20000225 社説


大企業支援、国民犠牲の来年度予算案

議会政党に頼らず、要求実現は大衆的闘いで


 国会は、開会冒頭の強引な国会運営に反発する野党の審議拒否が、一転して妥協。実質的国会審議が再開されている。しかも、「経済再生内閣」を自称する小渕政権が最優先課題として位置づける来年度政府予算案は、すでに年度内成立が当然視されている。
 今国会において、連立与党の強引な議会運営、横暴と野党の無力さはきわめて顕著である。みぞうの不況、大失業時代の中、生活と雇用、営業の危機にあえぐ勤労国民の深刻さに、国会と議会与野党は、何らこたえるものとはなっていない。政治術策におぼれる議会と議会政党に対する国民の不信を、いっそう深めさせるものとなった。
 犠牲を強いられる国民は、街頭に出て国民的な大衆行動で、自らの生活と生存を守る以外に道がない。そうした闘いで、国民犠牲の政治を打ち破らなければならない。

大企業、銀行救済で国民生活破壊
 自自公連立政権として初の来年度予算案は、大企業、大銀行などに手厚く、国民生活を無慈悲に切り捨てる徹底的に反国民的なもので、財界の走狗(そうく)としての連立与党の役割を雄弁に物語っている。しかも、予想される総選挙をにらんで、国民の血税を私物化し党利党略で「お手盛り」した、三党野合の政治的術策の産物である。
 昨年末、閣議決定された予算案は、一般会計総額が過去最大の八十四兆九千八百七十一億円。昨年度当初予算比三・八%増という、二年連続の「積極予算」で、「経済再生」の息切れを防ぎ、民需回復につなげる予算案と位置づけられている。
 しかし、その効果を無邪気に信ずるものは当の政府部内でも何人もいないだろう。すでに数次にわたって投入された膨大な景気刺激策をもってしても、わが国経済の回復傾向は見えない。そればかりか、昨年十〜十二月期の国内総生産は、七〜九月期に続いて連続マイナスを記録した公算が大きい。
 二年連続で大盤振る舞いされた公共事業費や、さらに十兆円も上積みし七十兆円にもなった銀行への公的資金=税金投入で、一部巨大企業と大銀行は息を吹き返し、高収益にわいている。この連中にとってはまさに「経済再生」の予算案であろう。
 しかし、リストラ、雇用不安、中小の経営危機が続き、国民の生活は不安と苦境のただ中にある。さらにこの上、介護保険料の負担、老人医療費の負担増、年金給付水準の引き下げ、雇用保険料の引き上げ、教育費の負担増などが襲いかかる。中小企業対策では、前国会における中小企業基本法改悪の結果、一般歳出に占める中小企業予算は〇・四%とさらに低下させられた。
 これでは、国民の個人消費が一向に上向く気配を感じさせないのは当然である。国民が豊かにならずに、景気の自立的回復など思いもよらない。

最悪の財政赤字に
 さらに深刻なのは、膨大な国と地方の借金の拡大である。
 国債は財源の三八・四%も占め、新規の発行額は当初段階で過去最高の三十二兆六千百億円にも上った。小渕政権は発足以来、二年で実に八十四兆円もの国債を発行、二〇〇〇年度末の国債残高は三百六十四兆円、借入金を含めた国の債務は四百八十五兆円。国と地方の借金の総額は何と六百四十五兆円の巨額に達する。
 これは、生まれたばかりの赤ん坊を含めて、国民一人当たりが約五百四十万円の借金を抱え込む計算である。
 政府は「今は経済再生が最優先。二兎を追うものは一兎をも得ず」(小渕首相)と、「財政再建」を先送りしてでも景気対策を優先的に打ち出さざるを得なかった。だが不況脱出の展望も開けず、世界最大規模の借金を抱え、その直面した困難、矛盾は極めて深刻である。
 膨大な国の借金は、国際市場で収益を争う多国籍大企業にとっては、負担したくない大きなリスクである。「経済再生」ができようとできまいと、「財政再建」は財界と政府にとっていずれ避けて通れぬ課題である。それは結局、国民への負担押しつけとなり、遠からず増税あるいは超インフレとして国民生活に襲いかかることになる。
 自自公政権に手厚く保護され、財政を食い物にして太ってきた大銀行や巨大企業の食い逃げや、「財政再建」の名による国民への犠牲転嫁を許してはならない。

