20000205 社説


自自公の党利党略による「異常国会」

窮地の小渕政権を打ち破るため連携して闘おう


 「異常国会」が続いている。
一月二十日から始まった通常国会は、自自公三党が衆院特別委員会を強行開催した二十五日以来、野党のボイコットによって与党だけの国会となっている。さらに、与党は衆院定数削減法案を強引に成立させた。野党三党は、「小渕政権打倒」「衆院解散・総選挙」を叫んでいる。
 もともと事の発端は、定数削減を今国会冒頭に成立させるという、昨年末の自自公三党合意にある。それはあくまで三党内での話であり、かれらの都合によるごり押しに野党が反発したものである。もちろん、今国会で強行されている自自公三党の党利党略政治は断じて許されない。
 だが他方で、議会政治で与野党が緊迫した攻防戦を続けていても、勤労国民にとっては引き続き生活・営業の危機はは深刻であり、また沖縄の米軍基地移設問題など国の進路にかかわる重要な問題もある。どさくさにまぎれて、憲法問題を議論する憲法調査会も始まった。
 議会での茶番に頼るわけにはいかない。勤労国民にとって切実な問題を打開する最も確実な道は、広範な断固たる大衆行動である。強引な国会運営を行う連立政権も、ひと皮めくれば実体はきわめてぜい弱なものである。大衆行動を繰り広げ、それを基礎に広範な戦線を形成し、窮地の小渕政権を打ち破らなければならない。

国会での横暴、その背景にもろさが

 そもそも今国会の最大の課題は、景気回復をめざした二〇〇〇年度予算案を成立させることとされ、小渕首相も再三そのように強調していた。にもかかわらず、自自公三党は定数削減法案を先にしたのである。これは、三党合意をもとに連立の枠組み、政権をなりふり構わず死守しようという、まさに党派の利益を最優先させたものにほかならない。
 こうした三党の政略は、厳しく弾劾しなければならない。かれらは、リストラや失業、倒産に直面している、こんにちの勤労国民の深刻な困難などまるで眼中になく、政権にしがみつくことにきゅうきゅうとしている。
 もとより、三党が成立させた衆院定数削減そのものも、最低限の民主主義さえ踏みにじるきわめて不当なものである。「議会制民主主義」は元来、民意を正確に反映させるものではない。その議論はおくとしても、選挙制度の中でいえば相対的に比例制がまだしも民意を反映させ得るものである。その削減によって、小選挙区の比重がさらに高まり、一部の大政党にとってますます有利となり、さらに多くの民意は切り捨てられる。
 小選挙区での当選が難しい小政党にとって、比例での当選もいっそう困難になる。どの試算でも、定数削減比例区で当選に必要な得票率のボーダーラインが一気に上がる。これは小政党にとって大変なハードルだ。結局、定数削減はすでに問題がある現行選挙制度さえも改悪し、民主主義をいっそう切り縮めるものである。
 だが、物事には両面がある。この暴挙によって、自民党などは自ら墓穴を掘るはめになった。特に三党連立以後、小渕政権に対する国民の不信は急速に高まった。国会では巨大与党となったが、昨年の臨時国会ではそのもろさを露呈した。今、選挙をやれば「惨敗」という予測まで飛び交っている。選挙に打って出ることもできず、何ら主導性のないまま、数を頼りに国会での強行突破を図ったのである。
 だから、横暴な国会運営を行い、一見強大そうに見える自民党も、実体はきわめてぜい弱なのである。この時期、闘いを前進させるうえで連立政権を主導する自民党の決定的弱さをしっかり見抜いておくことは、重要である。
 われわれが再三指摘するように、すでに自民党政権は九〇年代に入っていっそう国民の支持を失い、凋落(ちょうらく)するばかりである。もはや伝統的なバラマキ政策、つまりカネで選挙民をつなぎ止めることは基本的にできなくなった。これは内外環境に基づく、いわば構造的なものである。その結果、こんにちでは中間政党と連立を組む術策などで、当面をしのぐことでしかない。
 そうして、例えば昨年、悪評高い介護保険の料金「見直し」をいわばバラマキ的に打ち出した結果、さらに不評を買った。人心がすでに離れている、この点にこそ本質的な弱さがある。
 したがって、われわれはいっそう広範な大衆的闘いをおし進め、窮地に立つ小渕政権を打ち破らなければならない。

