全国の老人ホーム施設長・職員、家族会など関係者による「やっぱり変です、介護保険!」住民と福祉を守る学習総決起集会が六月六日、東京で行われた。
岸田孝史氏(川崎・緑陽苑)が「総選挙がらみで介護保険の先送りがいわれているが、厚生省はこうした報道に『介護保険施行準備を支障なきように』と文書を出すなど必死に実施しようとしている。介護保険は老人福祉を消すものであり、強行されれば大きな混乱を招く。私たちは四千五百のホームと三千三百の自治体へ、介護保険実施見直しの意見と署名用紙を送った。自治体担当者からも署名が帰ってきている。学習総決起集会を通じて、さらに実施延期を求める運動を進めよう」と経過報告とあいさつを行った。
その後、パネル討論として、自治体、施設、家族・介護者、職員、法律の専門家などそれぞれの立場から問題点を述べた(発言別掲)。
参加者は「必要な見直しは大胆に行い、居住者・利用者の人権を守る原則に立って、高齢者福祉と援助実践の充実をめざしていきましょう。介護保険の本質とそれがもたらすものをしっかりとつかみ、高齢者・家族・地域に伝えつつ、いかなる不利益も許さず、改善をめざすとりくみを広げていきましょう。国民の福祉を保障する国の責任を厳しく追及しつつ、住民の立場に立った自治体の努力を求め、介護保険制度のもとで必要と思われる事業展開と条件整備に、全力をあげてとりくんでいきましょう」とのアピールを採択し終了した。
翌日には、社民党などの政党や厚生省などに要請行動を行った。
参加者の発言(一部)
◇ 笹井肇(東京都武蔵野市介護保険準備室主査)
実施されれば、施設を民営化する自治体も出てくる。そうなれば「ジャングル型」といって、高齢者を裸でジャングルに投げ出すことになる。ライオンなど市場原理の民間サービス企業に高齢者は自己責任で対応しなければならない。一方、自治体がこれまでの福祉を守ろうとすると「サファリパーク型」。車で保護され決められたコースを進む。自治体は情報収集し公開し、権利を守る努力がいっそう必要になる。
武蔵野市ではボランティアの介護団体に年間一千万円の補助を行い、住民サービスの拠点をつくっていく。
◇ 海藻修(京都府美山町住民福祉課長)
美山町は山村地で高齢化率が三〇%超えている。冬には一晩で雪が一メートル以上積もり、介護サービス提供会社が参入しないだろう。町の予算は約三十八億円しかない。四億円の税収しかないのに、福祉の歳出は約三億円、介護保険でさらに約三億円かかる。町としては「保険料を年金から天引きされ、金がないとサービスを受けられない」と高齢者に説明したら、皆さんがっかりしていた。まさに「金の切れ目が命の切れ目」だ。
◇ 五十嵐恵子(島根県・長命園事務局長)
実施されると約四千三百万円以上の赤字になる。ホームを守るために職員の給料を下げることを検討し始めているが、福祉を守ってきた職員の血肉を削るような提案をしなくてはならない。入居者の方にも、給食水準引き下げや、これまで徴収を禁じられていた生活日用品費も負担してもらうことになってしまう。
◇ 高野範城(弁護士)
介護保険は高齢者の人権・権利は認めず、義務だけを負わすもの。保険料を払えぬ人にはサービスを受けさせない、これは憲法の生存権を無視するもの。社会保障制度解体の大きな一歩だ。
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