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県民の怒りにこたえる県政を

神奈川県知事選新春対談


山本正治同志(県知事選予定候補・党関東地方委員長)
山本喜俊同志(県知事選対策本部長・党神奈川県委員長)



 深刻な不況のなかで、多くの国民が失業や倒産の危機に直面している。「政治家は国民の切実な苦しみが分かっていない」という声は高まる一方である。地方政治でも「誰の利益のための政治か」がいっそう明確に問われる時代になった。四月の神奈川県知事選挙に立候補を表明した山本正治同志と労働党神奈川県委員長・山本喜俊同志に対談をお願いした。

県民に冷たい岡崎県政

――あけましておめでとうございます。今年四月の県知事選挙に山本さんが立候補を表明されたわけですが、まず県民生活の現状について伺いたいと思います。

山本正治 おめでとうございます。

 いろんな人にお会いして感じることは、この深刻な不況の中で県民に深刻な怒りがあるという事です。ある福祉施設の経営者は「山本さん、昔の新左翼はどこへ行ったのか。ああいうのが今出てきて騒げば国民は拍手するんだけどな」と言っていた。六十兆円を銀行に出しながら、福祉をどんどん削るなど国民に犠牲を押しつける、この国の政治に対する怒りがそんなふうに表現されています。

 産業空洞化、大企業のリストラで、県下の労働者も中小下請け企業も本当に大変です。昨年暮れには、NKK(日本鋼管京浜製鉄所)、東芝、日産、それにトヨタ系列の関東自動車など神奈川を代表する工場の大合理化計画が相ついで発表になった。今年はさらに大変ということですね。

 一方、その工場跡地への大規模小売店舗の出店ラッシュで、卸も、小売商店も大激減です。川崎市では、三年間で店舗数は一〇%近く、従業者も五%近く減少しているほどです。

 ですから失業者の問題は深刻ですね。多分神奈川は、沖縄や北海道に次ぐほど失業者が職安にあふれている。昨年後半はこの問題に相当に取り組みましたがね。

 失業者の問題は、労働者全体の問題です。気になっていた失業者を訪ねてみたんだけど、六十六歳の人です。ようやく決まりましたよ、というんですが、そこが変形労働時間制です。六十六歳の方に、一日目が朝の九時から翌朝まで二十四時間勤務。次が、その晩の九時から翌朝まで十二時間勤務の仕事をさせられる。それでも年金が少なく、暮らせないからと行かざるを得ない。身体に気をつけて、何かあったらすぐ連絡くださいとしか言いようがありませんでした。

 大失業時代は、規制緩和と結びついて急速に労働条件が切り下げられているすさまじい実態があります。求職者は、口々に「それにしても以前に比べて賃金が低すぎる」と言っています。

 こういう声を代弁する。それらにできるだけこたえられるような政治を実現していく。これが今度の知事選の一番直接的な課題ではないでしょうか。

――こういう県民の切実な要求に対して岡崎県政はどんな態度をとっているんでしょうか。

山本喜俊 この厳しい状況の中で、県民は必死の努力をしているわけですが、岡崎現知事は、何も手を打たない。それどころか、財政危機を理由に、中小商工業対策も福祉・教育予算も一律三割カットです。全国で最初らしいが県立病院まで民営化するという。これには地元の市町村も大反対です。さらに、税収が足りないからといって、例えば法人事業税の外形標準課税を導入しようとしている。赤字法人からも税収が入るわけだから県は結構でしょう。しかし中小零細の企業は大変です。

 要するに、県民への思いやり、配慮がまったくない。現知事は、高級官僚(大蔵省)から県に「天下った」わけで、たぶん県民の厳しい実態を知らないのでしょうね。

21世紀の将来像が必要

――もう少し、岡崎県政の基本的問題点を話して下さい。

山本正治 一つ目は、製造業の空洞化問題です。税収が減ったのは、もちろん不景気もありますが、工場が空洞化でどんどん県外へ流出し、事業税、住民税が減ってきていることが大きな原因になっているわけです。県は、この問題に何ら積極的な手を打たず、放置し、実際の施策はむしろ積極的に製造業の空洞化に手を貸しています。

 例えば、日本製造業の最大の拠点であった京浜臨海部の再編計画です。すでに述べたようにNKKや東芝とかの大合理化計画が進んでいるわけですが、その主要な企業八社くらいが集まり、県と横浜、川崎市が協議会をつくって「再編計画」をやっています。その主なプロジェクトは二つ決まっていて、一つはテーマパークの「手塚おさむワールド」。もう一つは東海道貨物支線の客線化。臨海部は袋小路だったが、鉄道で一気に東京都心とつなげ、オフィス、住宅地をつくるという鉄道計画が最近発表されました。NKKなどは製造業を撤退した後、土地をいかに高く売るか、不動産屋としていかにもうけるかを考えている。

