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東京 全国の介護関係者が集まる

問題点を現場から告発

介護保険はサギだ


 小渕政権が選挙目当てに打ち出した介護保険制度の見直し策に対し、各界から怒りの声があがっている。しかし、民主党や共産党など野党は、欠陥だらけの制度を追認するか、小手先の修正だけで、国民の不安と怒りに本当にこたえようとしていない。民主党は制度の「完全実施」を要求し、共産党は「保険料の徴収自身には反対しない」というありさまである。介護保険制度の抜本的な見直しを求める運動が求められている。こうした中、介護保険・全国老人ホーム関係者会議「これでもやるのか! 介護保険」が十一月十五日、東京で開かれた。


 会議には、北海道から島根まで、全国十二都道府県から二十四施設の関係者が参加し、来年四月の実施を前にした介護保険制度の問題点について、実態の報告と議論が深められた。
 司会を担当した兵庫県あしや喜楽苑からは、「介護保険制度の議論が始まったときから、低所得者層への負担が問題だった。私たちが以前からいってきたことが、いま問題になっている。現場は対応に追われているが、状況を報告しあい議論を深めよう」とあいさつした。
 主催者あいさつを行った神奈川県緑陽苑からは、個人的な意見を含むと前置きしながら、「介護保険制度というもの自体がサギであり、国の見直し策は国民を惑わし、サギを二重三重に重ねるものだ。問題の解決につながるものではなく、現場では介護保険をどうスタートさせるのか、見えない状態だ。日本の福祉制度を考えるという立場から、いかに介護保険制度が悪法かということを明らかにしていく必要がある」と提起した。
 続いて、「要介護認定の現実と、そこから明らかになるものは何か」と題して、各地の関係者から報告と討論が行われた。
 「要介護認定に、きわめて現実と異なる判定がされている。とくに、地域在住の人にアンバランスがみられ、高齢者からみて、認定者の中に『よい人』と『悪い人』が生まれかねない状況だ」
 「四月からケアがこないということがわかって、寝込んでしまった人もいる」
 「八十五項目の聞き取りチェックでは『自立』と認定されたのに、特記事項には『よく転倒する』とあるなど、どう考えるか難しい現実がある。高齢者は、無理をして『自分でできる』と言いがちだ」
 「痴ほう老人への評価が難しい。問題行動が多いのに、介護時間数が少ないという状況がある」
 「神戸市では、認定の広報も民間に丸投げしている。早くも、業者が福祉を食いものにしている」
 「シミュレーションソフトで介護度認定を三回実施してみたら、三分の一の人が毎回介護度が違った。本人のちょっとした話し方とサジ加減で決まってしまう」
 「老人介護施設へのショートステイ者のうち、五六%が四月から負担が増える。中には、五十万円近く負担が増す人もいる」
 「認定のためのコンピュータ・ソフトのプログラムが毎年変わり、一貫性がない」
など、介護保険制度のさまざまな問題点が報告された。
 さらに、「実施強行は高齢者・家族に何をもたらすか」「特養老人ホームと社会福祉法人の直面している矛盾と困難」「これからの取り組みについて」など、夕方までいろいろなテーマの討論が行われた。
 政府が見直し策を出さざるを得ないほどに、介護保険制度の問題点は明らかになりつつある。国民、介護関係者の不安と不満は高まっており、制度の根本的見直しを求める運動を高めなければならない。


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