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神奈川県党 リストラに関し県に申し入れ

日産に社会的責任果たさせよ


 日産の大リストラ計画は、工場閉鎖が予定される村山工場(東京都武蔵村山市)、日産車体京都工場(京都府宇治市)、久里浜工場(神奈川県横須賀市)をはじめ、全国の地域経済に甚大な影響を与えている。日産はその社会的責任を果たすべきであり、地域経済を守る角度から、自治体も日産がそうするようにさせる大きな責任がある。党神奈川県委員会(山本正治委員長)は十二月一日、県に積極的対応を求める申し入れを行った。


日産自動車のリストラ問題について、企業の社会的責任を明確にして地域経済を守るという視点から、県の積極的対応を求める県知事への申し入れ

一、今日、「企業と地域の共生」は社会的な課題となっており、神奈川県でも県政の重要課題と位置づけているやに聞いている。とくに大企業は社会的な責任がある。こうした視点を明確にして、県は大企業の一連のリストラ問題に対応すべきである。
二、今回の日産自動車のリストラでは、地域経済に非常に大きな影響が出てくることが予測される。企業経営の責任を不問にしながら、下請け企業や労働者、地域に一方的に犠牲を押しつけることは絶対に許されるべきではない。
 知事は、企業側に対して「地域との調和、共存」を認めさせ、社会的責任を果たすように求めること。
三、こうした視点から、県は関係自治体とともに、実態を県民サイドに立って正確に把握するために、適当な時期に、関連下請け企業や商店街、あるいはそこの労働者などの声を聞く場を設けること。
四、そうした声をふまえながら、県独自の対策を立てるとともに、地域経済発展という角度から日産自動車に必要な措置を求めること。少なくとも、下請け関連企業が対応できる、あるいは事業転換できる時間的な、資金・技術・営業面での支援を約束させること。また、労働者・労働組合の要求を最大限尊重するよう求めること。
五、以上を進めるため、県知事は日産自動車に対して協議の場を求めること。
以上

一九九九年十二月一日

日本労働党神奈川県委員会
    委員長 山本 正治


申し入れ理由(要旨)

一、過日発表になった日産自動車のリストラ計画(「日産リバイバルプラン」、以下NRPと略称)は、日産労資の問題にとどまらず、地域全体に深刻な不安を生んでいます。
 周知のように、いま県下の地域経済は、かつてない深刻な状況に直面しています。大企業の相つぐリストラで、下請け、中小零細企業は仕事がなくなり、資金繰りも大変で、多くの企業が倒産の危機に直面させられています。労働者は、収入が激減し、失業者も急増しています。とくに、若者の就職難は年々深刻になって、来春卒業の就職希望者は絶望的な状況です。
 また、こうしたことの結果、消費も激減し、大店法廃止に伴う大型店の相つぐ駆け込み出店もあって、中小商店は大打撃を受け、多くの商店街が「シャッター通り」と化しています。
 こうした地域経済の危機下での日産自動車のリストラです。多くの県民が、九三年発表、九五年実施の座間工場閉鎖を思い起こしています。自動車産業は、電機産業と並ぶ県経済の柱であり、工業製品出荷額の一九%、製造業従業者の一三%(数字は九七年工業統計より)を占めています。神奈川県は日産自動車の誕生の地であり、拠点工場がいくつもあります。そのリストラが、下請け関連企業はもちろん、対企業サービス業、さらには地域商業まで含めて、地域経済に大きな影響をもたらすのは必然です。

二、県経済と県民への影響は少ないだろうとの見方も一部にあるやにきいています。日産自動車追浜工場や日産車体平塚工場はむしろ増強され、あるいは久里浜工場は横浜工場への移転だからなどという理由からです。
 しかし、これはNRP計画の全ぼうと下請け企業の実態を知らない皮相な見方です。
 NRPでは、工場の再編など「生産体制の合理化」は大きな柱ですが、それだけではありません。むしろ、「日産の総コストの六〇%を占める購買コスト」を削減するための部品・資材の「購買」リストラこそ、NRPの最大の柱です。直接・具体的には、三年間で二〇%の購買コスト削減を目標とした購入の集中化・グローバル化、サプライヤー数の半分以下への削減、ルノーとの提携などです。
 また、そのための「下請け系列の解体」も大きな柱です。資本関係のある系列下請け企業についてすら、NRPは「四社の例外を除いて、ほとんどを売却する」と断言しています。

三、県下にある日産自動車関連・下請け企業にとって、まさに存亡がかかっています。
 関連サプライヤーとして残れるのか。取引関係が残っても二〇%のコスト削減でやっていけるのか。下請け企業として深刻な事態が目に浮かびます。
 また、グローバル化・ルノーとの提携ということで、わが国下請け企業が生き延びるのは容易ではないでしょう。すでにそれを見越してドイツやフランス、あるいは米国の巨大部品メーカーがわが国企業を買収する動きも急テンポです。県下でもそれは進んでおります。
 また、雇用面でも、決して安心できる状況ではありません。NRPについての会社側説明では、相模原部品センターの外注化のため、約三百人の労働者を生産ラインに異動することが提案されています。また、久里浜工場の労働者は必ずしも横浜工場だけでなく、一部がいわき工場へ異動するよう提案されています。部品センターで働いてきた方が生産ラインでやっていけるのか、また、遠くのいわき工場へ移転できるのか。退職を余儀なくされる労働者がいないといえるでしょうか。
 そもそも、村山工場は東京のことと無関心ではおられません。座間工場閉鎖に伴って、泣く泣く神奈川県下から村山工場に移転した労働者も多くいるからです。
 また、関連、下請け企業での雇用問題も起きてくることも避けられないと予測されます。

四、すでに横須賀市追浜地区では、トヨタ自動車系列の関東自動車工業横須賀工場とその関連企業の移転で、当該の労働者や下請け企業だけでなく、地域商業などにも影響が出ています。転校する子どもたちも出るなど、地域社会にも影響しています。今回の久里浜工場の閉鎖発表で、地元商業者が地域商業への影響を非常に心配しています。
 日産など大企業の、労働者と下請け企業、地域経済への社会的責任を放棄した一方的なリストラを、これ以上放置するわけにはいきません。この状況を打開するための県の施策が求められています。この点では、県には大きな責任があると考えます。

五、(略)


東京都委も宣伝・調査活動

 党東京都委員会(秋山秀男委員長)は11月末、日産村山工場閉鎖に揺れる武蔵村山市の労働者宅などで宣伝・調査活動を行った。そこで寄せられた労働者や家族の声を紹介する。

●日産はどうなるのだろうか。このままですむのかと、職場で話し合っている。労働党のチラシの通り、下請けの人も困るだろう。この不景気で一体何ができるのか、先行きが本当に心配だ。とにかく、会社に説明会を開かせることが必要ではないか。(男性・20歳代)
●夫は現場で働いていますが、給料は手取り20万円にはほど遠い。とてもやっていけないので自分もパートに出ています。これから夜勤もなくなのるので、給料が数万円減ってしまうので不安です。配転のことはどうなるかわからないが、自分としては反対。今は家族アパートの家賃が安いので助かっているが、行った先がどういうところか分からないから不安です。 (女性・20歳代)
●夫が日産の間接部門で働いていて、配転先は決まっていない。埼玉に30代で家を建てた人もいて、奥さんたちはとても心配して話し合っています。(女性・30歳代)
●私の部門は、すでに配転先が決まっている。地域に影響がでるのはその通りでしょうね。ただ、リストラをやればその結果がますます悪くなるというふうには、考えたくない気分だ。(男性・30歳代)


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