民主党や共産党は頼りになるか

 こうした国会状況のもとで、野党は徹底的に小渕政権と対決し、かつまた本当に勤労国民の政治を実現できるであろうか。まず「解散・総選挙」を叫ぶ最大野党の民主党はあてになるのか。だが、実際はかれらは要注意である。
 なぜなら、民主党にはいくつもの「前科」がある。昨年秋の臨時国会において、自自公三党による年金改悪法案の委員会強行採決後、議長裁定に従い直ちに事態を収拾し、内閣不信任案提出を見送ったりした。
 さらに、九八年秋の金融国会における民主党を忘れるわけにはいかない。当時成立したばかりの小渕政権は、国会で連携できる党もない中、金融システムの安定化を内外から迫られていた。民主党は当初、銀行救済への税金投入に反対していた。ところが、途中から菅直人代表は「政局に絡めてやるつもりはない」と経団連に誓い、銀行救済のための六十兆円税金投入を提案。自民党はこれを「丸のみ」して金融再生関連法案が成立が成立し、危機を切り抜けた。民主党はこうして大銀行を救済し、窮地に立つ自民党を救ったのである。
 だから今国会での「対決」についても、マスコミから「改めて問われる民主の対決姿勢」と皮肉られる始末である。かれらが、本当に国民のために小渕政権に反対しているのか、また最後まで対決するか、厳しく問われるところである。
 まして、かれらは衆院定数削減そのものに反対していたわけではない。比例二十削減どころか、「五十削減」を要求していたのである。すなわち、与党案よりもっと改悪しようというもので、この問題では小渕政権よりさらに反動的である。
 では、「野党共闘」を天まで持ち上げている共産党はどうか。かれらは「議会制民主主義を守れ」と、議会内の駆け引きと選挙に夢中である。だが、選挙にいっさいを託す共産党の路線では、勤労国民の要求をとうてい実現できない。まして、現在の「柔軟路線」では中間政党にずるずるとひきづられるだけである。かれらの道では、展望がない。

政治の転換へ広範な闘いを

 こんにちの内外情勢は、当面する資本主義の危機が、もはや資本主義の枠内の改良的な処方せんでは乗り切れず、何らかの激変なしにおさまるものではないことをますます明らかにしている。わが国の現在の政局激動も、またそのひとコマである。
 景気は一向に良くならず、昨年の失業率が最悪を更新したように勤労国民の生活・営業条件の悪化は続いている。自自公三党は、国民大衆の苦難をよそに、政権維持の術策にのみ懸命である。政治不信は広がり、国民の不満は高まっている。自民党と、これと結託する公明党などの中間政党の正体も次第に見破られつつある。
 解散・総選挙の日程も絡んで政局は緊迫しているものの、頼りにならない議会政党に頼るわけにはいかない。国民の切実な要求を実現する最も確実な道は、広範な断固たる大衆的行動である。労働者階級は、春闘など本格的に闘いを準備し、かつまた勤労国民の政治実現のためのその先頭で闘わなければならない。最近もこの一月、連合九州ブロックの約一万人は米軍実弾演習に反対し、沖縄の闘いに連帯して決起した。このように闘う必要がある。
 強引な国会運営を行う連立政権も、その基盤はきわめて弱い。断固たる大衆運動の展開を基礎として、広範な共同の戦線、統一戦線を形成し、党利党略政治を打破し、政治の根本的転換を図らなければならない。


Copyright(C) The Workers' Press 1996-2000