990605


警察監視社会
盗聴の合法化 
組対法の強行採決糾弾!

「自自公」の横暴にストップを


 衆議院は五月二十八日、通信傍受法(盗聴法)案を中心とした組織犯罪対策三法案を強行採決し、自民、自由、公明などの賛成で可決した。自自公は、証人質疑も拒否するなど、審議もほとんど行わず、強行採決した。これには自民党議員からさえ反対者が出たほどである。これは電話、ファックス、Eメールなどの盗聴、銀行口座の監視を合法化、国民の基本的人権を侵害し、警察による監視社会をつくるものである。危機の時代に備えた国内体制づくり、治安維持法の再現である。社民、民主などの政党や自治体議会、労働組合、市民団体、弁護士会などが反対の声をあげている。組対法反対の世論と運動をさらに盛り上げ、廃案に追い込んでいこう。各界の反対の声を紹介する。


労組、市民団体などあらゆる団体が犯罪者扱い、警察の監視下に。

◎この法案は組織犯罪に対処するといいながら、組織活動を対象とするものは刑の加重規定だけです。それも目的・性格上の限定がなく、暴力団などの組織犯罪とはまったく無関係な会社、労働団体、市民団体などのあらゆる団体がふくまれてしまう恐れがあります。(日本消費者連盟、婦人民主クラブ、日本カトリック正義と平和協議会など)

◎組織的な犯罪の処罰および犯罪収益の規制に関する法律では、労働組合の正当な争議権(団交に対する監禁罪、労働債権確保のための職場や工場のピケに対する威力業務妨害罪など)に拡大解釈の恐れなど、労働組合活動や市民生活上からも疑問点が多い。

 連合は、問題指摘したうえで、通信傍受など関連三法案に強く反対する。(連合・笹森 清事務局長、五月三十一日の談話要旨)

◎組織犯罪対策法案の主な問題点として、まず「団体の活動として犯罪を犯したものの刑を重くする」という点は、構成要件が記載されている「団体」「組織」などの定義が一義的でない上、その目的、性格に限定がないため、どのような団体・グループも含まれてしまうなど構成要件が明確でない。また、個人と団体とのかかわりから刑を重くする理由も明確ではなく、問題がある。(東京・小金井市議会、昨年十二月に採択された意見書要旨)

電話、ファックス、Eメール何でも盗聴が合法化。憲法違反のプライバシーの侵害が際限なく広がる。

◎傍受要件が広範な犯罪を対象としており、傍受の正当化を担保する規定も不十分であることから、その対象が際限なく広がる危険性をはらんでおり、日本国憲法で保障された通信の秘密やプライバシーを侵害し、表現の自由をも制限するものである。

 現在、電話による通信の盗聴は、憲法二十一条で禁止されているが、これは戦前・戦中における捜査当局の人権侵害に対する反省の上に立つものであり、今なお尊重されなければならない。(大阪・吹田市議会、昨年十月に採択された意見書要旨)

◎通信傍受の対象犯罪を薬物犯罪、銃器犯罪などに限定するとされているが、当連合会が意見書で指摘したように、組織的犯罪に限定されていないばかりか、まだ発生していない将来犯罪や令状に記載されていない別件事件の傍受も認めている。

 犯罪とは無関係な多くの通信が捜査機関の監視にさらされることになる。(日本弁護士会連合会  小堀 樹会長)

◎憲法十三条で保障された「人格権・プライバシーの権利」や、「通信の秘密の不可侵」の原則を、法律による盗聴を認めることによる弊害、個人のプライバシーや人権の侵害、あるいは労働組合・市民活動の脅威(きょうい)につながる危険性が解明されないまま採択したことは問題である。通信傍受など関連三法案に強く反対する。(前掲・笹森事務局長)

怪しいと思えば、取引も銀行口座も監視の対象。

◎マネー・ロンダリング罪については、市民生活に身近で広範な犯罪が対象となっており、通常の取引や弁護士費用を受け取ることさえ、相手が特定された犯罪に関わっていた場合には罪となる恐れがあります。

 金融機関に対する資金洗浄の疑いのある取引の通報の義務づけは、米国でも「プライバシーを侵害する」として、人権団体や金融業界の強い反対で撤回したものです。(前掲・日本消費者連盟など)

 なお、覆面証人問題については、「警察による不当弾圧などについて、裁判を行う場合、警察官への尋問が規制されれば、立証できない。弾圧を行ったものを野放しにする」との批判が多数の弁護士から出されている。


組織犯罪対策3法案

●組織的な犯罪の処罰および犯罪収益の規制等に関する法律案(銀行口座の監視)

 組織的な常習賭博(とばく)や殺人などの犯罪に関する刑を従来より重くする。また、マネー・ロンダリング(資金洗浄)の行為を処罰する。金融機関は疑わしい取引について、届出義務を負う。

●犯罪捜査のための通信傍受に関する法律案(盗聴の合法化)

 薬物・銃器犯罪などの捜査に関して裁判所の発する令状に基づいて、犯罪実行に関連して行われる電話やファックス、電子メールなどの電気通信を傍受する手続きを定める。

●刑事訴訟法の一部を改正する法律案(覆面証人)

 裁判長や検察官、弁護士は、証人などの身体や財産に危害を加えられる恐れがあるときは、住所や勤務先についての尋問規制ができる。


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