日産自動車は十月十八日、主力工場である村山工場(東京・武蔵村山市)、日産車体京都工場(京都・宇治市)など五工場の閉鎖、二万一千人削減の大合理化案を発表した。さらに取引部品メーカーも半分の六百社に削減する。 多国籍化した大企業・日産は、国際的な大競争に生き残るため、いっそうのリストラ攻撃をかけてきたのである。もちろんこれは、日産だけではない。別掲にあるように、日産大合理化の影響を恐れた政府はあわてて調査した。その結果、大企業は十四万人もの首切りを計画していた。
財界は雇用・設備・債務を過剰三要素として、リストラの必要性を宣伝し、政府は産業競争力関連法などで企業のリストラをいっそう後押ししている。まさに大企業と政府による、雇用・下請け・関連企業・地域経済の破壊である。
日産は八九年に約六万人の労働者がいたが、九三年五万三千人、九六年四万八千人、九七年四万一千人と大規模で急速な合理化を行ってきた。
そして九六年には五百億円を超える黒字を出しており、昨年の赤字は数百億円に過ぎない。今回の合理化で、一兆円のコスト削減を実現し、二〇〇一年三月の黒字を目指すとしている。
しかし、日産は決して経営困難ではなく「内部留保金は一兆三千億円もあるのに、まだもうけ足らないのか」(日産労働者)というのが実際だ。つまり、合理化後には残った工場でさらに労働者を絞り上げ、下請け・関連からも絞り上げようというものだ。
日産は、これまで政府や自治体の支援によって、ただ同然に安く土地を手に入れてきただけではなく、道路・港湾、水道などを保証されてきた。
また税制面でもさまざまに優遇されてきた。例えば、輸出した場合には、消費税分が還付される仕組みになっている。まさにいたれり尽くせりである。
だからこそ日産には、企業としての社会的責任がある。多少の赤字が出たから工場閉鎖では、「突然の発表で大変驚いている。同社の地域経済に対する大きな役割を考えると、誠に残念」(京都・宇治市長)なのである。
これまで労働者はもちろん下請け・関連企業や地域に支えられ肥え太ってきた日産は、再生するなら自らの責任で、これまでため込んだぼう大な土地、株式など資産を吐き出し、雇用を保証すべきである。そうしてこそ、社会的責任を果たせるというものだ。
労働組合にしても、連合大会で自動車総連の代議員が「経済の構造改革に慎重になってしまっている」と、連合方針を批判したが、そうした考え方でこの合理化を跳ね返せるのだろうか。労働組合の役割が鋭く問われている。
今回の合理化攻撃に対し、労働者は単なる雇用問題だけでなく、下請け・関連業者、地域の商店街などと連携を強め、社会問題である工場閉鎖・合理化に反対して闘うことが求められている。また、そこにこそ活路がある。
日産と政府に対し、雇用、下請け企業、地域経済を破壊する合理化の撤回を求めて闘おう。
こんな身勝手が許されるか
武蔵村山市商店会連合会 比留間 亮祐・会長
東京も十八日に中小企業の決起大会をやった。そのときには日産村山の問題で話が持ちきりだった。
村山工場の閉鎖で、そうとうな影響が出ると思う。商店会は直接、日産と取り引きしているところはない。しかし、下請け、孫請けの会社とは取り引きがあるところもある。また、村山工場の社員は市内に七百人が住んでいる。当然、その人びとの消費が消えてしまうので大変だ。そして、工場閉鎖ショックで市民全体が財布のひもを堅くすると思う。
それにしても企業の社会的責任はどうなるのだ。日産の土地は、もともと農地と山林で家は一軒もなかった。それを当時の富士精密が買収し、それがプリンスになり日産になった。市もずいぶんと日産に協力してきた。
工場閉鎖だが、大型店のやり方も同じだ。出店するときは地域の皆さんに奉仕するなどというが、経営難になるとすぐに店をたたんで出て行ってしまう。日産も身勝手に出て行くが、こんなことが許されるのか。
労働省は10月22日、大手41社で14万人の首切りを計画していると、発表。内訳は、電機4社41,500人、輸送機器6社33,800人、金融8社23,500人、鉄鋼4社12,600人、その他製造業7社11,600人、電力・ガス4社6,000人、サービス3社5,700人運輸・通信3社3,500人、建設2社2,000人。
9月から発表された首切り計画(一部)
NTT | 20,000人 |
住友・さくら銀 | 9,000人 |
三菱重工 | 5,000人 |
武田薬品 | 4,000人 |
東海・あさひ銀 | 4,000人 |
三井・日本・興亜海上 | 3,000人 |
パイオニア | 2,600人 |
そごう | 2,450人 |
高島屋 | 2,000人 |
ジャパンエナジー | 1,700人 |
出光興産 | 1,600人 |
石川島播磨重工 | 1,200人 |
コスモ | 1,200人 |
住友金属 | 1,100人 |
日石三菱 | 1,100人 |
足利銀 | 1,000人 |
明電舎 | 500人 |
サッポロ | 札幌、群馬工場閉鎖 |
キリン | 高崎工場閉鎖 |
アサヒビール | 東京工場閉鎖 |
東洋紡 | 伊勢、大町(長野)工場閉鎖 |
住友大阪セメント | 田村(福島)工場閉鎖 |
Copyright(C) The Workers' Press 1996-1999