各界新年メッセージ


商店街こそ地域のコミュニティー


地域消費者との連携を

全日本小売商団体連盟副理事長 田中 利夫


 労働新聞の読者の皆さま、また関係者の皆さまに新年のごあいさつを申し上げます。

 新年早々、ぐちっぽい話をしたくはありませんが、この新年は私ども中小小売商としても、また国民全体としても、明るい希望に満ちた新年というには程遠いもののようです。

 相つぐ大型倒産に象徴される日本経済の泥沼状態は底がしれません。倒産やリストラで失業は増加し、賃金切り下げ、労働条件の悪化など暗い話は浜の真砂です。

 そのために消費心理が冷えこんだところへ消費税の税率アップが追い打ちをかけ、購買意欲が異常に低下して、小売売上高の減退がいっそうひどくなってきました。とくに中小小売商への打撃は大きく、商店数の減少傾向がさらに激化するのではないかと心配です。

 このような状態に、さらにアメリカからの名指しの緩和(撤廃)要求で、いよいよ大店法の撤廃が表向きに出てきました。大店法は、その前身の百貨店法から衣替え(大型スーパーを法律の対象にとりこむ、その引きかえに許可制から届出制に後退)して制定されてから二十余年間、中小小売商は自分たちの生存権・営業権を守るために、身をもって緩和への圧力に耐えながら闘い続けてきたのです。

 その闘いは、単に自分の店を守るためだけではなくて、自分たちの町の環境、景観を守り地域の独自性を守ろうと、地域の消費者と同じ戦線に立つ必然性を持ちうるものでした。万一、大店法が撤廃されるとしても、この運動は地方分権の確立、地域経済の強化という点に収斂(しゅうれん)されつつ、地域の運動としてよみがえるものと期待されます。小売商運動も、そういう方向を新しい運動の目標に取りこんでいかないと、本当の消費者(お客様)の支持を得られないでしょう。

 いま、ジャーナリズム一般が、規制緩和をこれからの進むべき方向として無条件に前提とし、その線に沿った報道が一方的に流される傾向が強いなかで、労働新聞は終始一貫して中小小売商の立場をバックアップしてもらっていることは、感謝の他ありません。労働新聞というネーミングのせいでしょうか、まだまだ中小小売商の中に読者が少ないことが、私どもとして残念であり申し訳ないことです。

 今年もお互い元気でがんばりましょう。


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