990615


農民運動

生活できる所得保障を

北海道農民連盟 北 準一書記長に聞く


 参議院で食料・農業・農村基本法(新農基法)が審議され、今月末にも成立する見通しだ。また農水省は、来年度の麦の市場取引移行に加え、大豆交付金制度見直しなどを進めているが、農産物の価格、農業者の所得低下など打撃が予想される。最近の農業政策について北海道農民連盟の北書記長に聞いた。


 日本は九三年にガット・ウルグアイラウンドで、国際市場に加わった。国として国際化の動きに合意して政策を転換しているわけだが、最近の動きはわれわれの立場からいうと、かなり過激、早急な転換だ。対処しきれないというのが現場の実態じゃないか。

 根本的な問題は、その作物をつくって生活が成り立つかどうか。そのための手法が生産現場を見据えてやれるかどうかが大事だ。しかし今の政府のやり方は遮二無二(しゃにむに)市場制へ移行して、それに対応できるものだけが残ればいいという荒っぽい手法だ。だからたとえば、十戸の農家で、半分の五戸がそれに対応して将来的に残っていくのか、六戸になるか三戸になるか、その「ふるいの目」が大きくなって、スピードが早まっている。

 新農基法についてわれわれは自給率の数値目標の明示を求めている。今の論議では「自給率の向上」という表現で、数値目標は基本計画で示すとなっている。基本計画で示すにしても、五〇%以上というのがわれわれの考えだ。もう一点は所得政策をどうするか。いわれている「経営安定」ではない。経営が安定しても、実生活所得がないというギャップがある。だから所得の確保をどのようにしてやるか。それについては、来年度からのWTO協定へ向けて日本の基本的な姿勢がなければならないし、基本法でしっかりうたうことが必要だ。われわれは「直接所得保障政策に移行する」と明記すべきだと求めているのだが、今の段階では新基本法の表現に入っていない。

 価格は国際価格をにらんで動いてきており、「再生産ができるか、生活ができるか」ということからかけ離れてきている。だから所得については、生産費の確かな数字に基づく、あるいは勤労者世帯並みの平均的な所得を得るということを基準にして対策を考えていくなど、市場価格とは違った視点の基準がいる。

 所得を補てんする場合の手法はいろいろあるだろうが、小さい農家も大きい農家もただ同じように補填すればいいわけではない。一つの手法としては、環境や多面的な機能、農業のもつ機能を重視すればそれは面積にかかわるから、耕作面積に付随した所得の補填策というのがあるだろう。

 とにかく今の取り引き価格では農家が存続していかれない状況だから、きちんと見直していかなければいけないことだ。


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