990605


東京 NATOのユーゴ空爆を問う集会

米国の新戦略を暴露


 五月三十一日、東京で「NATOのユーゴ空爆を問う討論集会」が行われた。

 主催は、沖縄の反基地闘争に連帯し、新ガイドライン・有事立法に反対する実行委員会で約百人が参加した。

 主催者側からの問題提起のあと、まずユーゴスラビア史専門家の佐原徹哉氏から、コソボ問題とは何かについて、経過を追った丹念な報告があった。

 佐原氏は「コソボ内には平和的解決を望む勢力が多数だったにもかかわらず、米国はこれを切り捨て、それまで『テロリスト』ときめつけていたコソボ解放軍を支持し、アルバニア系住民の代表にさせた。また和平交渉の経過をみてみると、米国は『アルバニア系住民側は合意しているのにユーゴ連邦側が蹴った』という構図を意図的につくりだし、空爆やむなしという雰囲気をつくろうとしていたのではないか。『第二のボスニア』『民族浄化』『虐殺』などの言葉は情報操作である。NATOの軍事介入の必然性はコソボ内部にはなく、米国・北大西洋条約機構(NATO)の側にあったといえる」と指摘した。

 続いて、フェリス女学院大教員の武者小路公秀氏から、紛争の終結のためにNATOが空爆をやめること、大国の思惑とは一線を画して国連が平和維持の役割をになうこと、南バルカン諸国の協議の場をもうけることなどが提案された。

 同時に武者小路氏は、「現実はこの提案と全く逆だった。冷戦後、ユーゴが分割された。米国は、当初『ユーゴはまとまっていたほうがよい』という立場だったが、利害関係のあるドイツをはじめ欧州諸国やバチカンがクロアチアの独立を認めた。米国は主導権をにぎれずあせりがでてきた。そこで、ボスニア紛争で国連がうまくいかないのを見計らって、米国主導でNATO軍を派遣した。そして今回のコソボ紛争である。NATO諸国も大国のいないところで解決してほしくなかったのである。今回の空爆は、人道主義的立場から介入したものではないと断言できる。空爆はそこに住む者にとって何の助けにもならない。『悪者を処罰する』ために行っただけである。今になって『空爆が思うような効果をあげないことがわかった』なんてばかげた話しはない。はじめからわかってやっているのだ。米国は、イラク、セルビア、北朝鮮を悪者国家と規定している。これは世界の大国―イラン、ロシア、中国を直接やっつけるわけにはいかないから、その近くのイラク、セルビア、北朝鮮をたたくという構図である。当面は平壌とは仲良くするだろうが、ユーゴが一段落したら戦略の重点が朝鮮半島に移る可能性は大いにある」と指摘した。


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