990101


書籍紹介

沖縄の高校生が調べた・書いた・考えた

わたしたちの「沖縄問題」

森 弘達 編著


未来つくるのは私たち

 この本には、沖縄・昭和薬科大学附属高等学校の生徒が、政治・経済の学習のまとめとして書いた、十九本の小論文が掲載されている。

 どの論文も、この学習にとりくんだ生徒たちの熱意が強く感じられる力作だ。テーマは基地、沖縄戦、経済振興、自然保護、高齢者福祉、医療、スポーツなど、自分のもっとも関心が高い分野を選択している。歴史を振り返り、現状を調べ、問題点を見すえる視点は、きわめて真剣で、沖縄の将来を自分たちが担っていくのだという自負心と希望が感じられる。

 基地関連の論文から、高校生たちの問題意識を紹介してみたい。

 「安保条約と在日米軍の存在意義」をテーマにした比嘉杏里さんは、「安保条約の存在、基地の存在は、私にとって当然のものだった。生まれた時から米軍の戦闘機の爆音を聞いてきたし、米兵の迷彩服も街では珍しいものではなかった。だがふと、いくつもの疑問に対して自分が明確な答えを持っていないことに気がついた。どうして米軍の存在が必要なのか。今までなされてきた説明は正しいのか。沖縄には永遠に基地があり続けるのか」との素直な疑問から調査を始めた。

 そして、「米軍の存在を許容し、基地を甘受していくのか。軍事力に頼らず、独自の努力を放棄せずに日本という国を保っていこうとするのか。少なくとも、沖縄の背負ってきたこの五十年を考えると、後者を選ばずにはいられない」と、自分の結論を導き出している。

 また、この学習を通じて感じたことも、率直につづられている。「沖縄の基地経済」をテーマにした宮良尚子さんは、「基地経済。これにとって変わるものを考え出さねばならない。それは何かまだわからないが、考え、もがかなければならない。今、沖縄はそういう時に来ているのかもしれない。もがいてやっと『基地のない島』へと自立できるのではないか」と述べている。

 「海上ヘリポート建設から考える平和の創り方」をテーマにした屋良富士子さんは、「私たちはもっと政治に興味を持ち、真剣に政治に向き合うべきです。…教科書の中だけでの政治、経済しか知らなかった私にとって、現実の社会とのギャップには大きなショックがありました。けれどもいまある社会について考えることはとても楽しかったです」と述べている。

 高校生たちの主張は、綿密な調査に裏づけられており、結果的に沖縄の現状や問題点がわかりやすく浮き彫りにされている。

 また、授業を指導した森弘達先生の教育実践記録も掲載されている。地域に根づいた教育実践の一つの好例になると思われる。高校生や教師にも、一読をおすすめしたい。

 この授業実践を指導した森弘達先生も二十六歳の青年教師だ。こうした若い力が沖縄に育っていることは、ここ数年間、沖縄県民が闘ってきたことの、最大の成果といえよう。この若い力は、必ずや「基地のない平和な島」をつくる巨大なエネルギーに成長するにちがいない。(K)

発行・ボーダーインク

098―835―2777 定価千五百円


Copyright(C) The Workers' Press 1996,1997,1998,1999