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強きを助け弱きをくじく政府
こんな暴挙を許せるか!

産業競争力関連法案

大企業のリストラに大減税

税制経営研究所 谷山治雄所長に聞く


 政府が今国会で成立を目指している産業競争力強化のための税制改正案の最終案が六月二十九日、明らかになった。企業の「過剰設備」の廃棄や企業再編のために税制上の優遇措置をもうけ、リストラを税制面から積極的に後押しするものだ。大企業が生き残れるように、政府は労働者の首切りを奨励する一方、大企業にはいたせりつくせりの支援策を講じようというのだ。。


 日本はこれだけ国際収支が黒字で、競争力は抜群である。なぜ、産業競争力などと言い出すのか、誰もが疑問に感じるだろう。

国際競争力は十分強いが、ビッグバンや国際化ということで、米国資本がどんどん日本に入ってくる。だから、米国資本のために投資環境を整備することだ。もう一つは、日本自身も米国との競争に負けるわけにはいかないので、日本の大企業が対抗できるようにするものだと思う。

設備廃棄にべらぼうな減税

 産業競争力関連法案だが、財政・金融、税制で大企業に有利にするためのものでしかない。

 税制上、一番問題になるのは、八十一兆円といわれる過剰設備の廃棄だ。設備については、過剰だろうが過剰でなかろうが、減価償却しなくてはならない。だが、少しでも使っているものは「廃棄損」にはならない。だから、実際に使っていても廃棄損を認めろということだ。これは現行の法律では認められていない。

 廃棄すれば膨大な金額がかかる。現在は廃棄に伴う赤字は五年間は繰り延べて認められている。これを七年間に延長するという。仮に八十兆円分の設備を七年間かけて廃棄すると、毎年十一兆円以上の廃棄になる。そこで廃棄に伴う赤字(廃棄損)に対しては税金がかからないので、法人税率を四〇%とすると毎年約四兆四千億円、七年間で約三十兆円の減税になる。九九年度の法人税は合計十七兆円であり、いかに膨大な減税かがわかる。

分社化でも大減税

 次に分社化がある。競争が激化するので、子会社をつくって、赤字部門を清算する。また、それぞれが得意分野におうじて市場で努力し成長する。そして倒産などのリスクを分散するために分社化する。

 この場合、子会社をつくると、資本金の〇・七%の登録免許税がかかる。それを半分にする。

 さらに子会社をつくるために土地や建物など譲渡する場合がある。その場合、譲渡税がかかるが、それを繰り延べる。

 また、資本として親会社の株を安く譲渡できる権利が子会社に発生する。その場合にも譲渡税がかる。これも免除される。

 さらに、連結納税制度がある。子会社をつくれば、だいたいは最初は赤字になる。連結決算はすでにあるが、税まで連結させるという。子会社の赤字を親会社にくっつけ、税金を下げるというものだ。

 これらによって、膨大な法人税が免除される。大企業はこれまで規制緩和、政府は口出しするななどと言ってきたが、これは政府におんぶにだっこそのものではないか。

 改正案には出ていないが、産業競争力会議では、工場などを廃棄した跡地などの遊休地を国が買い取ることも出ている。また会社更正法や和議法なども改正し、見込みのある企業だけは残し、ほかはどんどんつぶそうとしている。

債務廃棄で企業も銀行もボロもうけ

 さらに大きな問題として「過剰債務」の廃棄として債務の株式化がある。

 企業が銀行からの借金があると企業はそれをなくしたい。銀行が債権を放棄した場合、銀行は貸出損ということで赤字になり減税される。企業のほうは負債分を銀行からもらったことと同じになる。すると贈与になり税金がかかる。

 そこで負債を株式にする。そうすれば企業は課税されない。また、銀行は仮に百億の債権を株式にした場合、額面百億でも評価額が三十億なら、評価損失で銀行は減税ができる。企業は借金をなくし、銀行は減税でうるおう。これほど手のこんだことをしようとしている。まさに「知能犯」だ。

 一方、政府の「雇用対策」は、職業訓練の強化だが、クビにされた者に努力して再就職しろということだ。

 また、雇用調整金の重点配備は、残したい企業には雇用調整金を出し、つぶしてもよい企業は見放す。

 そして労働力の流動化を主張し、労働者派遣法の改悪を強行した。安い賃金でこき使おうというものだ。まさに強きを助け、弱きをくじく政策であり、断じて許されない。


リストラ支援の税制改正

◎設備廃棄に伴う欠損金の繰越控除期間(現行五年間)を七年に延長する
◎分社化の際にかかる登録免許税の半減
◎共同子会社設立に伴う譲渡益課税を繰り延べ
◎土地の買い替えにかかる譲渡益課税の繰り延べ拡大
◎自社株譲渡の優遇税制を子会社に適用


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