連立の党利党略、特に公明の露骨さ
 予算案のもう一つの際立った特徴は、連立与党の党利党略である。
 公明党から入閣している続訓弘・総務庁長官は、衆院予算委員会で「公明党は参院選で地域振興券に真剣に取り組み、八百万の票をいただきたいと訴え、……政権のキャスチングボートを握った」と発言。この党が、連立参加の成果、政策の実現として天まで持ち上げてきた「地域振興券」の真の狙いが参院選対策にあり、そのための自民党との取引であったことを公然と認めた。
 今回の予算案でも、公明党は児童手当の支給対象を就学前児童へ拡大した(これ自身ペテンだが)ことを、自民党に認めさせたことを、自ら持ち上げている。しかし自民党、財界にすれば、公明党を抱き込む国会(政党)対策費としては「安いもの」である。
 財界の党である自自両党と連立し、大銀行と大企業を救済する小渕政権の一連の経済対策を自画自賛する公明党。この党は、窮地にある自民党に救いの手をさしのべている。有権者、とりわけ中小零細の商工業者や都市勤労者の一部などは、こうした役回りを演じる党を信じるわけにはいかないだろう。

自民の危機救う無力な野党
 他方で、危機の自民党を救っているのは、民主、共産党などの野党でもある。
 野党第一党の民主党は、その典型である。
 衆院定数削減問題で、審議拒否と強硬姿勢を示したものの、「民主党は行政改革など諸改革を推進するとして、比例定数の五十削減を主張していたではないか。なぜ二十削減には賛成できないのか」(神崎・公明代表)と、痛いところを反論されると、数日もしないうちに自民党に救いを求め、「議長見解」で早々と戦術転換を決定した。これにはマスコミからも「民主党もしっかりしてほしい」などと皮肉られる始末である。
 しかも再開された国会審議でも、銀行救済のための十兆円積み増しには何ら異論を唱えず、逆に「財政規律を重視しながら経済構造改革を進めるのが日本経済が生き延びる唯一の方法」(鳩山代表)と財界、自民党同様の「改革」政治を提唱。政府予算案と何の対決点も提示できない。
 そればかりか、「財政改革」で国民への犠牲押しつけをねらう、自民党、財界の露払いの役回りを果たしている。九八年秋の金融国会で、経団連の意を受けて銀行救済のための六十兆円の税金投入を提案し、小渕政権の窮地を救ったこの党の「前科」からして、これはまた当然でもある。
 一方、共産党は「野党共闘」に必死で、その柔軟路線に磨きをかけた。保守との連携で政権参加を夢想するこの党は、「野党共闘」と称して民主党との連携を追求した。しかし、その民主党が審議拒否をやめると、「野党党首合意に基づく共闘は続けたい」(志位書記局長)などと民主党羽田幹事長に泣きつき、ひたすら追随する道を選んだのである。反自自公の「野党共闘」といったところで、自自公に屈服し続ける民主党、またこれに追随する共産党といった構図でしかない。
 国民生活の深刻な危機をよそに、これら議会内の政治術策、政権ほしさの党利党略に走る連中に、勤労国民は何が期待できようか。
 春闘を準備している労働者の間でも、他の勤労国民の間でも、小渕政権に対する不信、不満は増大している。みてきたように来年度予算案でも、さらなる国民犠牲が策動されている。深刻な不況の下で、犠牲を押しつけられる国民は、自らの生活と営業を守るためには、連携して断固大衆行動を起こす必要がある。国会内の茶番劇に期待できない以上、それしか活路はない。


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