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日産の社会的責任を追及しよう

労働者、下請け、地域は連携して闘おう


 日産の大リストラ計画が出され、当該の工場労働者はもとより全国の下請け・関連企業や地域の自治体、商店街などは大きなショックを受けている。日産はこれまで政府、自治体から多大な優遇措置を受け、何度もの合理化で労働者や下請け・関連の犠牲で栄えてきた。労働者、下請け・関連、地域などは、連携を強め日産の社会的責任を追及し闘おう。日産がある東京、神奈川、京都などの各都府県委員会は、実態調査や宣伝活動を開始している。京都府委員会による宇治市でのルポと日産の孫請け会社社長の談話を掲載する。


日産車体京都工場周辺では
商店「千人もいなくなればさびれるのも早い」


 「日産車体京都工場閉鎖」の衝撃は、工場が立地する宇治市、久御山町をはじめ、隣接する京都府南部の各地域を襲った。
 日産車体京都工場は、京都市の南にある宇治市、久御山町の二つの町にまたがり、工場敷地面積だけで、二十三万平方メートル。一〇〇%出資子会社を除く協力企業だけでも、京都府南部地域に二十八社を抱える超大手企業である。現在、社員は千二百人だが、最盛期には二千五百人を擁し、宇治市内のユニチカ、松下電子部品とともに市内企業の「御三家」として君臨してきた。
 工場の正門近くの交差点にあるマーケットを訪ねた。店長は「千人を超える人がおるんだから、なくなったら大きいよ。これですまないんじゃないか、ユニチカだってわからんよ! 不景気なのに人が少なくなれば、さびれるのは早いからな。それより移る人は大変だよ。みんな行けるかどうかもわからんし、家も簡単に処分できないしな。工場に友達がおるんやけど、『今は何も考えられん』と言ってた。そりゃそうだろう。全く突然だもの」と話した。
 続いて協力工場らしき会社を何軒か訪ねるが、「いま忙しいから何も話すことはない」と、表情も硬く断られる。 並びにあった運送会社の運転手の人に話を聞く。「ここは直接は関係ないけど、そりゃ大変だろう。近所の人でこの工場に働いている人がおるけど、新しく設備を変えて、今年から新車を立ち上げたばかりだから、まさか閉鎖とは思わんだろう。まだ工場の人は首にはならんけど、とにかく下請けや関連の所が大変だよ。日産車体だけという所も結構多いからな」とのことだった。

宇治市「不況に追い打ち、影響は大きい」

 次に宇治市役所を訪ねてみる。二十六日に宇治市、久御山町がそれぞれ庁内に「日産車体問題対策連絡会」を設置し、行政連絡会も近々発足する予定だという。
 関係部署を訪ねると慌ただしい感じだが、なんとか話を聞く。「情報が錯綜(さくそう)していて影響をはかれる確かなことがまだ掌握できていない。とにかく影響が大きいことは確かで、市としてもこれからだ。本市の工業も地盤沈下が言われて久しいが、今回は全く寝耳に水」「とりあえず連絡会議で情報を集め、近々国と府などへ緊急要望を提出する。日産車体には詳細な情報の提供と雇用の確保など協力を要請しているところだ」と話してくれた。
    ◇    ◇
 この日は断片的な聞き取りだったが、話をしてくれた人びとの言葉の端々に、事態の深刻さを感じた。
 宇治市や城陽市、久御山町を管轄する宇治公共職業安定所の八月の有効求人倍率は〇・二四%と、京都府全体の〇・四二%を大きく下回り過去最悪の雇用状況となっている。そこに今回の大リストラである。まさに、大企業の横暴である。
 また京都では、三菱自動車、ダイハツ、島津を始め千人を超える大企業は、移転や縮小計画を次々に発表している。今回の日産車体閉鎖は、さらに追い打ちをかけるものとなり、地域経済はかつてない危機に直面している。
 大企業や銀行には政府は大盤振る舞いだが、労働者や中小企業には突然大ナタが振り下ろされる。この理不尽な攻撃には、労働者や地域の人びとが連携した闘いでしか反撃できない。


とにかく残れることを祈るだけ
部品会社社長(日産の孫請け)

 うちは、日産の直接の下請けではなくA社に日産のエンジン部品を入れている。部品は共用もあるが、シルビアやブルーバードの部品だ。また終わりになるが、フォークリフトの部品も扱っている。
 日産の低調が続いており、だんだん注文数が減ってきた。五年前の座間工場が閉鎖された時からみると、だいたい半分になっている。最盛期には、うちは50人の社員がいたが、今は10人しかいない。
 しかも、うちはA社にしか納品していないので、もし日産の合理化計画でA社がはずされたら、どうにもならない。とにかく、A社が日産の部品工場として残ることを祈るしかないのが現状だ。
 ともかく、今は早く合理化計画の全体を知らないと対策も打てない。しかし、自動車部品はかなり特別な物が多く、ラインも汎用(はんよう)性がないので、他業種への転換もままならない。
 われわれのような零細企業がどうこう言っても合理化計画は変わらないが、どこの下請けも同じように悩んでいる。


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