990725


政府は北朝鮮への圧迫外交をやめよ

こんな外交ではアジアの緊張招くだけ


 新ガイドライン関連法成立を前後して、小渕政権の朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)圧迫外交が目立っている。小渕首相はケルン・サミットをはじめ国際会議や訪問先の各国首脳との会談で、「北朝鮮のミサイル問題」を取り上げ「発射阻止」の協力を働きかけている。これは新ガイドライン法による日米軍事結託強化、力を背景にした露骨な大国外交である。「抑止と対話」などというが、小渕政権の外交は北朝鮮への圧迫、包囲であり、日本に対する不信をますます増大させている。これでは国交のない隣国との関係を最悪の事態に陥らせ、アジアに緊張をもたらすだけである。日朝両国の関係改善とアジアの平和に逆行する圧迫外交を直ちにやめよ。政府は、朝鮮への侵略と植民地支配の歴史を反省し、謝罪と補償を行い、直ちに国交正常化交渉を行うべきである。


小渕首相、各国に圧迫要請

日米首脳会談(五月三日)

クリントン大統領 朝鮮半島の一番の課題は、ミサイルミサイル技術移転だ。核技術を北朝鮮に移転させないよう、引き続き日米が協力していかなければならない。

小渕首相 基本的には日米韓で強調していきたい。抑止と対話のバランスを取りつつ、同時にミサイルや核に加え、拉致(らち)疑惑もあるので協力を得たい。

 また、朝鮮半島への対処として日米中韓朝ロの六者協議を提唱。

日米首脳会談(六月十八日)

クリントン大統領 ペリー政策調整官が米朝の関係改善に関する考えについて、日本と韓国に報告、相談していることは重要なことだ。三カ国が連携していくことが大切だ。「ミサイル問題」についても同様だ。

 枠組み合意の維持、実施が北朝鮮の核兵器開発を抑止するうえで依然として極めて重要だ。朝鮮半島エネルギー開発機構(KEDO)に対する拠出が国会で承認されたことは望ましい。引き続きKEDOへの協力は三カ国で続けていくことにしたい。

小渕首相 三国でいっそう緊密に連携していきたい。ペリー調整官のアプローチを支持している。「ミサイル問題」も三カ国で取り組むべき重要な問題だ。

 さらに、北朝鮮の「ミサイル発射問題」について再発射がないようG8が協力して警告することが必要だ。

ケルン・サミット(六月二十日)

 ドイツのケルンで開かれた第二十五回主要国首脳会議(サミット)は「北朝鮮のミサイル実験拡散の動向に深く憂慮」などを盛り込んだ共同宣言を採択。

エリツィン・ロシア大統領との会談(六月二十日)

小渕首相 イワノフ外相が近く北朝鮮を訪問すると聞いている。こうした機会に、北朝鮮のミサイル発射実験に対する日本の危ぐを伝えてほしい。

日英首脳会談(六月二十一日) 

小渕首相 アジアには北朝鮮の問題もある。世界の平和と安全を確保するため、国連中心のあり方の実現をめざし、強く働きかけていかねばならない。

朱鎔基首相、江沢民国家主席など中国首脳と相ついで会談(七月九日)

小渕首相 北朝鮮のミサイル発射は国民的な関心がある。日本国民の考えを北朝鮮側に披露してほしい。

李鵬全人代常務委員長 中朝関係は大変よいが、北朝鮮は主権国家であり、内政干渉はできない。ただ、ミサイル発射についての日本国民の心情は理解でき、機会があれば日本側の意見を北朝鮮に伝えたい。

モンゴル首相と会談(七月十日)

小渕首相 機会があれば北朝鮮側に働きかけてほしい。

   ◇

 朝鮮中央放送は六月十四日、北朝鮮当局がこうした日本政府の動きを「哀願外交」と酷評したことを伝えた。

 さらに北朝鮮スポークスマンは十五日、「人工衛星打ち上げは独立した主権国家の正当な権利である」「われわれの衛星打ち上げを非難する権利はだれにもない」と批判した。

   ◇

 北朝鮮外務省の宋課長は七月二日までに、明石・前国連事務次官に対し「人工衛星は日本も中国も打ち上げている。どうしてやってはいけないのか」「新ガイドラインなどの政策で(日米)は包囲政策をとっている」と批判した。

経済制裁さえちらつかせる

 さらに「ミサイル問題」が国交正常化交渉の障害になっていることについて「最も重要である謝罪と(戦後)補償という本来の道からはずれたものだ」と批判した。

 高村外相は六月三十日、「ミサイル発射」の兆候があった場合は「警告する時は具体的なことを言う」と経済制裁を打ち出した。

 これまでも、政府内には定期船の運航停止などの措置を取るべきだとの意見がある。

 そうした中、政府は七月十五日までに、ミサイルが発射された場合、すでに昨年から直行便運航停止などの措置に加え、新たに北朝鮮への送金停止、輸出規制、KEDOへの資金拠出凍結なを検討し始めた。

 北朝鮮への送金は、外国為替管理法に基づいて企業、個人を問わず蔵相、通産相の許可を義務づけるというもの。 これまで政府はイラク、アンゴラへ経済制裁として送金を停止したことがあるが、いずれも国連決議を受けて実施したもので、日本単独での経済制裁を実施したことはない。まさに圧迫外交そのものであり、断じて許されない。


朝鮮半島をめぐる最近の動き

●1998

8月
・北朝鮮、人工衛星打ち上げ。米国と韓国も人工衛星説をとったが、日本政府は「ミサイル発射実験」を強調
・KEDOへの資金協力を凍結

10月
・米政府と議会が、北朝鮮政策見直しで合意。議会は重油供給費拠出に、核疑惑解明などの条件を付与
・千葉朝鮮会館で放火、殺人事件

11月
・朝鮮総聯本部に火炎ビン。9月から全国で朝鮮学校の女子生徒にいやがらせが相つぐ

12月
・日米で戦域ミサイル防衛(TMD)構想共同研究で合意

1999年

3月

・野呂田芳成防衛庁長官が国会で、「日本に現実の被害が発生していない時点でも、敵基地を攻撃することは法理的には可能だ」と発言。韓国国防相は断固反対を表明
・日本領海で2隻の「不審船」を発見。自衛隊が初めての警告射撃。日本政府は北朝鮮工作船と断定した
・朝鮮有事を想定し、初めて福岡空港を使い、避難訓練

5月

・新ガイドライン関連法成立
・日米首脳会談

6月
・ケルン・サミット、朝鮮半島を盛り込む
・小渕首相、「北朝鮮のミサイル発射阻止」を米、英、ロシアなどに要請
・政府、ミサイル発射の場合は、経済措置などを行うと発表

7月
・小渕首相、中国、モンゴルを訪問。北朝鮮のミサイル発射阻止を要請
・ミサイル発射に制裁発言相つぐ


Copyright(C) The Workers' Press 1996,1997,1998,1999