各界新年メッセージ


基地のない国際都市構築を

沖縄県那覇市長 親泊康晴


 新年明けましておめでとうございます。謹んで新春のお喜びを申し上げます。

 昨年は、アジア地域の通貨危機が叫ばれ、同時にわが国においては、金融不安が発生し、政府の景気判断も「景気は足踏み状態」と発表され、さらに企業倒産も戦後最悪となるなど、わが国を取り巻く社会・経済環境は一段と厳しいものとなりました。

 このような中、政府の行財政改革や地方分権への取り組みも進み、地方自治体も厳しい時代の波に立ち向かう主体的な努力が迫られた一年でありました。

 さて、昨年は、沖縄の復帰二十五周年の節目の年でありました。

 この間、都市基盤や社会基盤の整備は進んでまいりましたが、復帰に際して沖縄県民が最も望んだ基地のない平和な沖縄とは程遠い現状であり、また経済の自立的発展のためには、解決しなければならない多くの課題も山積しております。

 とりわけ、基地問題につきましては、一九九五年九月の不幸な事件以来、国民の沖縄の基地問題に対する関心も高まり、日米両政府においても、沖縄の基地の整理縮小に向けた取り組みがなされました。

 しかし、その多くは県内移設を内容としたものであり、返還の目玉となった普天間基地についても、代替海上ヘリポートの建設が条件となっており、その移設予定先である名護市においては、受け入れの是非について住民投票が行われるなど、基地をめぐって沖縄県民は新たな苦悩を強いられました。

 沖縄が二十一世紀に向かって生きる道は、やはり基調として世界に開かれた国際都市を建設することにあります。

 現在、沖縄では、基地の整理縮小を図り、国際都市形成構想の実現に向けた取り組みがなされています。

 去る大戦における悲惨な体験、そして沖縄の地理的特性と六百年余にわたるアジア地域との交易を通した親善交流の歴史を背景として、二十一世紀にアジア・太平洋地域との交流拠点を形成し、沖縄を平和交流の場として生かし、国際的な役割を果たしたいというのが、県民の願いであります。

 わが那覇市においても、今年から始まる第三次総合計画の基本構想の理念として、「平和都市の創造」「生活・文化都市の実現」「国際交易都市の形成」をうたい、その都市像の一つとして「平和の発信都市」を掲げております。

 市民の力を結集して、引き続き基地のない平和な都市を築き、全ての暴力と貧困と差別のない社会の実現をめざし、平和を愛する市民の心を世界に発信していきたいと思います。

 終わりに、読者の皆様のますますのご活躍とご多幸を祈念して、念頭にあたってのごあいさつといたします。


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