地域振興券の地元商店街での使用についての要請書

1999年 2月 5日
福岡県知事 麻生 渡 殿

日本労働党福岡県委員会

委員長 上村 和男
理論政策責任者 中村 哲郎


「地域振興券」発行の目的は、自治省によれば「若い親の層の子育てを支援し、あるいは老齢福祉年金等の受給者や所得が低い老人層の経済的負担を軽減し、もって個人消費の喚起、地域経済の活性化を図り、地域の振興に資すること」とされています。

地域振興券の発行については、発行に至る経過やその政治的背景、経済的効果など評価がわかれるところでありますが、福岡県でいえば約130万人、約260億円が半年の間に消費にまわされることになります。だまって見過ごせば、その八割以上が大型店で使用されると予測されています。これでは、地域経済の活性化、地域の振興に資するとした振興券の目的に反するものとなります。

不況が長期化し、個人消費が低迷しているなかで中小商店は転・廃業を余儀なくされるという、極めて厳しい状況におかれています。とりわけ大型店の進出が相次ぐ中で、1991年(平成3年)以降だけでも小売店は6899店が減少しています。商店街の振興は県政の緊要な課題であり、地域活性化、街づくりにとっても欠かせない施策となっています。かかる観点から、以下の三点について要請いたします。

1)振興券を大型店ではなく、地元商店街で使用し、商店街の振興を支援するよう各市町村長へ積極的に助言、指導するよう要請いたします。

東京・葛飾区では、青木区長が地域振興券を「4月30日までの期間(40日)に限り、第一種大型店(売り場面積6千平方勸潰以上)で使えないようにした。大型店を排除するつもりはない。商店街がさびれていく現状を何とかしたいという信念で決めた」と発表しました。また、神奈川県・二宮町の古沢町長は、二種類の振興券を交付して大型店での使用を一部制限しています。同町長は、1大型店を完全排除すると、消費者のニーズにこたえられない、2全く規制しなければ、逆に地元の商店や地域振興につながらない、3その中間をとって、消費者ニーズと地域振興の調和を図った、と説明しています。こうした努力は、今全国で強められています。

2)振興券発行を一つの契機に、地元商店の振興や地域振興に向けた努力を強めようという意欲が県内各地の商店街で高まっています。これは重要な動きです。県商店街連合会も、地域振興へ向けて、県民への広報・宣伝活動を強めようとしており、これへの財政的支援を要請しています。県が積極的な支援策をとるよう要請したします。

3)また、中心商店街の空洞化は今日、深刻な都市問題となっています。これは一人商業者だけの問題ではありません。大多数の県民が地元商店街で振興券を使用することは、街づくりに向けて住民と商業者が手をつなぐという意味からも意義あることを周知し、県自身が県民世論を広く喚起するよう要請いたします。

以上


資料

福岡県の小売業を従業員規模別(平成9年)にみると、商店数では1〜2人の規模の商店が小売業全体の48%を占め、3〜4人が24.8%、5〜9人が15.9%と、従業員9人以下の小規模零細店が全体の約90%を占めている。ここで従業者全体の52.7%が働いている。

 97年度、九州通産局調査によれば、九州の商店街の8割弱に空き店舗が存在し、8割以上は3年前にくらべて売上げが減少している。大型店の進出が大きな影響を与えている。

 今日、中心市街地の空洞化は都市の深刻な問題となっている。

 小売店は、1982年の約172万店をピークに年々減少し、94年には約150万店まで減少。その大半が店主を含む従業者が4人以下の小規模小売業である。

 福岡県でも、商店数は、82年68914店をピークに97年58782店と15年間で約1万店が減少した。特に、平成3年以降、大型店の進出が相次ぐなかで、地元小売店は6899店(年間1100店)が閉店に追い込まれ、その大半4162店が売場面積50平方勸潰未満の小規模零細店である。

 また、商店街の10%が空き店舗となっており、ひどいところは三分の一が空き店舗というところもある。


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