 県の計画は、製造業はやめたいという企業の計画が先にあって、いかに土地の利用価値を高めるかということに行政が協力するということだ。私は、今の県がすすめている一部の大企業が製造業をやめ、跡地にマンションと大型店がむやみに進出するのを促進するそんな政策を転換します。

 京浜の製造業を支えてきた優れた基盤、技能、技術。これらが失われることは、地域の経済にとどまらない大きな損失になるわけで、県民の生活や雇用の確保という点とも結びつけて、モノづくり産業、製造業を基本的な産業として位置づけて、これを発展させる施策を講じる必要がある。モノづくりの技術を持っている中小零細企業に対して、技術、製品開発、資金面はもちろん、後継者の育成、技能教育、その他も含めて全体として支援する。

 地域の商店問題では、大店法が廃止されて大店立地法など三法に変ったため、県や政令市は町づくりという角度で大きな責任と不十分ながらも権限をもつようになった。もうけだけの大型店の進出を規制しながら、地域の商業者が地域文化の担い手として、あるいは高齢化社会を控えて高齢者や障害者も地域で暮らしていけるような町づくりの担い手として役割を発揮できる、そんな施策が求められています。

 こうして、県の産業を復活させながら、労働者の雇用と権利を守る。また、福祉や医療、教育などの充実をはかっていくそんな県政をめざしたい。

 二つ目は、町づくりというか、県全体のバランスある発展を保障する開発政策です。都市の過密と、一方での周辺部に県政の光が当たっていないという問題です。地域間のアンバランス、格差は、県の総合計画や知事の言い分とかでは繰り返し解消がいわれているが、実態は違います。最近は、横浜以外でも大規模な工事が目立つが、その地域の発展につながるとは限らない。むしろ、結局は横浜が業務核都市としての機能を強化するのをサポートするための、道路とか橋とかがつくられるだけです。

 周辺の地域の真の発展のために金が使われているわけではない。私は開発政策を、一極集中から県下のどの地域もバランスよく発展する、その地域自身の資源、力を発揮することで発展するような開発発展計画に転換していきます。

 神奈川の場合は農業が中・西部地域に残されているわけで、これらを生業として成り立つように支援していくことも重要です。

 三つ目は、基地問題です。神奈川は、沖縄県に次ぐ第二の基地県です。しかも今、政府が新ガイドラインに沿って周辺事態法で自治体に協力を求めようとしているわけです。沖縄の人びとが闘ってきたことに対して、神奈川の知事が沖縄に続いて行動をおこし、連帯する姿勢を示したなら状況はがらっと変わったと思います。

 私は、二十一世紀に独立・自主の国をつくっていく上からも基地の撤去をすすめられる県政をめざします。

 政策の具体的なことは県民各層の方々とご相談しながら知事選前に発表したいが、これら三点について県民の間でよく議論を起こしたい。県民の議論を起こし、県民自身が立ち上がることをサポートできる県政でないと、本当に県民の力が発揮されて、この危機を乗り切って二十一世紀の神奈川をつくっていくことになりません。

県民総行動で危機の打開を

――最後にどのように県政の転換を進めようとしているかを聞かせて下さい。

山本喜俊 去年神奈川でいくつかの首長選挙があった。現職と新人の争いで川崎と横浜を除けば全部新人が勝っている。今の政治を何とかして変えたいという県民の意識がそういう選挙結果に現れたと思っています。人びとの不満はますます大きくなっていることを感じます。

 岡崎知事は去年県の職員の人事委員会勧告を実施しなかった。最終的には九カ月先延ばしで合意したわけですが、労働組合としてはこういう知事を推薦するなど自分たちの首を絞めるということになります。

 もちろんいま一番犠牲になっているのは失業者ですし、低賃金攻撃を受けている労働者です。パート労働者が急増していますが、深刻です。こういう労働者の切実な課題を取り上げながら、こうした労働者の役に立つ県政をめざしたい。この点では、労働組合の「支持」を受けている政党は、厳しく問われるのではないでしょうか。

 もう一つは、商店街を中心とする保守層、農家もですが去年の参議院選挙をみるとこれまで自民党を支えてきた人が明らかに一つの社会層として自民党から離反しつつある。商工業者であれ、農民であれ、この人びとの要求を取り上げながら労働者といっしょになってこの危機を打開しようと提起しようと考えています。そうすれば県政を変える大きな力が結集できると確信しています。

山本正治 昨年の暮れもある人から「労働党は自分たちの希望の星だ」と激励された。今年労働党は結党二十五周年です。いろいろいっても一貫して正しい方向を指し示して、旗を掲げて踏ん張ってきたんだと思うんです。あらためてこの党に課せられている役割と責任とをひしひしと感じながら年を越しました。

 今年は大前進して県民の期待にこたえられる成果を収めたいと決意しています。この場を借りて全国の労働者、支持者のみなさんにご支援をお願いします。どうぞよろしくお願いします。


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