―

これが「人間の顔をした市場経済」
 今春闘で資本家・経営側は、これまでよりさらに踏み込んで、「ベアゼロ」どころか「賃下げ」方針を露骨に打ち出した。
 財界の労務部・日経連の労働問題研究委員会報告は、「国際競争力の維持・強化のために、高コスト体質からの脱却」を唱え、「総額人件費の引き下げ」を指導している。他方、社会保障費削減など「政府コストの徹底削減」も要求する。話題の「ワークシェアリング」も、労働時間、賃金も引き下げるよう、人件費コスト削減策の一環として提起されている。
 資本家どもの魂胆は明確だ。乾いたぞうきんをさらに絞るように、労働者に犠牲を押しつけることで、外国企業との国際大競争で自らの生き残りを図ろうということである。事実、本年三月期、上場企業(千七百九十八社)は三年ぶりに経常利益二ケタ増(一〇・七%)の見通しである。「人件費を中心にした経費削減や輸出の増加が全体の利益を押し上げている」(日経)という。なかでも、電機四七%、精密機械三三%増と突出している。つまり首切り、賃金カットで、大企業は二ケタ増益になったというわけだ。
 しかもわが国の自動車、電機、鉄鋼など主要四十九社における、使途が特定されていない別途積立金は約十四兆六千八百億円もだぶついている(昨年三月期)。ここで積立金をわずか〇・六%取り崩せば、ベア一%が可能となる(連合試算)。だが、資本家はそうはしない。
 さらに日経連は「政府コストの削減」をいうが、小渕政権は大銀行に七十兆円も税金を投入しようとしている。最近も、長銀、日債銀の譲渡に各三兆円以上を惜しげもなく使うという。政府は、こそくにも労働者には雇用保険料引き上げ、支給額削減などを押しつけながら、大企業にはせっせと膨大な税金をいまも使っているのである。
 カネはある所にはある。もともと労働者がかせいだものだが、労働者は、資本家のペテンにだまされてはならない。多国籍企業は「グローバル化」、国際競争力のために、不況などを口実として肥え太り、労働者に犠牲を強いているのである。多国籍企業の代理人・小渕政権は法律、財政面などでこれを後押ししている。こうした資本家や政府の傍若無人の振る舞いとは断固闘い、労働者の要求を実現しなければならない。

「リストラ行う無能な経営者こそ、リストラせよ」

 大企業の肥え太りとは対象的に、労働者の雇用・生活危機の深刻化は、周知の通りである。
 失業率、就職難、年間賃金総額など、どれをみても悪化の一途だ。昨年は一時金が過去最大の六・二%減に加え、基本給もはじめてマイナスとなった。大手と中小の賃金格差は開くばかりである。職場では、出向・転籍、分社化、正規社員のパート・派遣への置き替え、サービス残業増加など労働条件が次々と切り下げられている。鉄鋼労連の調査によれば、「生活が苦しくなった」と訴える世帯が、九七年の五五%から九九年の六五%へと一〇ポイントも増大、七割の世帯が生活悪化を訴えている。
 その上に、介護保険料の新たな徴収、雇用保険の改悪、医療(診療報酬の引き上げ)、年金(水準切り下げ)、教育の負担増がのしかかる。
 労働者の雇用も、生活もまさに限界、危機的状況に当面している。
 二〇〇〇年春闘は、こうした資本家の側の攻撃による雇用・生活危機を突破し、人間らしい労働と生活を取り戻す闘いの正念場である。
 首切り反対、大幅賃上げ、格差是正などは、待ったなしの当然の要求である。
 闘いのこうした重要な局面で、先進的労働者は労働運動内部にある日和見主義と断固闘わなければ、闘いを前進させることはできない。例えば、「全部の産別が同額の引き上げを要求する賃金交渉は今年で最後にしなければならない」(鈴木電機連合委員長)という「春闘否定論」である。これこそ全組織労働者が一致団結して春闘を闘おうとするのに水をかけ、自分たちだけの安泰を図ろうとする大手のエゴである。資本の「国際競争力強化論」に屈したものである。だが、企業の存亡の危機にある電機中小でも争議が発生しているように、労働者は闘わざるを得ないのである。
 共産党は、かつての分裂行為にはほおかむりをして「対話と共同」などと接近を図っているが、その狙いは選挙の票ほしさにすぎない。闘うポーズを示すだけで、支配層にへつらい「連立政権」を追求するかれらは決して要求実現のための断固たる闘いは組織しない。
 職場には、前述の労働・生活条件の悪化を背景に、怒りと闘うエネルギーが満ちている。その怒りを、合理化が進む私鉄の青年労働者は「リストラする無能な経営者こそリストラせよ」(総決起集会で)とぶつけた。こうした労働者の力を信じて、大胆かつ真剣に闘いを組織するかどうか、先進的労働者にかかっている。
 すでにゼンセン、電機、全国一般などでは個別の争議が発生している。日本製鋼所室蘭(JAM)では二月二十八日、大規模な人減らしと賃金カットに抗議して、約千八百人が十六年ぶりにストライキに立ち上がった。二つの生産ライン閉鎖が計画されているマツダでは、「物わかりの悪い」闘う労働組合への方針転換が模索されている。国労新橋支部は地域での闘いを糾合しながら、国鉄闘争勝利の大衆行動に打って出ている。これらはほんの一例で、各所、各地域に新たな闘いが始まっているのは事実である。
 資本家側とその政府の攻撃をうち破って要求を実現するには、ストライキで闘う以外に道はない。この点をはっきりさせて闘うことが肝心である。労働者は、グローバル化への対処に必死である資本家の「良識」に期待して自らの状態を改善できない。弱い立場にある自らの団結した力だけがその保障であり、資本家とはストを構えてこそ初めて「対等」となる。
 春闘の意義は、ひとり組織労働者の利益にとどまらない。未組織、パート、派遣労働者を含むすべての勤労諸階層の雇用と生活、さらには国の生き方がかかっている。
 労働者は、春闘とともに自自公連立政権の悪政全体に対して、国民各層の先頭で闘う必要がある。小渕政権は、大銀行・大企業本位で、社会保障切り捨てや規制緩和、中小企業・農業切り捨てを強行しようとしている。このような時、労働者は、営業・営農の苦境にあえぐ中小商工業者、農民とも連帯して闘わなければならない。国会では一見、多数に見えるが、勤労国民との矛盾を深める小渕政権の基盤は、もろいものである。
 なかでも、米軍普天間基地移設に反対する沖縄県民の闘いに連帯することは、わが国の二十一世紀の進路にとって重要かつ緊急な課題である。
 企業内、産別内に閉じこもらず、地域に、全国に団結を押し広げ、ストライキ態勢を確立して闘おう。
 これ以上、財界、政府の横暴を許してはならない。断固闘えば、道は必ず開ける。


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